【シン・エヴァ】生きろ。
ネタバレしています!!
映画をご覧になっていない方はご注意下さい。
これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版
海外ドラマによくある「Previously on ~」ですよね。「主よ、人の望みの喜びよ」をBGMにして序・破・Qを振り返るものです。YouTubeにも公式がアップロードしており何度も視聴していたのですが、劇場が暗くなって最初にこれが流れた時、全く同じ映像を観ているはずなのに目頭が熱くなってしまいました。庵野監督は本気なんだな。本当にエヴァンゲリオンを終わらせようとしているんだなと感じたのです。
虚構の中の現実
最終章はパリのシーンから始まります。これも予てからEVA-Extra等で公開されていたものと同じですね。
これまで「第3新東京市」という箱根に位置する架空の都市以外は登場しなったエヴァの世界に、いきなり実在するフランスの都市が映像として出てくると不思議な感覚になりますね。旧世紀版でも多少はありましたが、新劇場版には「バチカン条約」「ユーロ支部」「アメリカ政府」というワードや、マリが英語を話したり、富士山、エッフェル塔といった国の象徴が出てくるといったグローバルな視点が意識されているという特徴があると思います。
そしてパリでの目的は、「アンチLシステム」を発動させることでパリの「コア化」を復元し、ユーロ支部をネルフから奪還してエヴァのパーツを回収すること。
- 私たちは「ヴィレ」。ネルフ壊滅を目的とする組織です。
Qでミサトさんがサラっと説明してくれていましたが、このパリのシーンでヴィレとネルフの対立構造がハッキリと提示されたのが有り難かったです。Qで全く説明しなかった分を取り戻すかのように、シン・エヴァではとても丁寧に説明してくれます。
- 急にこんなことになってて、訳分かんないですよ!
ようやく訳が分かりました。(笑)
この時に流れる音楽も良いんですよね。こういう曲って何て言うんだろう。とにかくフラメンコ調でテンション高めな劇伴でカッコよかったですね(語彙力)。早くサントラ届かないかな...。
シン・エヴァは庵野版もののけ姫なんじゃないか
そしてシーンは変わり、あの三人組の登場です。アスカと、「綾波じゃない方」のアヤナミレイ(仮称)と、我らが失意のシンジくんが赤い大地を放浪するロードムービーが始まります。ちゃんとQの続きで本当に安心しました。(笑)
- 辿り着いた場所が、彼に希望を教える。
彼らが辿り着いたのは「第3村」。ニア・サードインパクトを生き延びた人々が暮らしている集落でした。世界を壊したという現実と、手を差し伸べてくれた渚カヲルを目の前で失ったことによってシンジは心を閉ざしてしまいましたが、旧友と再会し、そこで「生きている」人々を目の当たりにしたことで少しずつ心を開いていく。この辺の展開は「もののけ姫」を彷彿とさせると思いました。シンジ=アシタカということではなく、かつて「みんな死んでしまえばいいのに」と言ったあの庵野監督が、農業とか、「生きることは辛いことと楽しいことの繰り返し」とか、「残った森を大切に」とか、生命の営みとか、種の存続とか、一周回って宮崎駿のように「生きろ」と言っているということが良い意味で「気持ち悪い」と思うと同時に人間としての円熟味を感じるし、やっぱり人って変わるんだなとしみじみ思えてメチャクチャエモかった。庵野秀明、まさかの宮崎駿化です。
また、「コア化」「第3村」「ニアサー」の設定が組み合わさることで10年前に日本を襲ったあの災害とリンクしているようにも感じました。人が住めなくなった赤い大地。そしてニアサーという「災害」を生き延びた人たちが暮らす第3村。住んでいた場所を追われ、大切な人を失っても尚生きたいと強く願っている。これはまさしく「もののけ姫」であり、この日本で生きる我々へのメッセージであり、何より庵野監督の「希望」であるように思いました。
それから色々あり、シンジはヴンダーに戻ること。そして父親と向き合うことを決意します。そのきっかけが「じゃない方」の黒波というのがまた良いですよね。
旧世紀版と違って新劇場版のシンジはとことん向き合います。序ではいつもネルフ本部という安全圏にいるミサトに対して「ミサトさんたちはずるいですよ!」と苦言を呈し、破ではここでしか生きられないと言うレイに対して「違う!綾波は綾波しかいない!」と断言する。Qでは罪から目を背けようとしたけれど、シン・エヴァで「落とし前を付ける」ことを決意する。誰かと真正面から向き合い、泣いたり笑ったり、時にはぶつかり合い、傷付け合いながら人は大人になっていくんですね。
- 逃げちゃダメだ。
エヴァを象徴するセリフですが、もう逃げない。それはシンジの決意であり、庵野監督の決意であり、ファンもまたその決意をもって結末を見届けなければならないんだと感じました。
NEON GENESIS
ここから先は私にはチョットナニイッテルカワカラナイ。サンドウィッチマン状態に陥ったところが多々ありましたが、そんなに気にしていません。大事なのはシンジとゲンドウの親子対決です。
何でもありの裏宇宙で、メタメタでエモエモな戦いを繰り広げ、どうなるのかと思ったら人類補完計画ではなく「ゲンドウ補完計画」が始まります。ゲンドウ、お前が喋るんかいというね。そして破でゲンドウに「大人になれ」と言われたシンジが「大人になったな」と言われる胸熱な展開で父と母に別れを告げ、最後の種明かし。完膚なきまでにハッキリと説明され、全てが繋がります。
そして現実へ
- さようなら。全てのエヴァンゲリオン。
- THRICE UPON A TIME
三度目の正直でシンジは「大人」になり、現実に帰っていきました。これで庵野監督もようやく現実に帰れるでしょうし、ファンもまた現実に帰れます。旧世紀版が少年が神話になる物語だったとすれば、新劇場版は少年が大人になる物語だったと言えるのではないでしょうか。
辛い現実の世界で「生きる」ために、この作品を最高な形で終劇させてくれた庵野監督におめでとう。そして全ての制作者(スタッフ)に、ありがとうと言いたいです。
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