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アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星 Star Over Bethlehem』(1965)作中で注釈がついている聖書内容の引用・要約

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003

『ベツレヘムの星』の感想を読んでいると、「聖書の知識が無いから100%楽しめない」「理解が難しい」と聞くことがあります。

個人的には、知識が無くても、キリスト教を題材にした様々なジャンルの短編集として楽しめる短編集だと思います。
ただ、小説の題材となった内容を知っておくと理解がしやすいのは間違いないと思うので、本書で取り上げられている場面について、自分用に調べた事をnoteにも載せておきます。

筆者は聖書の知識がほぼ無いため、内容についての解釈などは何も書いていません。
また、自分用のため要約内容が誤っている可能性もありますが、暖かい目で読んでください。


ベツレヘムの星

(1)新約聖書ルカ伝第二章16

 マリアはかいば桶のなかの嬰児を見おろした。

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p11

第二章第6~7節でマリアは幼子を産み、かいば桶の中に寝かせた。その後、羊飼いたちが天使から救い主が生まれたこと、その子は布に包まってかいば桶の中で眠っている事を聞く。そして16節で羊飼い達は、マリアとヨセフ、かいば桶に寝かせてある幼子を見つけた。

(2)新約聖書マタイ伝第二十七章46

「我が神、我が神、なんぞ我を見棄て給いし?」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p16

小説に記載されている通り、十字架に磔にされたイエスが叫んだ言葉。

(3)新約聖書マタイ伝第四章8

「そのときこそ、あいつを山の頂上に連れていき、おれのこの世界の王国を見せてやろう。」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p23

悪魔に試みられるために御霊により荒野に導かれたイエス。四十日の断食の後、悪魔がやってきて「神の子なら石をパンに変えるように命じてごらん」などとイエスを試す。そして、イエスを高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せながら、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」と言った。
しかし、イエスは「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」と悪魔へ言った。そこで、悪魔はイエスから離れて行った。

いたずらロバ

(1)新約聖書ルカ伝第二章1~7

一行は町につくと、人や動物でごったがえしている大きな宿屋にはいりました。

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p32

皇帝アウグストゥスから住民登録をしろと勅令が出され、人々は皆、登録するために自分の町へ旅立った。ヨセフもダビデの血筋であったので、身ごもっているマリアと一緒に登録するために、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ行った(マリアは聖霊によって身ごもっていた)。ところが、ベツレヘムに滞在中、宿屋に泊まる場所が無かった。子を産んだマリアは、布にくるんでかいば桶に寝かせた。

(2)旧約聖書民数記略第二二章21~30

「三十七代前のおばあさんは預言者バラムのロバでね」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p33

モアブの王でチッポルの子バラクは、自国に入ってきたイスラエルの民を恐れ、ベオルの子バラムに「この民を呪ってください」と使いを出した。
話を聞いたバラムは、「主がわたしに告げられるとおりに、あなたがたに返答しましょう」と言った。事情を聞いた神は「あなたは彼らと一緒に行ってはならない。またその民を呪ってはならない。彼らは祝福された者だからである」と止めた。
一度は断ったバラムだったが、再度の頼みを受け、神からも「一緒に行きなさい。ただしわたしが告げたことだけをしなければならない」と言われたため、ロバと共に出発した。
しかし、バラムが誤った道へ行こうとするため、主の使は彼を妨げようとして、道に立ちふさがっていた。
その手に抜き身の剣を持っているのを見たロバは、主の使を避けて歩くが、それが見えないバラムはろばに鞭を打った。
その後も、同じ様なことが繰り返され、最後には杖で打たれたろば。その時、主がロバの口を開き、ロバはバラムにむかって「わたしがあなたに何をしたというのですか。あなたは三度もわたしを打ったのです」と言った。
バラムは「お前がわたしを侮ったからだ。わたしの手につるぎがあれば、いま、お前を殺してしまうのだが」と言ったが、主がバラムの目を開いたので、彼は主の使が手に抜き身のつるぎをもって、道に立ちふさがっているのを見て、頭を垂れてひれ伏した。

(3)新約聖書ルカ伝第二章8~20

赤ん坊が生まれると、羊飼いたちが来て赤ん坊を讃めたたえました

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p.33

「あなたがたのための救主が生まれた。この方こそ主なるキリストである。あなたがたは、幼子が布にくるまってかいば桶の中に寝ているのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられたしるしである」との神の使いの言葉を聞いた羊飼いたち。
羊飼いたちは急いで行ってみると、マリアやヨセフ、かいば桶に寝ている幼子を見つける。
羊飼いたちは、この子について、今のお告げで伝えられたことを人々に伝えるが、人々は不思議に思う。しかし、マリアは言われた事を心に留めて、思いめぐらした。
羊飼いたちは、見聞きしたことが何もかも語られたとおりだったので、神をあがめながら帰っていった。

(4)新約聖書マタイ伝第二章1~2

長い立派なローブをまとった人たちがはいってきました。

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p.33

イエスが、ユダヤのベツレヘムで生まれたとき、東の方から占星学者達がエルサレムにやって来て「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私たちはその方の星が昇るのを見たので、拝みに来たのです」と言った。

(5)新約聖書マタイ伝第二章13~15

その人は何か言ってしきりにヨセフを急きたてていましたが、

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p35

占星学者達が黄金・乳香・没薬などの贈り物を捧げて帰った後、主の使がヨセフの夢に現れ、「幼子と母を連れて、エジプトに逃げなさい。ヘロデ王が幼子を捜し出して殺そうとしている」と伝えた。
ヨセフは、夜の間に幼子と母を連れてエジプトへ行き、ヘロデ王が死ぬまでとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。
ヘロデ王は怒り、人々を使ってベツレヘムとその近辺にいる二歳以下の男の子を殺して回った。
こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就した。

