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術後のROMの方法を再考する!上腕骨近位端骨折術後に対するアプローチ

皆さん、こんにちは!
LOCO LAB.ライターの塚田です(^ ^)

今月は肩について各テーマでお伝えしておりますが、自分の方では上腕骨近位端骨折について述べていきたいと思います。

●はじめに

上腕骨近位端骨折は高齢者に生じやすい骨折の一つであり、骨粗鬆症との関連が指摘されています。

骨折の部位としては骨頭、大結節、小結節、外科頸などが挙げられますが、大腿骨頸部骨折と比べ、骨癒合が良好であり比較的機能障害は残りづらいと言われています。その為転位がない、あるいは小さいものについては基本的に保存療法を選択することが多いです。

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しかし転位が大きかったり、解剖頸骨折などにより骨頭への血流障害が疑われたり、骨質不良で骨接合が困難な症例に対しては髄内釘やロッキングプレート、人工骨頭など観血的治療手段が用いられることもしばしばあります。

ではその治療手段を選択する上で、判断される要素は何でしょうか?
最も用いられている分類としてNeerの分類があります。


●Neerの分類

Neerの分類は骨折を骨頭・大結節・小結節・外科頸の4つに分け骨片の数と転位の程度により分類されるものです。

転位については
・相互に1cm以上離開している
・45°以上回旋転位している

場合はこれらを転位骨片とし、転位骨片が1つなら2-part骨折、2つなら3-part骨折、3つなら4-part骨折としています。

その為どんなに細かく折れていても転位がなければ、1-part骨折となります。

ただ転位の程度は部位により例外があり、外科頸骨折については骨頭横径の1/3以上側方転位した場合は転位とします。また大結節骨折についても大結節が骨頭頂点より頭側に大結節の頂点が転位した場合、転位ありとしています。

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この中で手術適応に関しては

◯5mm以上の転位のある大・小結節単独2-part骨折
◯転位のある外科頸2-part骨折
◯3-part骨折
◯4-part骨折
◯高度粉砕骨折、脱臼骨折例

などとしています。
(仲川喜之 他:高齢者上腕骨近位端骨折の髄内釘固定.MB Orthop 19(5) 2006.P129-137)

ただしこれらはあくまで目安であり、手術侵襲によって患者の不利益が助長されることがあれば、保存療法となることもあります。


●観血的アプローチ

保存療法の場合は三角巾固定を早い場合は4週まで、多くは上腕骨の骨癒合が得られる6〜8週まで行い、4週から肩関節他動運動6〜8週から自動運動が開始されます。

一方で観血的アプローチに関しては早期からの他動運動及び自動介助運動が開始出来ることが利点として挙げられます。しかし手術の方法によって侵襲方法が異なるため、それらを考慮してROMをはじめとする運動療法を行わなければなりません。

観血的アプローチについては様々で髄内釘やスクリュー固定、ロッキングプレート、人工骨頭置換術、リバース型肩人工関節などがありますが、ここでは比較的多く選択されている髄内釘アプローチとロッキングプレートアプローチについて簡単に触れていきます。


◯髄内釘
2-part外科頸骨折が最も良い適応とされますが、方法によっては3-part骨折や一部の4-part骨折でも適応があります。

手術手技は三角筋と大胸筋の筋間を切開(delto pectral approach)し、骨折部を確認後、棘上筋腱や棘下筋腱、肩甲下筋腱などに糸をかけ上腕骨頭を整復します。

delto pectral approachについて → https://youtu.be/kwVNhvfONtE

その後棘上筋腱に線維方向の切開を入れ、上腕骨頭頂点を展開し、上腕骨頭頂点内側部から髄内釘を挿入します。3-partや4-part骨折では棘上筋腱や肩甲下筋腱に鋼線を通し骨頭を包み込むように締結させたり、スクリューを挿入しそこに締結させたりして整復・固定を行います。

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◯ロッキングプレート
上記と同様に2-part, 3-part, 4-part骨折に適応されます。

手術手技は髄内釘と異なり三角筋の前部1/3と中部1/3の間で筋線維に沿って侵襲します(deltoid splitting lateral approach)

三角筋の深部で肩峰下滑液包を切開し、腱板に包まれた骨頭を露出します。

deltoid splitting lateral approachについて → https://youtu.be/fujMUPvZLdE

3-part骨折などの大・小結節骨折に対して棘上筋腱や肩甲下筋腱に太めの糸をかけ引っ張りながら整復を行います。その後腋窩神経に注意しながらプレートを設置しロッキングスクリューを挿入します。プレート設置後に固定の不安がある場合、腱板部にかけた糸をプレートやスクリューヘッドに締結させます。

このように腱板に対して糸をかけたり、もしくは切開したりする場合もある為、回旋運動を行う際は十分な注意が必要です。またdeltoid pectral approachでは大胸筋と三角筋の滑走障害が、deltoid splitting lateral approachでは屈曲や外転、肩甲骨面挙上などにおいて三角筋の筋機能低下が予測されるため、これらに対する配慮も重要となります。

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●術後リハビリテーションの流れ

上腕骨近位端骨折術後のリハビリテーションは安静固定期、可動初期、積極的可動期の3期に分類されます。上腕骨近位端骨折の程度にもよりますが、3-part骨折では骨癒合にだいたい6〜8週を要するというようにいわれている為、6週以降を積極的可動期としてリハビリテーションを行っている報告が比較的多く見られます

可動初期に関しては術式により異なる為、Drに確認することが重要ですが、可動初期では愛護的な他動運動もしくは自動介助運動から開始します。おおまかな流れについては下記のスライドを参照して下さい。

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このように病期に応じて適した可動域訓練や筋力増強訓練により骨癒合を阻害することなく、肩関節の機能向上を図ることが大切ですが、構造的な問題が改善し、ただ単にこれらを行うだけで肩関節機能が向上していくわけではありません。

なぜならば手術の侵襲や安静時期の固定などにより、肩関節周囲筋群の筋緊張亢進や伸張性低下、関節包の拘縮が骨頭の偏位が生じさせるからです。それにより肩峰下接触圧が上昇し、肩峰下インピンジメントを引き起こしたり、腱板機能の低下により肩関節のアウターマッスルの過緊張を生じさせたりすることで肩関節の協調運動が低下します。

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また肩関節の周辺組織には疼痛を伝達する侵害受容器が非常に多く分布しています。具体的には棘上筋や肩峰下滑液包、関節包、烏口肩峰靭帯、上腕二頭筋などが挙げられ、これらは疼痛を伝達しやすいだけでなく、肩関節の協調運動にも影響を及ぼします。
(Minaki Y et al:Mechanosensitive afferent units in the shoulder and adjacent tissues. Clin Orthop Relat Res. 1999 .P349-56. )
(Soifer TB et al:Neurohistology of the subacromial space. Arthroscopy. 1996 P182-186.)

これらのことを踏まえると上腕骨近位端骨折後に肩関節の機能向上を図るためには

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これらを評価し、アプローチすることが重要だと思います。

この点について書こうと思っていましたが、先日江尻さんが執筆したnoteに非常に詳しく、わかりやすくまとめてありましたので、是非そちらご覧頂ければと思います。

となると自分が書くことがなくなってしまいここで終わりになってしまいます(笑)


というのは冗談でこの江尻さんの記事に追加して自分が上腕骨近位端骨折術後のリハビリテーションで大切にしている3つのポイントについてお伝えしていこうと思います。

その3つのポイントとは

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になります。
これらを意識することも早期に肩関節機能を獲得する上で重要であると考えていますので、順を追って説明していきたいと思います。

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