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「歌で英語リスニングを鍛える」のは、できたら止めといたほうがいい

大学の実習で、英語のリスニングに役立つ勉強法について議論した。

そのなかで「洋楽を歌う」という意見がけっこう出てきた。のだが、私としては、歌はあまりリスニングの勉強に向いていないと思う。


というのは、歌の場面では通常の発音とかなり離れた英語が使われるからだ。これはなにも英語にかぎった話ではない。たとえば外国人の方が「日本語を覚えるためにKing Gnuを歌っているよ」と言ったら、どう感じますか?

King Gnuであれ米津玄師であれ、その日本語はふつうの発音とはけっこう違いますよ、と思ってしまう。極端な話、サザンオールスターズを歌うことで日本語を覚えようとすると、ふつうの日本語からかけ離れたセンスが身に付いてしまう。

実習の場ではエドシーランやテイラースウィフトの名前が挙がった。やっぱり彼らの英語の発音もかなり独得である。というか、歌うときの発音というものは、ふつうにしゃべるときの発音とは全然ちがうのだ。


それだけではない。歌詞も問題である。なぜなら、歌詞もまた普通の文章とはかけ離れたものであるから、ふつうの文法とは全然違うふうに書かれている。ロックやラップならなおさらだ。主語がやたらカットされていたり、似たような発音の単語が奇妙な順番で並んでいたりする。


英語にかぎらず、アート作品の言語はあくまでズラシの言語である。だから結局はふつうの英語教材で、発音のきれいなナレーターがまともな文法の文章を読んでいるものが適切である。へんに工夫してはいけないのだ。

ズラシの発音から先に覚えるということは、最初の段階で「ありがとうございます」を「あざーす」として認識したり、「すいません」を「さーせん」として認識するようなものである。

それやっちゃうと、あとあと修正が大変ですよね?