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ローワン・アトキンソン主演『メグレ Maigret』各話紹介と感想


第1シリーズ 第1話「メグレ罠を張る」(2016) 【86分】

原作:『メグレ罠を張る』(1955)

ストーリーは原作に忠実で、十分にお勧めできる面白さでした。

しかし、現代のドラマ描写と50年代のパリを舞台にした原作に忠実なストーリーとの食い合わせが少し気になります。

現代ドラマにありがちな、上手く物事が進まない時に主人公が周りに責められまくる描写が、少し執拗すぎる感じがしてしまいました(このような描写が嫌いなのもあります)。
部下たちでさえメグレを信じ切れてない様子が少しあり、警察ドラマとしては正しいのかもしれませんが、メグレシリーズとしては少し不満な描写でした。

モンサン一家周辺は、原作より分かりやすい描写になっていました。

捜査の過程は、現代ドラマらしい重厚な映像で描かれており見応えがあります。
事件解決後に明るい光の中、平和なパリをメグレが歩いていく姿は今までの重圧を一気に発散する感じで好きでした。

ゲスト
 マルセル・モンサン/David Dawson
イヴォンヌ・モンサン/Rebecca Night
    モンサン夫人/Fiona Shaw

第1シリーズ 第2話「メグレと殺人者たち」(2016) 【88分】

原作:『メグレと殺人者たち』(1947)

物語の大筋は原作に沿っていますが、後半の展開はオリジナル部分が多かったです。

農家強盗皆殺し事件を最初に描写し、原作では後半で明らかになる情報も早めに明かしています。
農家強盗の事件に協力するようにコメリオに圧力をかけられる展開になっており、コロンバニの登場も原作より早くなっています。

犯人一味の正体や探している物についても、捜査より先に描写されることで、捜査により真実が明かされていく興味は原作より薄くなっていると感じました。

アルベールの店を開くのは原作と違いメグレ夫妻に変更されています。
そのため、メグレ夫人の出番が比較的多くあります。
最期のニーヌの決断の一つも原作から変わっており、ここは現代ドラマな感じがしました。

原作とは力点が違うドラマでしたが、満足感の高い内容でした。
アトキンソン版メグレでは一番好きです。

ゲスト
コロンバニ/Ian Puleston-Davies
  ニコル/Dorottya Hais
  ニーナ/Nathalie Armin


第2シリーズ 第1話「夜の十字架」(2017)【89分】

原作:『メグレと深夜の十字路』(1931)

原作にない要素として、メグレの同僚のクロードという警官の葬式の描写が最初に入ります。
また、エゼルが怪しい描写が最初から仕込まれていました。
現地警察で友人のグランジャン(原作では風紀班の刑事)との対立描写も追加されています。

車の入れ替えトリックは無く、カールが留置場で自殺未遂を行ったり、実の父親が出てきたりしています。
事件の黒幕は原作から変更されています。

原作のエピソードは大分使っていますが、グランジャン描写など原作に無い描写が多く、その追加描写がドラマの中でも重要な扱いになっているため、原作よりも各人物の掘り下げが浅い点が気になります。
特にカールとエゼルは割を食ってしまいました。

追加ドラマパートが好きかどうかが評価の分かれ目だと思います。
個人的には、一本のドラマとしては楽しめたけど、原作を知ってしまうとモヤモヤが出てしまう類の映像だったと感じました。

ゲスト
グランジャン/Kevin McNally
   カール/Tom Wlaschiha
   エゼル/Mia Jexen

第2シリーズ 第2話「ピクラッツのメグレ」(2017)【87分】

原作:『モンマルトルのメグレ』(1950)

かなり改変は多く、ストーリーも登場人物の性格も変わっています。

全体的に男性は原作にいるキャラも居ないキャラもみんな酷い人間へ変更されています。原作ではお人好しな伯爵まで、晩年は夫人に辛く当たった事になっていました。
フレッドも、原作は駄目な男だが愛嬌もある多面性がありましたが、本ドラマ版はクレメール版と同じくクソ男と言えるレベルに下げられており残念です。
反面、ラ・ローズを中心に、女性は全体的に原作より好意的な描かれ方が多く、女性の生き方を巡るドラマという要素が前面に出ている感じもあります。
人間描写やテーマの扱い方に、現代イギリスドラマを強く感じました。

全体として要素を盛り込みすぎており、原作にあったアルレットを含む裏町に住む人々の人間描写や、ラポワントの苦悩が薄まっているように感じました。
シリーズでは一番モヤモヤした話です。

ゲスト
アルレット/Olivia Vinall
 フレッド/Douglas Hodge
  ローズ/Lorraine Ashbourne


レギュラーキャスト

ジュール・メグレ/ローワン・アトキンソン Rowan Atkinson

   メグレ夫人/ルーシー・コウ Lucy Cohu
  ジャンヴィエ/ショーン・ディングウォール Shaun Dingwall
   ラポワント/レオ・スター Leo Staar
     ムルス/マーク・ヒープ Mark Heap

    ロニョン/コリン・メイス Colin Mace(1-1、2-2)
  コメリオ判事/エイダン・マクアードル Aidan McArdle(~2-1)

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