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【七転び八起きの七転び目②】

 どこがスタートだったのかはよく分からないし覚えていない。たぶんみんなテレビやネットのニュースでなんだか中国が大変そうだなって、そんなくらいの感覚だったと思う。
 だんだんと様子がおかしくなってきて、気がつけば笑えない状況になっていた。

 新型コロナウィルスってなんなんだ?

 すでに大会のためにアメリカとイタリア行きの航空券や宿泊施設も予約済みだった、エントリーも済ませて支払いも終わっていた。さすがにそろそろ落ち着くだろうと思っていた矢先、全ての大会が中止に……なんでこのタイミングでという絶望感、自分たちの仕上がりには確かな自信があった、それなのに。
 そして大会だけではなく、確かその頃は立川市にいたんだったかな……その後の北海道物産展も全部中止になり、毎日どこかから中止の連絡で電話が鳴る。
 予定されていた物産展のスケジュールがすべてキャンセルになり、お店の予約も全部なくなった。
 姉と夢中になっていたドラクエⅡを思い出したよ。何度も確認したはずの復活の呪文、なんど打ち込んでも画面にはエラーの文字だ。そのくらいの絶望感と言えばそりゃ軽くなるけど。

 飛行機の予約やホテルの予約も全部キャンセルして、茫然自失といった感じで北海道に戻った。予定していた直近の売上500万ぐらいが一瞬で消えた。
 店を営業していいのか悪いのかすら分からない。営業したところでお客さんは来ないし、営業することが社会悪みたいな雰囲気すらあったから。
 状況を把握して、未来も予想しないといけない立場だったけど、そんなことは誰にとっても不可能なことのように思えた。

 状況が良くなる兆しすらなく、そのまま生まれて初めての緊急事態宣言が発令され、世の中は完全にパニックに陥った。

 そのぐらいのタイミングだったかな、タクちゃんにこの騒ぎが完全に収まるまでどのくらいかかると思うか聞いてみたんだ。そしたら3年はかかるんじゃないかって見解で、そんなにかかるかなと俄かに信じ難い気持ちもあったけど、そのぐらいの気持ちでやらないと潰れてしまうと思ったから、お店の営業以外で売上を取る方法を模索することにした。

 溺れてから足掻いても助からないと思った。

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