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LIV MOON/「OUR STORIES」 美しきメタル・ミュージカル

OUR STORIES / LIV MOON
2022年12月発売

元宝塚のAKANE LIV率いるシンフォニック・メタル・バンドLIV MOONが,フル・アルバムとしては12年ぶりとなる5作目をリリースした。

バンド最大の武器であるAKANEさんの歌声を最大限に活かした,ヴォーカル・オリエンテッドな音作り。美しく綺麗なで上品なサウンドだが,メタル的な圧や迫力にはやや欠ける。好みの問題もあるだろうが,もっとビッグでゴリゴリしたサウンドになれば,あのNIGHTWISHにも負けない存在になり得るのではないか。

典型的なシンフォニック・メタルだが,それ以上にミュージカル的だと感じる。様々な声音と歌唱を使い分けるAKANEさんの幅広い表現力ゆえのことだろう。曲を聴いていると,劇場の豪華なステージ上にAKANEさんが立ち,スポットライトを浴びながら歌う姿が自然と目に浮かぶ。

様々な声音を操るAKANEさんだが,低音域での歌唱にとても魅力を感じる。女性のメタル・シンガーというと何かと高音シャウトやハイトーンが注目されがちだが,はっきり言って食傷気味。力強く艶やかなAKANEさんの低音域は,あまたいる女性のメタル・シンガーの中にあって唯一無二の個性であり武器であると思う。03”Addiction”のサビでその魅力的な低音歌唱を堪能することができる。

異彩を放つのは04”Anemone”だ。中盤まではゆったりとしたテンポで美しく儚い世界観を描きつつ,突然ツーバス連打が炸裂してテンポアップ。それでいてメロディは依然としてゆったり。そのまま突き進むのかと思いきや,再び大河のような緩やかな流れになり,そして再びツーバス連打。激しいリズムとたおやかな歌メロのコントラストが秀逸だ。美しいヴィオリンの音色も素晴らしい。

唯一歌詞が英語の08”Fighter”も他とは一味違ったクールな曲だ。英語だからか言葉を紡ぎ出すリズムが明らかに早く,元々のテンポの早さと相まって心地よい疾走感だ。劇的で気持ちが高揚する曲調も良い。ライブ映えする曲だと思う。

それにしても12年というブランクは長すぎた。これほどのバンドが埋もれてしまうのは日本のメタル界の大損失。コンスタントに活動してほしいと切望する。

【収録曲】
01 Daybreak
02 Never…
03 Addiction
04 Anemone
05 Symphonia
06 El Dorado
07 Hourglass
08 Fighter
09 The Lament (LIV MOON version)


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