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ホロコーストを疑っている人のために

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かつてナチスドイツが行ったホロコーストを「なかった」という人たちがいます。それらの主張の代表的なものを、ある海外サイトを参考に論破する試みです。
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2020年12月の記事一覧

ヘスの記憶はどれだけ信頼できるのか?

この記事のタイトルは今回翻訳するPHDN(THHP)の記事のタイトルそのままですが、ヘスの記憶にも誤りがあることは先に述べておかなければなりません。記憶が完全に正しい人なんていないと思います。 ヘスの記憶間違い(修正主義者によると嘘の証拠)として有名なケースは二つあって、以下に示します。 ヘスはヒムラーから、三つのラインハルト作戦収容所について聞いたことを語っているが、その語られた時期である1941年の夏(あるいは6月)にはそれら絶滅収容所は存在していなかった。 ヘスは

ホロコーストの犠牲者数を知るための重要資料:コルヘア報告について(2):コルヘアは「知らない」と言ったが嘘だった。

この記事は、2020年12月28日に最初に投稿した記事ですが、かなり理解し難い翻訳になっていたため、2023年11月9日に全面翻訳し直したものです。今回翻訳し直したことで、ロベルト・ミューレカンプ氏による推測が多少はわかりやすくなったかと思います。 さて、リヒャルト・コルヘア氏は、当時、親衛隊に要請に応じて、1942年末までのユダヤ人犠牲者数を取りまとめた報告書である「コルヘア報告」で知られていることは言うまでもありません。 この報告書は、少なくとも1942年末までにおよ

ホロコーストの犠牲者数を知るための重要資料:コルヘア報告について(1):コルヘア報告

コルヘア報告とは、ホロコーストの犠牲者数を知る上で、重要な資料の一つです。その中身については、研究者くらいにしか知られていない上に、日本語の翻訳資料が見つかりませんでした。否定派と議論する上で欠かせない一つの資料でもあると思ったので、海外の方ではネット上でテキスト文により公開されているコルヘア報告の資料があったので、それをこの記事では日本語訳して公開します。 日本のネット上での否定派は、このコルヘア報告については、歴史修正主義研究会にあるIHRの所長であるマーク・ウェーバー

ホロコースト否定派が回答出来ない問題:一体ユダヤ人はどこに行ってしまったのか?

註:この記事の初回公開は2020年12月25日ですが、2023年11月29日に全面的に修正し、翻訳し直しています。 タイトル通りの問題です。否定派がずっと誤魔化し続ける問題であり、これで否定派をやめてしまった人(エリック・ハント、デヴィッド・コールなど)もいます。東へ送られ再定住したユダヤ人って、移送された人はいるにはいるようですが、百万を軽く超えるオーダーで移送された事実など、全く根拠はなく証拠もありません。 昔はそれでも、ソ連が鉄のカーテンで隠したのだ、と言えたのです

ホロコースト直前のヨーロッパのユダヤ人の数/ホロコーストに関する人口統計の資料について。

※本記事は2020年に初投稿したものを2023年10月3日に翻訳等を修正したものです。 ホロコーストの犠牲者数について算出しようとする時、ごく初心者的に考えると、二つの方法があることに気づくと思います。 収容所や殺戮現場などで犠牲となったユダヤ人の数を集めて合計する(積算法) ホロコーストが起きる前のユダヤ人人口を調べて、戦後の生存者の人口を差し引く(減算法) この二つが簡単に出せるのであれば、二つの方法で計算して、相互チェックすればトータルのホロコースト犠牲者総数を

ホロコースト否定論:リーチャード・ハーウッド「600万人は本当に死んだのか?」なるど定番のホロコースト否定小冊子について。

2024.1.2追記:この記事は、リチャード・ハーウッドによる『Did Six Million Really Die?』について、主に英語Wikipediaの解説を翻訳した内容で記事としていましたが、最初にアップした頃には内容をほとんど知らずに紹介していたため、非常に内容が乏しい記事になっています。同時期に、機械翻訳に通して修正もせずに翻訳したものをアップしていましたが、2023年になってそれを全面的に改定しており、現状ではそちらの方が詳しい内容になっていますので、この記事は

ホロコーストにおける「ディーゼルエンジン問題」について(16):ガス殺の遺体があった証拠。

まさか、あのアルバレス・シリーズに追加されていた記事があったとは知りませんでした。最終だと思っていた第十一部の目次にも載ってません。追加したのなら目次くらい更新して欲しいぞ 笑。でも更新が今年の2020年5月なので前回から三年も空いてるのですね。 短いので早速翻訳しておきます。 ▼翻訳開始▼ ガスバンに関するアルバレスの反論 重要な証拠 ガスバンに関するアルバレスの反論 第一部:ディーゼル問題がいまだに無関係な理由(更新1、2) 第二部:プロデューサーガス 第三部:フォ

