『西成ゴローの四億円』『 西成ゴローの四億円 死闘編』/観てみて_8⁡


◎清々しい。

『西成ゴローの四億円』『西成ゴローの四億円 死闘編』⁡

Vシネチックなタイトル。一作目を先ず。動機は『ONODA一万夜を越えて』で小野田寛郎氏役だった津田寛治さんが出演されているからなのと、その日はパッとしたい気分だったので、娯楽作とおぼしきタイトルに惹かれたから。そしたら鑑賞後にむずむずそわそわ。なぜなら直ちに続きが観たくなったから。素晴らしいぞ映画って。ちゃんと別世界に連れてってくれる。この作品もそう。後篇が間も空かず封切られるタイミングだったのもラッキー。⁡


◎振り返り(内容に触れています)⁡

これは大阪西成の日雇いで働く物静かなおじさんが主人公のお話です。主演は上西雄大さん。監督・脚本も。人殺しの廉で刑務所に入っていたのに何故か恩赦を受けて、でもそれ以外の事は覚えていない状態から物語はスタート。ボーン・アイデンティティーとかMr.ノーバディ的なテイストもちらり。あと松田優作さんやその作品を意識しているのは伝わってきました。二作品それぞれ単体でも成立しているけれど、通しで観れば主人公の失われた記憶の全貌が明らかになるし、娘の手術費を貯蓄していく過程を見届ける事も可能です。彼の集金力は半端ありません。⁡

アクションものとか好む割に怖がり痛がりの私は、ゴロー無双で助かりました。まだまだ稼ぐ術の無かった頃の彼が、目玉と腎臓を売っ払うと言い出した時はどのタイミングで目を閉じようかとさすがに震えましたが、そういうシーンは指と指の隙間から眺めて済む描き方にしてくれているのにも救われました。いや大抵の人はそんなことせずとも観られる演出だと思います。目玉だってすぐに(!)戻ってくるし。⁡

真面目に考えると誰もかれもがむちゃくちゃな事をしてるんですけど、むちゃくちゃも過ぎるとどんどんと戸惑わなくなってきて、いつの間にやら話の運びにドーンと乗っかって鑑賞出来た気がします。つまりは完全に娯楽作。全力で娯楽作でした。コミカルな台詞も沢山あるんですが概ね昭和の香りが漂います。同時に、持たざる人たちの厳しかったり恐ろしかったりする日々も示されます。好き嫌いが大きく分かれる作品ではあるかもしれません。

⁡前後篇共に芸達者な方が沢山出ています。特に後篇は有名な俳優さんがいっぱいです。運びも後篇は前篇以上にやりたい放題。加藤雅也さんなんかは浴びせかけられる罵りに対するリアクションが、天丼天丼な応酬が、まぁ笑うところなんですけど、あんなハンサムな人が目張り入れて眉はぼかしてそれだけで既にくどいのに、更には妙なカツラまでかぶって。でも不思議と奇を衒った感じが私には全くなくて。だけど、だから、それをいうと出演されてる方々みんなそう。木下ほうかさん、何故踊った。素敵。各人その成りきりっぷりややり遂げっぷりが徹底していて清々しかったです。

闇金姉妹もそう。徳竹未夏さん演ずる姉は乙女な部分が垣間見れて可愛らしかったし、故に強かったし、古川藍さん演ずる妹の振り切れ方も素晴らしかったです。よくもあんなに顔の筋肉が動くものです、感動さえしました。「や、殺られた、、、」って感じで撃たれて、普通絶対死んでるだろうっていう津田さんももちろん。⁡

それから音楽。両作山崎ハコさんの歌が流れます。映画の世界観にぴったり。原田喧太さんががっつり歌っておられる姿は後篇で目にすることが出来ます。元々はキャバレーだったというステージで。カッコ良いです。席を立つ時間がきたことを明確に示すパワーを持った主題歌もまた良いです。義理と人情と浪花節がOKの方には楽しめる作品なのではないでしょうか。まだまだ続編も作れそう。その時はまた観たいです。