〜2021年振り返り〜EVERSTEELのこと

株式会社EVERSTEELの佐伯です。

今年の6月に前職のFiNC Technologiesを退職し、鉄スクラップ画像解析システムを提供する株式会社EVERSTEELを立ち上げました。

これまであまり外部への発信はしてきませんでしたが、ありがたいことに近況を知った友人や元同僚の方々から応援をいただくこともあり、皆様へのご報告も兼ねて筆を執っています。

今回は、

・EVERSTEELって何をやっているのか?鉄スクラップとは?

について簡単にお伝えできればと思います。今後定期的に更新しますので、どうぞ宜しくお願いします。

EVERSTEEELとは?

EVERSTEELは、鉄リサイクル促進によるカーボンニュートラル実現を目指し、鉄スクラップ画像解析システムを開発しています。

EVERSTEELのコア技術の開発と事業構想は、元々東大で鉄鋼材リサイクルを学んでいた代表の田島圭二郎が2019年からスイスでの研究開発を経て確立しました。私は帰国後の2020年冬に田島と出会い、そこから2人で開発を進め、2021年3月にEVERSTEELを設立しました。創業してからはありがたいことに、未踏アドバンスト東大IPC 1st roundFoundX研究開発型スタートアップ支援事業/NEDO Entrepreneurs Program(NEP)等の支援事業に採択をいただき、無事1期目を終えることができました。

Why EVERSTEEL?

カーボンニュートラル実現に向けた鉄スクラップの利用拡充

改めてお話しすることでもないですが、カーボンニュートラルの実現は現在最も重要な課題の一つです。日本でも、2020年10月に菅元総理が所信表明演説にて2050年のカーボンニュートラルの実現を表明しました。そして、国内製造業の実に4割のCO2排出量を占める鉄鋼業界はその削減が急務となっています。2021年2月には日本鉄鋼連盟が「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を発表、各鉄鋼会社が発表した中長期事業計画にも脱炭素実現に向けた方針が記されています(日本製鉄JFEスチール)。鉄鋼業界のCO2削減策としては先の鉄鋼連盟の発表中でも述べられており、水素還元製鉄や排出されるCO2の分離回収、そして鉄スクラップの利用拡大によりCO2排出量を大幅に抑制できる電炉の拡充(=リサイクルの促進)があります。

鉄スクラップとその利用拡大への課題


鉄スクラップ(「鉄屑」といった方が耳馴染みはあるかもしれません)は、例えばビルの解体現場から出てきた鉄筋、廃棄自動車、製造工場加工時に発生した端材などで、鉄のリサイクル原料として使われます。

鉄スクラップの一例

このリサイクルを促進させるための大きな課題が、鉄スクラップに混入する不純物(製品に影響を及ぼす非鉄成分)です。不純物濃度が一定値を超えると表面割れ等の劣化が発生してしまいます(経産省の資料(下記に該当スライド抜粋)にも掲載されているように、0.1%単位で影響があります)。そのため、鉄鋼メーカーでは熟練作業員が多種多様な鉄スクラップを適切に管理し、製造する製品に合わせて適切に配合する必要があります。熟練作業員の後継者不足が深刻化しているとともに、管理が不十分なことによる原料コスト・製造コストの増大が深刻化しています。加えて、CuやSnなどはトランプエレメントと呼ばれ、一度鉄中に溶解してしまうと、除去が困難であり将来的な不純物濃化が懸念されています。

出典:令和3年6月経済産業省 製造産業局『「製鉄プロセスにおける水素活用」 プロジェクトの 研究開発・社会実装の方向性(案)』


鉄スクラップ画像解析技術

この問題の解決のためにコアとなるのが弊社の開発している鉄スクラップ画像解析技術です。鉄スクラップは、ただでさえ多種多様な上に、加工方法も様々です。加えて、ほとんどの場合大量のスクラップがバラ積みされており、一つ一つのスクラップが個別に存在することはなく、画像解析の対象としては非常にハードです。加えて、例えば産業用機械で使われているモーター等の非鉄成分を多量に含むスクラップ(異物)が混入するケースがあり、こちらを検出する必要があります。

鉄スクラップの種類判定のデモ
異物判定(モーター)のデモ


単純に技術的難度が高いことに加え、開発には鉄スクラップへのドメイン知識が必要となります。そのため、今年は製鉄所に足繁く足を運び(特に代表の田島は現場に1ヶ月以上住み込んで修行していたこともあります。これはきと田島がnoteを書いてくれるでしょう!)、徹底してドメイン知識を身につけています。

自社で作成した鉄スクラップと異物のカタログ(150ページ以上)

現在は鉄鋼メーカーとの実証実験を行っていますが、この先プロダクトリリースとサービスインを目指します。

最後に、なぜ自分(たち)がやるのか

最後に少し自分のことを書いて終わろうと思います。

投資家と話す際に必ず聞かれる質問の一つが「Why you」です。この問いは「なぜEVERSTEELがこの課題を解決すべきか?」という問いであることは言うまでもないのですが、同時に「なぜ自分がこの課題に挑戦しているのか?」という自分自身への問いだとも感じました。今は早く顧客に価値を届けなければという気持ちでいっぱいですが、2022年はその問いへの自分なりの答えも出しいこうと考えています。また、自身の業務としては、採用含めた組織作りに注力したいと思います。

最後になりますが、今年を振り返ると色々な方との出会いに恵まれ、助けていただいた1年だったと感じます。本当にありがとうございました。来年は飛躍の年にするぞ〜〜〜!

長文にお付き合いいただきありがとうございました。皆様、良いお年をお迎えください。

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