(6)新約聖書ルカ伝第一九章28~38

ロバに乗って町へはいっていく……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p36

エルサレムへ向かうイエスが、「オリーブ畑」と呼ばれる山のふもとにあるベトファゲとベタニアに近づいたとき、村にいた誰も乗せたことの無い子ロバに乗った。

(7)新約聖書ヨハネ伝第十九章28~30

あの厩でなめた没薬のような苦いものが海綿の上にしみこませてある……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p36

ゴルゴダの丘で十字架につけられているイエス。すべてのことを成し遂げたのを知ると、「渇く」と言った。これにより、聖書の言葉が実現した。
人々は、酸っぱいぶどう酒を満たした海面をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口元に差し出した。
イエスは、このぶどう酒を受けると、「成し遂げられた」言って息を引き取った。

水上バス

(1)新約聖書マルコ伝第六章47~48

「それとも、水の上を歩いていったのかな!」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p61

五千人にパンと魚を分け与えたイエスは、弟子たちを船に乗せベトサイダへ先に行かせ、自分は群衆を解散させた。
群衆と別れてから、祈るために山へ行ったイエス。
夕方、弟子たちの舟が、湖の真ん中で逆風のために漕ぎ悩んでいるのを見たイエス。
夜が明けるころ、湖の上を歩いて弟子たちのところに行くと、幽霊だと勘違いした弟子たちは怯えた。
イエスは「安心しなさい」と声をかけ船に乗り込むと、風は静まり、弟子たちは心の中で驚いた。

夕べの涼しいころ

(1)旧約聖書創世記第三章8

夕べの涼しいころ

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p63

蛇にそそのかされた女は、アダムと一緒に園の中央にある木の実を食べた。
二人は目を開き、裸であることを知り、いちじくの葉をつづり合わせ腰を覆った。
同じ日、風の吹くころ、神が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女は、神の顔を避けて、園の木の間に隠れると、神はアダムを呼んだ。

(3)旧約聖書創世記第二章19~20

「うん、なんて名前にする?」
「そりゃきみがつけなきゃ」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p76

神は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれをどう呼ぶかを見た。人が与える名は、すべて生き物の名となった。
しかし人は、あらゆる生物の名を付けたが、自分に合う助け手は見つけられなかった。

(4)①旧約聖書イザヤ書第六五章17、②新約聖書ヨハネ黙示録第一章1~5

「『新しい世界』のことを話しながらね——」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p77

①「私は新しい天と、新しい地とを創造する。最初の事を思い起こすことはない。私の創造するものを、永遠に喜び楽しめ。私はエルサレムを喜び、民を楽しむ。そこには、泣き声も叫び声も聞かれない」

②イエス・キリストは、神から与えられた黙示を、御使を通して僕ヨハネに伝えた。ヨハネは、自分が見たすべてを記した。ヨハネはアジアの七つの教会へ黙示録を贈った。

いと高き昇進

注釈が多いため、注釈で説明がされているもの以外を載せています。

(9)①旧約聖書ダニエル書第八章16~27、第九章21~27、②新約聖書ルカ伝第一章19、26

大天使ガブリエルが一行を迎えた。

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p90

①では、ダニエルのもとに、②ではザカリアとマリアのもとにガブリエルが来る場面が描かれている。

(11)①旧約聖書イザヤ書第一四章12、②新約聖書ユダの手紙6、新約聖書ペテロの第二の手紙二章4

「ルシファーがどうなったかご存じでしょう」

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p95

①の該当範囲で記載されている、「天から落ちて地に投げ落とされた黎明の子・明けの明星」がルシファーのことを指している。
②では、罪を犯した天使を、大いなる日の裁きのために、暗闇に閉じ込めたことが記載されています。

(1)新約聖書ヨハネ伝第二章1~12

カナの婚礼のこと……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p127

ガリヤラのカナで婚礼があり、イエスと弟子たち、マリアがいた。
ぶどう酒が足りなくなり、マリアがイエスに「ぶどう酒が無くなりました」と伝えた。イエスは召使達に「水瓶に水をいっぱい入れなさい」と言った。
召使達がその通りにすると、水はぶどう酒になった。
これにより、弟子たちはイエスを信じた。
この後、イエスは母、兄弟、弟子たちとカペナウムに行き、幾日か滞在した。

(2)新約聖書ヨハネ黙示録第二一章6

始めなり終なり……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p131

神が新しい天と地を造り、先の天と地は消え去った。
御座からの声が言った「わたしは、アルファでありオメガである。始めであり、終わりである」

(3)新約聖書ヨハネ黙示録第一章18

また死と陰府との鍵を有てり……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p131

ヨハネが振り向くと、雪のように白い髪の毛をした、足までたれた上着を着、胸に金の帯をしめている人の子のような者がいた。
右手には七つの星を持ち、口からは鋭い諸刃の剣が突き出ていた。
彼を見て足元に倒れたわたしに、右手を置きながら彼は言った。
「恐れるな。私は始まりであり、終わりである。また生きている者である。わたしは死んだことがあるが、世々限りなく生きている者である。死と黄泉の鍵を持っている。そこで、あなたの見たこと、現在のこと、今後起ころうとすることを書き留めなさい」

(4)新約聖書ヨハネ黙示録第二二章12

各人の行為に随いてこれを与うべし……

アガサ・クリスティー/中村能三 訳『ベツレヘムの星』早川書房, 2003, p131

御使は、「この書の予言の言葉を封じてはならない。時が近づいているからである」と言い、「私はすぐに来る。報いを携えて、それぞれの仕業に応じて報いよう」とイエスの言葉をヨハネへ伝える。

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