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レビュー/「HUMANOID」 2020年代に蘇った1980年代のACCEPT

HUMANOID / ACCEPT
2024年4月発売

ドイツが誇る鋼鉄軍団ACCEPTの通算17作目となるスタジオ・アルバムである。

アルバム全体の色合いとしては1980年代の初期ACCEPT(特に1983年発売の「BALLS TO THE WALL」の頃)にレイドバックしたような印象を受ける。復活作「BLOOD OF THE NATIONS」(2010年)以降の作品に顕著なドラマティックな展開や重厚感はやや減退し,比較的シンプルでストレートな楽曲が多いことが要因かもしれない。

サウンドはモダンながら,典型的なACCEPTっぽい緻密に構成された鋼鉄重金属感は希薄と言える。レイドバックした曲調と相まって,良い意味でのオールド・スクール感が強調されたサウンドに仕上がっていると思う。要するにロックっぽいのだ。それでいて古臭さを感じさせない絶妙なさじ加減。大ベテランならではの仕事ぶりである。

彼らの特徴の一つである重低音男性コーラスやクラシック音楽のフレーズは本作でももちろん健在だ。ただしそこまで大々的にフィーチャーされているわけではなく,さり気なく顔を出す程度。その意味でも本作は個性を強烈に発揮した作品とは言えず,どちらかというとシンプルで控えめ,意地悪な言い方をすればやや地味なアルバムだと思う。

もちろん,だからと言ってこのアルバムが駄作だというわけではない。古典的なスタイルのヘヴィ・メタルを巧みに現代風にアップデートし,ACCEPTにしか表現できないメタルとして提示したクールな作品だと思う。適度なスピード感に満ちている点も素晴らしい。

とりわけオールド・ファンにとっては琴線に触れるテイストの曲が多いのではないだろうか。たとえば04“Man Up”などは、リズムといい構成といい,そのトータルな雰囲気はさながら2024年版“Balls To The Wall”である。

ドラマティックなパワー・バラード07“Ravages Of Time”も素晴らしい。「OBJECTION OVERRULED」(1993年)収録の“Amamos La Vida”を彷彿とさせるメロディの美しさが印象的だ。

アルバムの最後を飾る“Southside Of Hell”は本作で最もファストでパワフル、アグレッシヴかつドラマティックな「ACCEPT全部入り」のメタル曲だ。このアルバムが単なる懐古趣味ではないことを強烈に主張しており,最も攻撃的なこの曲を最後に配置したことは大正解。アルバム全体がとても引き締まっていると思う。

【収録曲】
01 Diving Into Sin
02 Humanoid
03 Frankenstein
04 Man Up
05 The Reckoning
06 Nobody Gets Out Alive
07 Ravages Of Time
08 Unbreakable
09 Mind Games
10 Straight Up Jack
11 Southside Of Hell


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