鬱木ゆうと

これが未来電波基地のnote

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これが未来電波基地のnote

最近の記事

initについて

新アルバム「init」をリリースした。今作はキャッチ―・ポップさを意識した。 リリース直後は半端なものを出してしまったと落ち込んでいたが、2~3日経ち改めて聞いてみるとそこまで悪くないと思う。 以前、5部作の計画を公開したがモチベーションの問題もあり作業に着手できないでいる。 これらを再編して2~3枚にまとめるなどするつもり。 ひとまず未来電波基地のアルバム制作は少し休んで、違うプロジェクトを始めようと思っている。 以上

    • 【短編小説】sensitive life

      はじめに フリーター(1)吾輩は猫である。名前はまだない。  こんな文句から始まる小説がある。  俺はこれほど愚鈍な文学作品はないと思う。猫が人間を観察し考察する過程を描写し、然も人間が猫より劣っているかのように虚偽している。これは人間に対する侮辱行為だ。人間は有能でその他の動物は無能。そもそも猫が銭湯を覗いて古代ギリシャを語る、もしくは餅を喰って真理を心得るなんてナンセンス。  近年ライトノベルなる非科学的且つ、文学的要素に欠ける稚拙な作品が出回っているが、猫が世俗を語る物

      • 来たるアルバム5部作のロードマップ

        未来電波基地のアルバム制作を進めている。アルバム5枚分に相当するdemoは既に出来ており、コンセプトやリリース順までおおよそ決まっている。 これを"5部作"と定め、ここで未来電波基地の未来を先取りして紹介しよう。(ジャケットは仮のもの) ①曇り空に似合うやつ現在製作中のアルバム。曲数は12~15曲くらい。Personaのキャッチーさにグランジ成分を足して、昭和のような懐かしい雰囲気の曲も幾つか収録する。815に近しいムードだが、今作はとにかく曇りに似合う。 soundclo

        • #5 佐武あつし

          大音量で音楽が流れている。ギターやボーカルも目立つが、なによりドラムが大きいと思う。100Hz帯の音をブーストしてスピーカーから流しているのだろうか。店内の人々は音楽の音量に負けないような声量で喋っている。 いわゆる「ロックバー」にいる。店の隅にあるテーブル席で、佐武あつし(さたけ・あつし)と鬱木ゆうとは向かい合って座っていた。鬱木は率直な意見を口にする。 「ここまで音量を大きくする理由がわからない」 「え?」 鬱木はうんざりしながら同じことをもう一度言う。 「ここまで音量を

        initについて

          #4 金子ゆい

          金子ゆい(かねこ・ゆい)は目の前の男から3万円を受け取った。慣れた手つきで財布に入れる。それは日ごろ使っているものとは別の財布だった。彼女は高校3年生にしては少し多い金額を、いつもその財布に入れて持ち歩いている。 ホテルの一室だった。男は煙草を吸いながら、にやけて不揃いな歯並びを見せる。 「ねえ、今から飯食べ行こうよ」 「用事があるんで」 「わかった。じゃあまたラインするね」 きも。と心の中でつぶやいてホテルから出る。東京のとある区。駅から奥まったところにあるホテル街を歩きな

          #4 金子ゆい

          #3 寺川ともえ

          野島総合研究所、通称「野島総研」は日本最大手のシンクタンクである。主に官公庁主導の大規模プロジェクトを請け負い、その本社ビルは横浜にある。 現在、進行中のプロジェクトの一つに「機械学習を用いた日本人特有遺伝子の解析」というものがある。これは、日本人に共通する遺伝子データから、特定の疾病にかかるリスクや性格的な傾向を見出し、予防医療を普及させて日本人の健康寿命を延ばすという大仰なものだった。 データ分析を行うのは「データサイエンティスト(データ分析士)」の仕事であり、コンサル

          #3 寺川ともえ

          #2 清村しげはる

          清村しげはる(きよむら・しげはる)は74歳。戦時中の思い出を語るのが日課だった。白髪を奇麗に整え、しゃべりは明朗。その姿は同世代の老人と比べても矍鑠としている。 「戦地ではそりゃあ大変な思いやったよ。私が戦ったのはフィリピンのミンダナオ島でね、命令に従って村を包囲して銃剣を構えとった。そしたら民家からぶあーっとアメリカ兵が出てきて、一斉に銃で撃ってきおった。それは罠だった。私は必死になって走った。撃たれたくない、死にたくない、その思いだけで、仲間たちの背中を追い抜いて思い切

          #2 清村しげはる

          #1 関口あい

          関口あい (せきぐちあい)は22歳。私立大学文学部4年生。就職活動中である。リクルートスーツに身を包んだ彼女は、アイスカフェラテのストローに時々口をつけながら淀みなく喋っている。日差しが強い夏の日、交差点に接するドトールコーヒーでの出来事だった。 「私、ADHDの"社不"だから。自分に向いてる仕事が分からないのよね。服が好きだからアパレル向いてるかもと思って説明会にエントリーしたけど、当日の朝にニキビできてて、テンションが下がって部屋から出たくなくなって行かなかった。私、典

          #1 関口あい

          これが未来電波基地の歴史

          未来電波基地は鬱木ゆうとのソロプロジェクト。ベースとドラムは打ち込み。声を変えているのは地声で歌うのが恥ずかしいから。 VOCALOIDやネットレーベルが台頭していた2010年代、多分に漏れずボカロ曲を作っていた鬱木ゆうとは様々なサブカルバンドに触れて「下手でも歌っていい」ことに気づき自分で歌いだす。 当時大学を休学中で、心療内科に通いつつダウナーな日々を送っていたが、DTMをしているときは夢中になれた。 「未来電波基地」という名前もこの時期に考案した。 2011抗不安剤

          これが未来電波基地の歴史