稽古6回目でした

こんにちは。Mr.daydreamerの上野です。

6回目の稽古場レポートを書いていきます。今回の稽古でやったことは、5回目の稽古でやったことの続きでした。

よって今回の稽古では、脚本の内容を立ち上げていく作業のみとなりました。その理由としては、この稽古で作品立ち上げの方向性を決めることで、後半部分の創作の方法を検討できるようなるからです。

以前に作品の創作を、その日にいるメンバーに合わせたシーン作りで行っていたことが何度かありました。もちろん、それでも創作は可能であるのですが、私は独立して作ったシーンを繋げていくのが苦手です。一つずつ、決めたことから発展させていく方法で創作したいので、最近は少人数の芝居を好んで作っています。

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本題

9月23日。6回目の稽古。

今回の稽古では、P.1〜P.5を創作していきました。前回まではP.3から創作していましたが、冒頭から流しながら立ち上げていくことにしました。

これは、前回の稽古で最後に行ったことを深めていくために、冒頭から創作することが効果的であろうと考えたからです。

前回の稽古までは、日常と非日常の切り替わりの「身体」が中心であったため、その切り替わりの精度を上げるための試行錯誤であったとも言えます。

今回の稽古からは、前回の稽古で最後に行った、役者の「状態変化」を中心に見ていくことになります。常に相手を見ながら、行動を全部禁止された状態で行われていた前回の稽古から、行動の制約を取っ払った状態にして演技をしてもらうことになります。

まず、行動の制限を取っ払ったことで、身体の状態を維持することが難しいことが分かりました。これは、役者の生理現象とリンクした難しさであると言えます。役者に課した状態として徹底してもらったのは、常に相手の顔を見続けるというものです。しかし、顔以外の身体の制約がないことによって、顔以外の身体の状態の自然体に顔もつられて動き、結果的に顔を逸らしてしまうことが多々ありました。

役者の身体とは言っても、それを支えているのは人間としての身体であり、日常生活で行うような行為と重なったとき、つい顔も日常生活と同じように動かしてしまうのです。この生理的な反応を抑えてもらうことに、結構時間を要してしまいました。

また、役者の状態を日常と非日常で大きく変化させてもらいました。日常では上記で述べてきた状態を維持してもらうのですが、非日常に切り替わった時点で顔を一切合わせないようにしてもらいました。この変化が結果として、些細な変化としかなりませんでした。「顔を逸らす」という行為を、「目を逸らす」という行為で済ませることと同じような状態で受け手には見えてしまい、今一つそれまでの状態からの変化が感じられませんでした。

これを避けるために、非日常に移った時点から身体全体を相手とは反対に向かせてもらうようにしました。

しかし、ここでも役者の生理現象との干渉が生じました。役者2人とも、経験が豊富な役者に分類されると私は思っています。役者2人の演技の身体としては、「ストレートプレイ」を得意としていると私は思っています。そのため演技が、演じるキャラの心情を反映させることに、自然と(無意識に)チューニングしています。

これがどのような結果を生むのかというと、役者は非日常のタイミングにおけるキャラの心情を表現してしまいます。しかしこのタイミングで私が求めているのは、心情の変化を表現するのではなく、2人を取り巻く状況の変化を表現することです。よって、キャラの心理状態とは乖離した「顔を逸らす」という行動を取ってもらっています。役者はキャラの心理状態を心に留めたまま、身体だけ別の行動を取らされているのです。

これは言葉にする以上に難しいことを要求しているのです。言葉で言うのは簡単ですが、専用の訓練を積んだ役者でなければ実行することは不可能でしょう。もしこれを読んでいる方の中で、役者をやっている方がいたら試してみて欲しいのですが、1分程度の日常会話をエチュードで作った後に、ラジオ体操をしながら同じようなテンションと気持ちのままで同じ会話を行ってみてください。恐らく、身体の状態に引っ張られて、最初の会話と同じように演じることができないと思います。

この難しいことをやってもらうために、変化を大きいものに変更しました。具体的に言うと、顔を逸らすだけではなく、身体全体を相手と別方向を向くようにしてもらいました。身体の変化を大きくすることで、キャラの心理状態との距離を広げ、どちらかに影響される可能性を減らすことができます。

と、ここでも簡単に言葉にしてはいますが、これもなかなかに難しいことに変わりはありません。

何度かこの状態でも試してみましたが、役者の中に混乱が生まれていました。このとき、役者からの希望で身体の状態の制約を外して一度やりたいと言われました。恐らく、キャラの心的状態を確認したかったのでしょう。

同じところを制約を外した状態でやってから、また心身の状態を制限した状態でやってみました。このとき、先ほどまでやっていたことが概ねできるようになっていました。今回創作してくれているメンバーは、それぞれの団体で似たような訓練や経験を積んでいたからかもしれませんが、次回の稽古まで同じシーンの稽古をすることを覚悟していた私にとって、とても驚かされました。役者の2人には感謝しかありません。

また、シーンの立ち上げを行っていく中で、P.1のト書きの最後の行の表現を重視することにしました。

このト書きは、初めてこの作品を観ることになるお客さんにとって、世界観を提示するための材料となります。あくまで、この行為は理解のためのキッカケに過ぎないのですが、こうした小さなキッカケを重ねていくことが、後々の作品理解に繋がっていくと言えます。

今回の稽古場レポートはここまでです。

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