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ノイズがあるから音楽が美しく聴こえる

Bluetoothイヤホンが壊れたので、とりあえず100均で有線イヤホンを買った。音質が悪すぎてびっくりした。

と同時に、思春期のころを思い出した。昔はこれくらい質の悪いイヤホンで音楽を聴いていた気がする。なにしろ貧しかったからね。

シンセサイザーと楽器の違い

きょうびシンセサイザーでもほとんど実際の楽器と同じような音色(おんしょく)が出るけれど、実はその音には意図的にノイズが混ぜてあるのをご存じだろうか。

初期のシンセというのは、電話が繋がらなかった時のような、ああいった感じの音しか出せなかった。それでも音の波形を視覚化してみると、最初のスーパーマリオのBGMのようなあの音は(理論上)トランペットと同じなのだ。

しかしマリオの例の音楽を聴いて「トランペットに聴こえる」という人はいないと思う。ギターの音色もそう。シンセで作られたギターの音ではほぼギターに聴こえないはずだ。

そこにはノイズが大きく関係している。

雑味あっての美しさ

というのを昔、専門学校と大学で学んだ。ようするに、楽器じたいが部品と共鳴して鳴らす音、人間の手や口が触れたりこすれたりする音など、いろいろなノイズが混ざり合ってはじめて「これはギターだ」「これはトランペットだ」と確認できるのである。

CGの人間の顔を想像するとわかりやすい。意図的に少し肌荒れさせないと、とても人間には見えないはずだ。そう考えるとゴーストオブツシマとか、すごいよね。

壊れかけのlo-fi

100均イヤホンによって、スマホから出るすべての音楽が強制的にローファイになった。

でもこれがむしろ新鮮で、結構おもしろかった。カメラマンが「写ルンです」で遊ぶ感覚もこれと似たようなもんだろうか。

思春期のころよく聴いていた曲をかけると、なんだかノスタルジックな気持ちになった。じっさい私はこれに近い音質のイヤホンで音楽を聴いていた。こんな音質でカセットテープやMDを聴いていたな........と、いろいろな思い出が頭の中でよみがえる。

とはいえ、これからずっと同じイヤホンで生活したいかと言われると、まったくそんなことはない。たぶん来月には新しいBluetoothイヤホンを耳に付けてると思う。

いつまでも少年ではいられないからだ。私も思春期に少年から大人に変わらないといけない。