魔法の薬
『ねえ、カナ。プラシーボ効果って知ってる?』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
『プラシーボ?えーとー、たしか、薬じゃないのに薬だって話して飲んでもらうと実際に効果があるってことでしょ?』
『そうそう。心の力で身体の状態を変化させちゃうなんて、人間の潜在能力ってほんとすごいなって思うのよね。でね、私、いいコト思いついたんだ』
『いいコト?』
『うん。これなーんだ?』
ミホはカラフルな錠剤みたいなものが入った小瓶を手で振って見せてくれた。
『ラムネ菓子?』
『うん。カラフルだし、薬の錠剤みたいだし、ラムネがいいと思ったの』
『で、それ、どうするの?』
『もちろん。食べるの』
『・・・それ食べたら、どうなるの?』
『これは今日から、魔法の薬になったの。元気がほしいときは赤。リラックスしたいときは青。悲しいときは黄色。色で効果を決めて飲めば絶対効果があると思うのよね』
ミホは、いいコト思いついたでしょって言わんばかりの子どものような笑顔を見せた。
『ふふ。でもそれ、ただのラムネだよ』
『ちがうんだってー。ラムネだってわかってても、効果あるって思って飲んだら、絶対に効果あると思うの。御守りのラムネバージョンだよ。それに落ちこんでる人に、魔法の薬だよって渡してあげたら元気になると思うんだ』
『ミホは優しいし、ほんとおもしろいよね。その魔法の薬、なんて名前にするの?』
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