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ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視 第9話『メグレと口の固い証人たち』(1993)紹介と感想

原作:ジョルジュ・シムノン『メグレと口の固い証人たち』(1958)
原題:Maigret et Les Témoins Récalcitrants
脚本:クリスチャン・リュリエ/ミシェル・シブラ
監督:ミシェル・シブラ
時間:90分


あらすじ

土砂降りのなか司法警察へ辿り着き、常習者の尋問を始めようとした矢先、殺人の知らせが入った。
ラショーム・ビスケットで有名なラショーム家の長男レオナール・ラショームが死んだのだ。
家族に悲しみの色は見えず、不自然な状況がある中でも強盗殺人の説を訴え続ける。
非協力的な家族に判事からの圧力。それでもメグレは自分の捜査方法で事件を紐解いていく。


紹介と感想

立ちションの場面から始まる今回の話は、原作同様に新世代に適応できなかった斜陽一族を描いていました。

ラショーム家の頑なさとプライドの高さは映像になることでより感じることができました。
原作よりもラショーム家について直接的に表現する箇所を減らし、代わりにソランジュ自身の存在が印象に残るように描写しており、それが死にかけのラショーム家との対比になっていました。

ソランジュとヴェロニックは幼馴染となっており、その過去も新たに描写されています。
ソランジュに足された分、ヴェロニック周りの描写は要素を抽出してまとめた感がありましたが、メグレと二人で話す場面などからヴェロニックの哀しみはしっかり描かれていました。

今作はコメリオは病欠設定となり、アニュロ判事がメグレの前に立ち塞がります。
原作同様メグレについてまわるアニュロ判事は、自分の職分と権力をしっかり意識して捜査に口出ししており、メグレにとって厄介な存在です。

それでも、ジェンヴィエにトランス、ムルスなどの同僚と共に真相に近づいていくメグレ。
最後の場面は、ラショーム家で判事や家族を集めて謎解きと事件の再現をしてみせる姿は、正に名探偵のそれでした。

ソランジュへ焦点をあてたことや、結末部分の変更によって原作とは少し印象が変わりましたが、小説からドラマへの変更としては妥当な内容だったと思います。
動き回って捜査するメグレに、アニュロ判事とのやりとりなど、ドラマの展開としても停滞することなく楽しめ良いドラマ化でした。


キャスト

 メグレ警視/ブリュノ・クレメール
ジャンヴィエ/ジャン・クロード・フリッサン
  トランス/エリック・プラット
   ムルス/ピエール・バイヨ

  アニュロ/マルク・デュレ
 ソランジュ/ドゥニーズ・シャレム
  アルマン/オリヴィエ・パジョ
 キャサリン/ジゼル・カサデス
デストゥール/アラン・フロマジェ
ヴェロニック/クリスティアン・コヘンディ

他の映像化

ルパート・デイヴィス主演(英)
 シリーズ2 第11話『The Reluctant Witnesses』(1962) ※日本未紹介

ジャン・リシャール主演(仏)
 第38話『Maigret et les témoins récalcitrants』(1978) ※日本未紹介

愛川欽也 主演(日)
 第8話『警視と口の固い証人たち』(1978)


ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録

☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。

〇01「メグレと消えた死体」(1991)
 04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆05「メグレと首なし死体」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆09「メグレと口の固い証人たち」
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
〇12「メグレと幽霊」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
〇17「ローソク売り」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△29「マダム・キャトルと子供たち」(1999)
△30「野菜畑事件」(1999)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
〇36「開いた窓」(2001)
△37「メグレとワイン商」(2002)
 38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)


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