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優しさを失わないでくれ

『優しさを失わないでくれ』……
このフレーズは、古い特撮が好きな人……その中でも、ある特定の年代の人であれば、すぐに『あれだな』と気がつく言葉だと思います。

この言葉……
『優しさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、互いに助け合い、
どこの国の人たちとも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ。
たとえその気持ちが、何百回裏切られようと。
それがわたしの最後の願いだ』
というように続きます。
1972年から1973にかけて放映された特撮テレビドラマ《ウルトラマンA(エース)》の最終話ラストシーンで、主人公ウルトラマンAが地球を去る直前に、別れを惜しみつつ子どもたちに残した言葉です。

番組中、全編を通しての宿敵《異次元人ヤプール》は、数多の地球侵略計画をウルトラマンAに粉砕されながら、最後の最後に卑劣な罠を仕掛けます。
心優しい子どもたちの誠意につけ込み、美しい友情を嘲笑う言葉を吐いて滅んでいくのでした。
あまりのことに絶望し
「もう優しさなんか信じない」
そう口にする子どもたちの前で、ウルトラマンAは人間の青年、北斗星司の姿からウルトラマンの姿に変わり……
ヤプールの残した最後にして最強の敵を倒した後、人々の前で変身する様子を見せたことの代償として、地球を去らねばならなくなりました。
そして、『優しさを失わないでくれ』……の一説をみなに語り、暮れゆく夕日の空へと飛び立ったのでした。

1974年に生まれた私は、さすがにリアルタイムではこの放送を見た訳ではありませんが……
80年代~90年代にかけて夕方に流されていたテレビの再放送で、何度かこの場面を見ていました。とても感動しました。
熱心なクリスチャンであった脚本家の市川森一さんが、聖書の言葉を参考にして作ったセリフのようですね。

そこから時は流れ……ぼちぼちと学校訪問の依頼をこなすようになってきた時期に、
いわゆる『壁にぶつかる』と言えるような 出来事がありました。
今でさえ、そんなに話術が上達したとは言えませんけれど、昔の私は今現在よりさらにずっと講話の腕は未熟そのものでありまして……。
そのせいで悩みの多い日々を送っていた頃のことでした。
みなさんの前で言いたいこと、伝えたいことはたくさんあるのに、なかなかすんなり言葉になってくれません。
一旦、考えるのを諦めて風呂に浸かっていた時に、幼き日に聞いた『優しさを失わないでくれ』というウルトラマンAの言葉が思い起こされてきたのでした。
まさに私の言いたいこと……伝えたいことは、この言葉の中にあったのでした。
しかし、そのままでは学校などでの講話には使えないし、何よりも、私が自分で紡いだ言葉……というわけではありません。
そこで
『優しさをなくさないで欲しいのです。
悩んでいる人に寄り添い、苦しんでいる人を助けて、障害のあるなしに関わらず、どんな立場の人とも支え合って共にいる。
という気持ちをなくさないで欲しいのです。
たとえ、あなたの優しい心が、何百回裏切られることになっても、人と繋がりを持とうとすることを、諦めないで欲しいのです。
これが私の、最後のお願いです』
というように文言を変え、講話の最後のシメの言葉として使っていました。

ちょっと仰々しいのと、言い回しが照れくさいのもあり、今は使っていません。
今はわざわざこのフレーズに頼らなくても、自分の言いたいことをしっかり言葉にできるようになりましたので、しばらく使っておりませんが……、
年内最後となる次回の講話(2022年12月14日)では、久しぶりに使ってみようかな……と考えています。

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