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ホロコーストを疑っている人のために

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かつてナチスドイツが行ったホロコーストを「なかった」という人たちがいます。それらの主張の代表的なものを、ある海外サイトを参考に論破する試みです。
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2024年4月の記事一覧

ホロコースト否定の教祖とされるポール・ラッシニエについて(2)

前回記事: 前回、どーしてもフランス語がうまく翻訳できず、意味が分かりにくかったり、意味不明な箇所がそこそこあって、せっかく記事にして紹介はしたものの、ちょっと読者の方には申し訳なかった感じもしています。 しかし、ラッシニエがかなりの嘘つきだという事実はお分かりいただけたのではないでしょうか? ラッシニエが自分自身を信頼させるような方向で嘘をついているので、翻訳記事の中でもそう呼ばれていたように、「詐欺師」と言っていいと思います。 今回は西岡が、マルコポーロ論文で以下の

ホロコースト否定の教祖とされるポール・ラッシニエについて(1)

ネットでは、「出羽守」なるスラングがあります。「海外では〜」と語る人を揶揄するためにしばしば用いられます。例えば「ヨーロッパでは〇〇が当たり前」、「欧米ではすでに〇〇になっていて日本は遅れている」のような場合に使われます。そのように言われるようになったせいか、近年ではそうした「出羽守」は少なくなった感じがします。しかし過去、インターネットが一般に使えるようになった初期の頃までは、「欧米では」と語られることは頻繁にあったように思います。ホロコースト否定論を海外から輸入した西岡昌

チクロンBの素材は珪藻土って本当?

今回は特にどうということもないかもしれない些細な事柄についての短い記事です。いつも長くてすみません😅 アウシュヴィッツのガス室で使われたとされる毒ガスはシアン化水素ガス(青酸ガス)ですが、その発生源はチクロンBという名の製品名を持つ薬剤でした。上の写真のように、缶の中に粉末よりは大きな粒状の、しばしば「ペレット」と呼ばれる素材にシアン化水素の液体が染み込ませてあったとされます。 このペレット自体は、ほとんどの説明では「珪藻土」と説明されているようです。日本語Wikiped

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(22):ホロコーストとヒトラー(3)

ロンゲリヒによる資料の翻訳紹介のラストです。ヴァンペルト報告書の翻訳は19個の記事となっていましたが、今回は3つで済んでホッとしています。 確かに、ヒトラーがユダヤ人絶滅を命じた命令書は存在せず、明確に口頭で命令したことを示す確定的な証拠もありません。しかし、前回までのロンゲリヒ論文の内容を読めば、ヒトラーはユダヤ人問題の解決に強い関心を持ち続けていることがわかりますし、彼自身がたとえユダヤ人の絶滅を命令したわけではなくとも、少なくともそれに反対したことはあり得ないとは言い

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(21):ホロコーストとヒトラー(2)

前回: それでは2回目の翻訳です。 ▼翻訳開始▼ 6.ヒトラーと1937年末以降のユダヤ人迫害の急進化6.1 1937年末までに、拡大主義的な対外政策への移行と同時に、ユダヤ人迫害の新たな、より急進的な段階が始まった。ユダヤ人をドイツから追放するという目標が優先され、これは特に、さらなる差別、直接的暴力の行使、より大きな経済的圧力によって達成されることになった。 6.2 このより急進的な路線は、1937年の帝国党大会でヒトラーが行った強い反ユダヤ主義的演説によって実際

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(20):ホロコーストとヒトラー(1)

ホロコースト否定の議論において、ヒトラーに関する議論はあまりないと言っていいかと思います。強いて言えば、否定派が一つのテーゼのようにして主張する「ヒトラーの命令書がない」がある程度です。他には過去にnoteで起こしてきたヒトラーに関する記事として、以下のものがあります。 ヒトラーに関する議論があまりないのは、一つはヒトラーの命令書が存在しないことは定説側も同意している事項であり、また、ホロコーストの否定論自体に関する議論は、ヒトラー以外の部分で、あまりにも多岐にわたるため、