3次元測定機の功罪
近年の3次元測定機の進歩はめざましいものがあります。
昨年に、某ネット系製造斡旋サービス企業への登録の際、
担当者 「御社に3次元測定機はありますか? 」
と、問われたものです。
私 「3次元測定機は持ってないですが、持っている会社と大差ないレベルで品質保証をしております。」
と、答えると、思いっきり不審がられました。
あまりにも人を小バカにする対応をされて腹を立てていたのですが・・・
最近では、ビジネスマッチングでも3次元測定機の保有を必須にしている企業さんを見かけるようになりました。
う~ん。
今までは「3次元測定機は持ってればなお良し」だったんだけどなあ・・・
時代の流れなのかな~、3次元測定機が無くても品質維持可能なんだけどなあ・・・と、悲しく思いました。
とはいえ、時代の趨勢には勝てません。
今年に入り、清水の舞台から飛び降りるぐらいの気持ちで、3次元測定機を導入しました。
で、導入してみると・・・
直接測定できる箇所については、ホイホイ図れるので非常に便利ですね。
さすが、文明の利器。
大したものです。
ただ・・・これだけ簡単になると・・・
ものづくりの根幹である「創意工夫」を忘れていくのではないかな?
と、思うようになりました。
そんな矢先(実は昨日)
とあるお客さんから、外注先の会社から3次元測定機で寸法が図れないから品質保証出来ないとして断られたという相談がありました。
どの部分ですか?
と図面を見せてもらうと・・・
私 「ああ。確かに、直接測定は不可能ですね。うん。」
お客「じゃあ、品質保証は無理という事でしょうか? 」
私 「いえいえ。測定治具を使えば、寸法管理可能ですよ。」
お客「え? そうなんですか? どうすれば? 」
ということで、ざっくりとした絵で測定治具を設計して、測定方法や管理方法を伝授しました。
お客「こんな方法があるのですね。」
と、感動されておられましたね。
私にとっては、【普通】のレベルのお話でして、大した知恵を絞ったわけじゃないです。(相談があって5秒ぐらいで思いついていますし・・・)
で、雑談がてら、測定管理できないといった外注先のお話を伺うと・・・
立派な3次元測定機を保有しているそうです。
私は内心
『ああ、やっぱり。
3次元測定機で測定不能なものはダメという固定観念に縛られ始めているんだ・・・』
と、日本のものづくりが衰退している現実を改めて感じさせられました。
最新鋭の設備機械やハイテクばかりが持て囃される現在ですが・・・
ローテクを侮ってはいけない。
我々の諸先輩方、ご先祖様たちは、現代から見ればローテクしかない時代にゼロ戦を飛ばし、近代国家を打ち立てたんです。
私の世代は、アナログとデジタルの相克期、移行期でした。
だから、どちらの特性も理解しているし、それぞれのメリットデメリットも知っています。
ものづくりには、両方が欠かせない。
そう理解してくれる人が一人でも増えてくれるといいですねえ。
ただ。私ら世代(就職氷河期黎明時代)までで、技術や技能、アナログの特性を熟知した世代は終わりです。
技能伝承といっても、【儲かる分野】だけが継承されており、それ以外は絶滅していっています。
あと十五年もすれば、私ら世代は引退を迫られるでしょうし、それ以前に肩たたきにあうかもしれません。
ものづくりが、デジタルのみに置き換わる世界になるのだろうか?
その時、災害に弱いデジタル世界に未曽有の大災害が訪れたら・・・
人類は生き延びることが出来るのだろうか?
そんな漠然としたことを心配しつつ・・・
しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。