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ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視36「開いた窓 Maigret et la fenêtre ouverte」(2001)

原作:ジョルジュ・シムノン「開いた窓 La fenêtre ouverte」(1936)
脚本:ピエール・グラニエ=デュフェール、ミシェル・グリソリア
監督:ピエール・グラニエ=デュフェール
本編:93分


あらすじ

裏口から事務所へ帰ってきたオスカーとシルヴィのラジェ夫妻。事務所で書類の整理を始めると、オスカーの身辺を捜査するために司法警察のラシュナル達が訪れるが、デシャルノによって「社長は午後3時までいません」と追い払われる。
シルヴィは午睡を取り、デシャルノは控え室で昼食、ラジェは「午後2時までには戻る」と昼食へ出かけた。
午後2時50分、控え室ではオスカーに用がある者達が数人待機していた。そこへ、「ラジェに会うまで帰らない」とマドレーヌが訪れる。
午後2時55分、ラシュナル達が再び事務所を訪れる。控え室に続く廊下の窓が開いており、冷たい風が入っていた。
午後3時、オスカーの部屋から爆発音が聞こえた。ラシュナル達は、フェルドマンを除いて一斉に部屋へ駆けつけると、オスカーは心臓を打ち抜かれて死んでいた。ラシュナルは叔父のメグレ警視に応援を頼む。
捜査を開始したメグレは、オスカーが多くの人に恨まれていたことを知る。果たして、犯人はどのようなトリックで自殺を偽装しようとしたのか。

視聴記録(原作の内容にも触れています)

原作は30ページ程度で、主要事件関係者は2人だけのちょっとしたトリックを使った軽めの謎解き短編であり、戦争により落伍した正直者が不正直者に溜めた憎しみから殺人を犯してしまう話でした。

ドラマは、原作の要素を活かしつつ、トリックを変更し事件関係者を増やしていました。
原作のトリック解明がメインの物語に合わせたのか、ドラマも〈不可思議な状況で被害者が殺される⇒限定された空間の限られた容疑者に尋問・事件当時の状況の再現⇒犯人に逆トリックを仕掛けてボロを出させる〉という構成になっています。
物語の殆どがラジェのオフィスで展開され、容疑者達も足止めされていること、メグレが今回の話の構造を意識した発言もあるため意図的な展開だと思います。

ミステリーネタとしては、クリスティというより、ネロ・ウルフ物にありそうな感じでした。
トリックは大したものでは無く、謎解きミステリーとしては犯人も分かりやすい展開でしたが、最初の殺人一つの謎だけを主題にドラマ一つを持たせる雰囲気は悪くなく、最後に関係者全員がオフィスから出て行く場面も閉じられた物語の終わりとして綺麗でした。

そのような展開の為、個別の人物掘り下げはデシャルノの自分語りが多い位で、メグレシリーズとしては少ないです。

ラシュナル刑事とのコンビも板についており、決して傑作ではありませんが、いつもと違う雰囲気の作品として意外と楽しく観れた。そんな距離感の作品でした。

「こういう謎解きこそ捜査の真髄なんだ。お偉方には分からんさ。アガサ・クリスティみたいだろ」

ルチアーニに捜査の真髄を語るメグレ

キャスト

  ジュール・メグレ/ブリュノ・クレメール
     ラシュナル/アレクサンドル・ブラッスール(31~39)
     ルチアーニ/ファビアン・ベアール(31、33、36)

  シルヴィ・ラジェ/フロランス・ダレル
     デシャルノ/ジャック・ブーデ
  オスカー・ラジェ/ジャック・ダクミーヌ
    フェルドマン/クレマン・ハラリ
マドレーヌ・ル・ゴフ/イブリン・グランジャン
 ステファン・ラジェ/ガイ・ルレ

ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録

☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。

〇01「メグレと消えた死体」(1991)
 04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
〇36「開いた窓」(2001)
△37「メグレとワイン商」(2002)
 38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)


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