マイダネク収容所に「ガス殺遺体」はあったという報告書。

2022.1.5追記:末尾に追記があります。 ガス殺遺体は一体も見つからなかった、と言って憚らない人がいます。そりゃ、遺体は基本焼却処分して、骨は砕いて骨粉にし、アウシュビッツだと近くのビスワ河や池に捨てていたし、それらがないところでは近くの土地の上などに撒いていましたから、基本、ガス殺後の遺体など存在するわけがないのです。 ホロコースト否認論者はこれを分かっていて言っていると思います。何故なら、ホロコーストのことをよく知らない人を「え?」と思わせるネタに使えるからです。

ホロコースト否認論 トレブリンカでは蒸気で殺された?(5):電気も、空気もあった。目撃者はしっかり見ていたが、わからなかったのだ。

トプ画写真は、今回の翻訳記事でもっとも多く名前が出てくる、ベウジェツ絶滅収容所の3D画像です。ご覧いただいてわかる通り、ここには強制移送者の収容施設などありません。否定派はもちろんトランジット収容所(通過収容所)だと主張してますが、ここから移送者が「具体的な情報として」どこに行ったのかは否認派は決して言いません。 で、この「ベウジェツ」がどうしてそのような日本語になるのか、ちょっとだけ困ってます。だって英語表記は「Belzec」なので、DeepLなどで翻訳すると必ず「ベルゼ

ホロコースト否認論 トレブリンカでは蒸気で殺された?(4):神話の修正主義的捏造(PartC)

※2020.12.14に前回記事を読まれた方は、12.15に脚注を含め他にも多少内容の追加変更をしているので、ご注意下さい。 細かい部分がよく分からない議論になっているHCサイト記事の翻訳シリーズを続けていますが、基本的な話としては、ドイツ第三帝国が行ったとされる大規模ジェノサイドの具体的な実態は、戦後になってその全貌が暴かれたのですが、戦時中から情報はある程度外部へ伝わっており、今回の話は、その戦時中に伝わっていたであろう話の信憑性に関するもの、と思います。 余談ですけ

ホロコースト否認論 トレブリンカでは蒸気で殺された?(3):神話の修正主義的捏造(PartB)

ネットというのは非常に広大であり、探し物を探り当てるには、一般的にはGoogle検索などのツールを使うわけですが、それだけではなかなか探し当てられないことも本当にしばしばあります。例えば、トプ画写真のように今回の話題の発端となったニューヨークタイムズ紙面を探し当てようったって、そう簡単にはいきません。 ある人は、わざわざニューヨークタイムズに金払ってこの紙面を得た人がいるようですが、たかがこれだけの情報をお金払うとか私にとってはあり得ません。広い世界ですし、世界中で多くの人

ホロコースト否認論 トレブリンカでは蒸気で殺された?(2):神話の修正主義的捏造(PartA)

前回の続き。 思っていたよりも話がずっと細かくて、「分からない事が分からない」状態にあり、翻訳も四苦八苦しております。が、ホロコースト否認派がこの蒸気殺人の話がかなり好きらしいのは分かります。一度捕まえた話(気に行った否認論)は絶対離さないという否認論者の習性ですからね。ルドルフ・ヘスの拷問話やアウシュビッツのクレマトリウムⅠガス室捏造話など、否認論者はずっと武器を持っていたいのでしょう。反否認派側はその武器を解体して使えなくしていくのがお仕事だったりします。 基本的な否

ホロコースト否認論 トレブリンカでは蒸気で殺された?(1):基本資料の紹介と議論の始まり。

こちらのコメント欄で、ueko1911さんからネタ提供のあった記事を翻訳していくシリーズの始まりです。 面白そうなネタであることは薄ぼんやりとは知っていました。多分、最初に知ったのは、歴史修正主義研究会にあるどれかの文書資料だったと思いますが、「ホロコーストの捏造を戦時中のプロパガンダ起源説にしようって話か……」くらいにしか思ってませんでした(過去に議論していた南京事件でもあった話なので慣れっこです)。ただ、ホロコースト否認論者は如何なる証言証拠であろうとも、虐殺話に直接結

イェーガー報告書の件(9):イェーガー報告書に対するマットーニョの裁きは如何に?Part5(2)

今回のトプ画写真は、リトアニアのカウナス(Kovno)の第七砦に集められたユダヤ人を撮影した写真だそうです。これは、ドイツではなく、リトアニアの市民によって結成されたTDA(国家労務大隊)が集めました(そして第七砦に投獄の後、その後大半が虐殺された)。リトアニアを含め東欧の非ユダヤ人の人たちの多くが、ホロコーストに加担していたという話は記事の中にもありますし、実際そうだったようなのですが、ではどうしてそのようなことになったのかについては今のところ私は不勉強のため、細かいことま