ただ悪より救いたまえ/観てみて_4
◎サイコーすぎて動機息切れ目眩
ただ悪より救いたまえ
その日は朝から眠くていつも以上に頭が働かなかったので、ファン・ジョンミンのあれを観に行こうと決めた。あれはPG12ゆえ直接的なグロシーンは映っておらず、音だけでご想像にお任せくださるらしくて、でも実はそれさえも恐ろしくてずっと観れないままできたやつだった。そんな私でもその日は、マックスぼんやりなその日こそは、だからこそあれやこれやの想像にも耐えられるんじゃないかと踏んだのだった。
それでも多少のトラウマは覚悟。それでもどうしても観たかった、ジョンミン氏の演ずる様を。なのでやや千鳥足気味ながら劇場へと向かった、、、けれど観ることは叶わなかった。上映してなかったからだ。何故なら場所を間違えたからだ。笑ったぞ、膝が。
シネコンだし別の作品も沢山あったけれど、もうその日映画は止めにした。意気込みが過ぎていて心が折れてしまったのだった。ポキンと鳴るのが聞こえたもの。マジです。
ところが翌日、そう昨日午後!3時間ほど空きが出来て近場の劇場の上映スケジュールを見てみたら、まさにその時間にこれが鑑賞可能なのに気付いた。スーパーミラクル!!勿論直行した。
◎振り返り(無理です)
何故ならまだ私は渦中にいるからです。まだあの映画の世界で打ち震えたままです。物語はシンプルといえばシンプルで、柱のひとつは殺しあい。ずっと殺す者として生きてきた人間同志が出会って殺しあいます。一方はもはや殺す理由なんぞ忘れたと言い放ち、執拗にターゲットを追い続ける気の触れた人。もう一方は、殺られると色々差し障りが発生するので殺られる前に殺らねばと、殺らざるを得ない人。恐ろしいわ哀しいわなデュエリストたち。
本当に怖い時ってその瞬間笑ってしまうということをイ・ジョンジェ氏から改めて教わりました。屠畜業出身ゆえ刃物のプロの彼はビジュアルも徹底していて、一目見て絶対に近寄ってはいけない人だと分かります。まぁでもいくら退いたところで、きっとものっ凄く恐ろしい方法で三輪タクシーの運転手さんを脅して、馬車馬ムチ打つようにあっという間に駆けつけてくるに違いないんですけど。あとサングラスが微妙に服のテイストとミスマッチで、その違和感がより一層常人とは異なるワールドの人だということを常人の自己防衛本能に語りかけてもきます。あのちょっとした、ん?っていうのこそ恐ろしさのとどめな気がしました。
そしてファン・ジョンミン氏。本当にこの人は変幻自在の俳優さんだと思います。凄いです。娘にハグされた時のあんな顔見せられたらこちらは泣くしかないです。物語のもう一つの柱、娘への愛とか生きなきゃいけない義務感とか、あの表情で全部示されます。それにそんな演技力はもちろん、そもそもこの方シルエットが美しい。頭身が小さくて腰高で腕も指も長い。引きで見た時も手首から先がぐんと伸びていて、あの手で拳銃の引きがね引く画は、あまりにも映画的すぎて感動すらします。散々刺されてぐりぐりねじられた後、リレーのアンカー並みに全力疾走する姿だって魅せる力が半端ない。
最後にこの方、パク・ジョンミンさん。緩んだ腹部を惜しげもなく晒して、とてもとても優しくて可愛くて、主人公と観客を心から救ってくれる役割を担います。感謝しかないです。この俳優さんの存在を知れたのもこの映画のお陰です。他の出演作も観たくなりました。
、、、とにかく大傑作でした。年頭にこんなの観てしまって、今年の残りはどうしたらいいんだろうと既に途方にくれるくらいにはなってます。取り敢えず今思うのは、中野のコインロッカーのあの位置に荷物入れて高円寺歩いて(雨が降りますように!)、笹塚のあの店の絶対にあの席でラーメン食べようということです。