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最高の置き手紙

昨日、あるアイドルの大切なお知らせが届いた。

僕が現役アイドルの中で最も文学的な面で推していたアイドルであるリリスリバースのアサギについてである。
アサギフライデーという彼女の書く文章はとても面白い読み物であった。知り合いのRTにより流れてきたある日の投稿をたまたま読んで「この文章を書く人と会ってみたい」と思って現場へ行ったくらいだ。
そんな彼女がアイドル活動を終えて新しい道へ進むということが発表された大切なお知らせだった。その後、時間を空けずにおそらく最終回になるであろうアサギフライデーが更新された。めちゃくちゃいいので読んで欲しい。

大切なお知らせによると、そう遠くない日にこの名作がこの世から消えることになるということなので感銘を受けた部分を後世に遺したいと思ってこの後書いていきます。

たとえば、あと1年耐えたらもっと売れる。2年耐えたら、アイドルだけで生活できるようになる。そんなこと言われたりもしました。でも、1年後は25歳、2年後は26歳。3年後に辞めるとしても、そこから就職活動するとしたら?新卒カードを手放した27歳の就業経験なしスキルなしの女が、希望の職種に就けるのでしょうか。
同期は社会人2年目になり、後輩が新社会人になり、合わない生活リズムや金銭感覚。いつしか、ひどい劣等感に苦しむようになりました。現状に対する焦りと、生活の苦しさ。毎日毎日アルバイトをして、自分のキャリアについて悩む暇もありませんでした。

アサギフライデー「春になれば」より引用

僕は賢い、頭のいい人と話すのは面白いので好きだ。彼女の文章を初めて読んだときから読んだ時「この子は頭がいいな」って思った。文章から伝わった。後に早稲田卒の才女であることを知った。そんな彼女が書いた言葉だからこの文章から多くのことを感じた。

アイドルというのは一般社会とは全く異なるベクトルでの評価がされる世界である。
そんな世界ではあるがアイドルは「大学生」というこの国で身分を保証されて自由に生活できる肩書きを持ちながら活動もできるものでもある。そのおかげで、大学生でありながらアイドル活動をする子が沢山生まれる。
一方、大学を卒業するタイミングで一般企業に就職してアイドル活動を終了する子が居るのも事実である。

残念ながら、アイドル活動をしていてもアイドル活動だけで生活できるの選ばれし人達であるのも事実のようである。地上から地下、地底と幅広くアイドルは居るが多くのアイドルはアイドル活動だけで生活が出来ないらしい。学生のバイト感覚でやってくれた方がオタクとしては気が楽かもしれない。

先程の引用を読んでもらえばわかると思うが頭のいい人こそ「周囲とのギャップ」に気付いてしまう。周りのレベルが高いというのもあると思うが、現実を見てしまうのだ。事務所の待遇が良かったり、ある程度売れてしまっていれば周囲と比べてもやって行ける自尊心を保てるだろうが多くの場合は厳しい結果となるのだろう。

アイドル業界は、その仕組み自体に、たくさんの問題点があります。そんな問題だらけの世界でも、今もなお、生き続けているアイドルも、私のように死んでいくアイドルもいるというわけですが、それはシステムとして正しいような気がしています。問題だらけの業界であっても、それらすべて飲み込めるような、あるいは、そんな事どうでもよくて、それでもアイドルをやりたい、と思える子こそが、アイドル適正がある子なのだと思います。アイドルの世界に合わない子達は日々淘汰されるし、合う子達はこの世界で、輝くステージを展開するわけです。
アイドルは多分、手を挙げれば、ごく普通の女の子でもなれる職業です。難しいのは、続けること。何年も続けることができて初めて、本当のアイドルになれるのだと思います。

アサギフライデー「春になれば」より引用

ここにそんな現実と理想の狭間で戦った人の本音が見える気がする。
そもそもシステム的に欠陥があるのである。金儲けしたい大人がその欠陥をわかった上で若い女の子達とシステムを利用してたりもするだろう。もちろんそうじゃない良識あるアイドル運営もいるだろうが、夢を追うという盲目的な若い女の子には見えなくなる部分が多くなるのも事情だと思う。
冷静に自分の未来を見据えた時にアイドルを続けた方が輝かしい未来が待ってると思える子が多いとも思えない。それでも「夢を追う」から頑張れることもあると思えるし、「それでもやりたい」と思える子は本気のレベルが違うのだろう。そんな子は本当に報われて欲しい。

中には妥協点を見つけて売れずともアイドル活動を続けながらどうやって生活がしていくかの生きる術を見つけ出した人達も居るだろう。「アイドルをやりたいからやる」それもひとつの答えなのだと思う。

アイドルになって、良かった?いつかそう聞かれた時、少し悩んで、でも多分、私は、イエスと答えるでしょう。ステージ上から見えた顔、声、涙。どれをとっても、素晴らしい景色でした。きっとずっと、何十年経っても、忘れることはありません。楽しかった思い出は、たとえ何があっても消えることはないので安心してください。みんなとの思い出を胸に、新しい世界で、私なりに生きていこうと思います。

アサギフライデー「春になれば」より

それでも彼女は「楽しかった」と言ってくれている。多分本心だ。そう思う。それほど眩しい世界だったのだろう。その世界を共有できたのだからこれほど嬉しいことは無い。

オタクは推しが卒業したら悲しむが、それ以上に推しの幸せを願うものだ。そう思いたい。少なくとも僕はそうだ。
色んなタイミングで色んなことを考えアイドルが新しい道へ進むことを決めると思うが、頭のいい彼女の出した結論はアイドルのひとつの答えとして尊重したいと思う。
職業アイドルの道を進むかどうか悩むことがあるアイドルには是非読んでもらいたい。












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