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読書感想文

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2024年4月の記事一覧

遠藤周作『私の履歴書 落第坊主の履歴書』(1989)紹介と感想

遠藤周作『私の履歴書 落第坊主の履歴書』日本経済新聞出版社, 2013 1989年6月に「日本経済新聞」へ掲載された、幼少期からの前半生を振り返る「私の履歴書」と、その内容に関連した過去のエッセイの再録で構成されています。 十数年振りに狐狸庵先生のエッセイを読みましたが変わらぬ面白さを感じることが出来て嬉しかったです。 滑稽で軽妙な軽さと人の深い所まで見抜くような深さのバランスが良く、そのどちらにも人間がしっかり描かれていました。 友人の自殺や戦時中の話など、シリアスな内

十津川シリーズ長編3『消えたタンカー』(1975)紹介と感想

西村京太郎『消えたタンカー』光文社, 1983 まだ読んだ事の無かった初期の十津川を読んでみました。 西村京太郎はドラマの方がお馴染みで、原作は、十津川シリーズ長編5作程度と中短編数作、名探偵シリーズ全4作、左文字シリーズ数作、『殺しの双曲線』などのノンシリーズ数作程度しか読んでない初心者になります。 あらすじ インド南端から1000キロの沖合で58万キロリットルの原油を運んでいたマンモスタンカーが炎上した。 近くを通っていた船に救助されたのは乗務員32名中、宮本船長

法月綸太郎『法月綸太郎の冒険』(1992)紹介と感想

法月綸太郎『法月綸太郎の冒険』講談社, 1995 著者の本は、クリスティーに関する考察を描いた「カーテンコール」を読むために『法月綸太郎の消息』を読み、「引き立て役倶楽部の陰謀」を読むために『ノックス・マシン』を読んで以来、約5年ぶり3冊目になります。 収録短編あらすじ 死刑囚パズル(1992) 死刑囚・有坂省二は、松山所長の計らいでお茶と饅頭を口に入れ、後は刑の執行を待つばかりだった。 しかし、執行直前に激しい痙攣状態に襲われ、そのまま息を引き取った。 死因は急性ニ

貫井徳郎『被害者は誰?』(2003)紹介と感想

貫井徳郎『被害者は誰?』講談社, 2003 病棟の本棚をブラウジングしている時に、タイトルが気になり手に取ってみました。 著者の本を読むのは初となります。 収録作あらすじ 被害者は誰?(e-NOVELS '01年10月23日号~'02年1月15日号/週刊アスキー '01年11月6日号~'02年1月29日号) 亀山俊樹の自宅の庭から女性の白骨死体が発見された。 亀山俊樹は自分の犯行だと認めたが、被害者の身許や動機などは黙秘を貫いていた。 自宅からは、十年前に書かれた三人

2024年3月の読書まとめ+埜納タオ『夜明けの図書館 7』、赤川次郎『三毛猫ホームズの騒霊騒動』感想

3月の読書まとめ 今月も多くの本を読みました。黒岩涙香を読み進めたり、久しぶりに南房秀久を読みたくなったり、『夜明けの図書館』を最終回まで読んだりと印象に残ることは沢山ありました。 特に入院以降は読書ペースが増加し、病棟の本棚から自分の読書傾向の弱い部分であり、どこかで読みたいと思っていた日本人作家に手を出せたのが嬉しかったです。 初読みの作家も多く充実した読書となりました。 入院自体はハプニングすぎましたが、いつもと違う読書が出来たのは不幸中の幸いでした。 また、感