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読書感想文

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2024年6月の記事一覧

井伏鱒二 読書記録①(鯉/夜ふけと梅の花/山椒魚/屋根の上のサワン/休憩時間)

岩波書店のドリトル先生物語全集の翻訳で小さい頃から文章に親しんでいた井伏鱒二。 しかし、「山椒魚」を学生の時に読んで以来、作者の実作品を読むことはありませんでした。 今回、ふと思い立ち手に取ってみたので読了作品の感想を書いていきます。 鯉(1926年) 友人である青木南八から鯉を貰った私が、それからどれほど鯉に悩まされているかを描いた小品。 鯉を大切に思うあまり、鯉至上主義になっていく男。友人が亡くなってすぐに、友人の愛人に預けてある鯉を取りに行き、取る間に無断で枇杷を

ネロ・ウルフ長編26『母親探し』The Mother Hunt(1963)紹介と感想

レックス・スタウト 鬼頭玲子訳『母親探し』論創社, 2024 2014年から論創社から出ているレックス・スタウトのネロ・ウルフシリーズ。 今年の作品は、ドラマ化された作品は日本でも放送されましたが、原作としては日本初訳になります。 あらすじ 六月初旬の火曜日、ルーシー・ヴァルドンから受けた依頼は、家の前に置き去りにされていた赤ん坊の母親を見つけること、九か月前に亡くなったリチャード・ヴァルドンが父親である可能性を明らかにすることだった。 わずか三日で赤ん坊を一時預かって

2024年5月の読書まとめ+『宙海町ねこまた堂』『アニマル横町24』『さつまと飼い主』『おとりよせっていいな。』感想

5月は仕事が始まったことで、予想通り小説を読むペースがダウンしてしまいました。 それでも、レックス・スタウトやジョルジュ・シムノンの今年出版された本邦初翻訳本を読めたりと満足度は高かったです。 また、寝る前読書を中心に漫画は良いペースで読めました。 もなか『宙海町ねこまた堂』(2024) 気付いたら宙海町という所で目覚め、ねこまた店主が営むアンティーク店にお世話になることになったミハト。天使やシロクマ、ペンギンなども暮らしている不思議な町で過ごしながら、なぜこの町へ来たの