見出し画像

大川橋蔵・主演『荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻』(1982)紹介と感想

1966年に『銭形平次』で平次を演じ始めてからは、命を懸けて平次を演じていた大川橋蔵は他のテレビ時代劇には出ませんでした(舞台では他の役も演じています)。

時は流れて1981年4月、フジテレビが時代劇の2時間ドラマ枠〈時代劇スペシャル〉を放送開始。その初回放送に大川橋蔵主演で『沓掛時次郎』が製作され、以後1982年『荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻』、1983年『鯉名の銀平 雪の渡り鳥』と、大川橋蔵主演作が製作されました。

現在でも、時代劇専門チャンネルで〈時代劇スペシャル〉枠の時代劇は定期的に放送されており、大川橋蔵主演作も時折放送されています。


あらすじ(時代劇専門チャンネルホームページ同番組あらすじより)

和州郡山藩主・松平忠明の御前で、隣家に住む友人で藩剣術指南役の河合甚左衛門と立会った荒木又右衛門は、その腕を認められ、共に指南役として仕えることになる。
ある日、備前岡山で、又右衛門の妻・みねの弟・渡部源太夫が、甚左衛門の甥・河合又五郎に斬殺されるという事件が起きる。
岡山藩主・池田忠雄は幕府に、江戸へ逃げ旗本の安藤家に匿われた又五郎の引渡しを要求するが、安藤家はこれを拒否、外様大名と旗本の争いになる。みねの弟で源太夫の兄である渡部数馬は仇討ちの助勢を願うが、又右衛門は、兄が弟の仇を討つことは禁じられていると諭す。
だが、安藤家の罠により、みねの父が斬殺されたことで、又右衛門も仇討ちを決意する。一方、甚左衛門も甥である又五郎の護衛をすることになる……。


紹介と感想

本作は、1634年に実際に行われた日本三大敵討ちの一つ〈鍵屋の辻の決闘〉を題材にしています。
〈鍵屋の辻の決闘〉は、昔から歌舞伎や講談、映画にドラマと様々な媒体で人気の演目で、この際に実際より話も盛られ、有名な36人斬りが誕生しました。

岡本綺堂や長谷川伸などの有名作家も題材としていますが、本ドラマは原作なしの作品となります。
全部で3作品作られた大川橋蔵主演のスペシャルドラマの中で、唯一の武士が主役の話であり、個人的にも3作の中で一番好きな話になります。

一番の見どころは最後10分ほどに渡る鬼気迫る仇討ちの場面になりますが、それ以外にも映画時代から歳を経て円熟味の増した大川橋蔵と親友・河合甚左衛門役の田村高廣が、お互いに友人を思い苦悩する場面や友人として会う最後の場面など良い場面が多くあります。

前半は、又五郎の身柄の行方と同時に、お互いの立場で悩む又右衛門と甚左衛門をじっくりと描き、仇討ちを決めてからは甚左衛門の動きと、それを読む又右衛門の様子がテンポよく描写されます。

そして、クライマックスでは柳生新陰流免許皆伝の実力を存分に発揮する仇討ちの場面が描かれます。ここまでのドラマがすべて乗った仇討ちシーンは涙なしでは観ることができません。
仇討ちが始まる前の緊張感が高まる場面では、こちらも息ができない程に緊張し、仇討ちが始まってからは「甚左衛門の最後がかわいそう」「数馬もっとがんばって早く終わらしてー」といつ観ても思います。

若い頃に得意としていた美剣士や、長年演じた銭形平次とは違う、渋い武士としての大川橋蔵をたっぷりと味わえる一作です。

「短い付き合いではあったが、我が生涯唯一人の友垣であった」
「かたじけない。その言葉、忘れはいたさん」

『荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻』(1982)又右衛門と甚左衛門が語らう最後の夜より

ドラマ概要

監督/岡本静夫
脚本/保利吉紀
製作/東映
放送/1982年5月14日
時間/91分

キャスト
荒木又右衛門/大川橋蔵
河合甚左衛門/田村高廣
    みね/関根恵子
  渡部数馬/志垣太郎
 河合又五郎/西田健
  松平忠明/林与一


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?