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人工知能はバカなことを言えますか

最近は人工知能の翻訳がとても自然で、正確で、10年前とは比べ物にならないくらい品質が上がっている。

だが、正確になればなるほど弱点もまた大きくなる。人工知能が進化すればするほど、バカなことが言えなくなるのだ。

人間のバカなところを、私は愛している。


かかって来いや

漫画『ONE PIECE』の英語版に、有名な翻訳がある。「かかって来いや」というセリフが「shall we dance?」と訳されている。

これはセリフを言うキャラがバレリーナであり、バレエダンスを取り入れた蹴り技で戦うからこういう風に翻訳されている。

じゃあ、別の漫画に出てくる有名な「心を燃やせ」というセリフは、どのように訳されているだろう?ぜひ調べてみてほしい。


俺たちに明日はない

アメリカ映画『Bonnie and Clyde』は、日本では『俺たちに明日は無い』というタイトルだ。実在したボニーとクライドという2人の銀行強盗の話である。

フランス映画『À bout de souffle』は日本では『勝手にしやがれ』という。もともとのフランス語は「息もできない」という意味である。


バカであることは楽しいこと

人工知能がどんなに進化しても、「かかってこいや」を「shall we dance」にしたり、「À bout de souffle」を「勝手にしやがれ」と翻訳する日はやってこないだろう。

ふつうに考えたら、それは間違った翻訳だ。

私なんかは、『Train kept the rollin'』の邦題が『ブギウギ夜行列車』だったり、『Substitute』の邦題が『恋のピンチヒッター』であることに感激する。すごくバカだな、と思う。そのバカな翻訳が最高に楽しいし、かっこいいのだ。


もちろん契約書や病院のカルテでこんな翻訳をしたら大惨事につながる。だから人工知能は、そういう義務的な書類なんかを訳するプロフェッショナルとしては最高の仕事人だ。

ただ、人間というのは本当に罪深いもので、どう考えてもズレているはずの言葉をあえて使って、それを楽しむところがある。それこそが人間の醍醐味だ。と私は思う。


エンターテインメント!

というわけで私は、エンタメの翻訳家になりたい。

人工知能には決して思いつかないような、バカな言葉をいっぱい生み出したいのだ。

人間を謳歌したい。

人間はわざと不協和音の出る音楽をつくる。舌が耐えられないような辛いラーメンを食べる。ボロボロのぬいぐるみを数億円で買ったりする。

そういうバカを私は心から愛している。




#もしも叶うなら