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上演脚本『Leere』

はじめに

このnoteは、2021年12月3日〜5日に行われる演劇公演、Mr.daydreamer 番外公演『Leere』の上演脚本です。
公演情報はこちら

デイドリ恒例(?)の「脚本の前売り」となります。
序盤は無料で読めますので、雰囲気だけ知りたい方もぜひお楽しみください!

本番まで脚本の内容を知らずに楽しみたい方は、公演後にご購入いただくことも可能です!(noteで全編ご購入いただいた方も、ネタバレNGの方にはご配慮いただけるとうれしいです)

それでは、ぜひ、上演脚本『Leere』をお楽しみください!

※著作権は作者に帰属します。許可のない複製・上演等はご遠慮ください。また、上演希望の方は、mr000daydreamer@gmail.comまでご連絡ください。

(以下、脚本です)

上演脚本『Leere』

Written by: Ryuki Ueno

【登場人物】
・女1
・男1
・女2
・女3
・叙事詩

舞台上には、いくつかのイスが存在している。
また、舞台のセンター奥には世界地図がある。
世界地図は、全国家を示したものというより、登場人物たちの住む世界に根差したものであるらしい。
観客に提示されている空間は、稽古場であるらしい。
(舞台上であるかは分からないが)稽古場とは別次元の場所に、叙事詩が表示される。

薄暗い舞台上に女1と女3が眠っている。


叙事詩:
明滅

明けては消える

繰り返す

扉が開く

漏れてくる

現実


劇場の出入り口の扉が開かれ、外の光が漏れてくる。
男1と女2が入ってくる。
その手には脚本のような真白な紙の束。


男1:お久しぶりです。
女1:うん
男1:最後にお会いしたのは……
女3:さぁ。もう覚えていません。
男1:そうですよね。失礼しました。
女1:ねぇ。
女3:あぁ。
男1:そっか。そうでした。
女1:まあ、そういうことで。
女3:じゃあ。


互いの関係性を、一旦リセットする。
それぞれの関係性は、同じ劇団の人間である。


女3:おはよう
男1:おはよう
女1:おはよう
男1:何してるの。
女3:離脱

叙事詩:離脱と憑依

女1:離脱って何。
女3:さっき思い付いたやつ。
女1:へぇ。何の意味があるの。
女3:リラックス。解脱、的な。
女2:宗教的だね
男1:うん。まぁ、こういうのは宗教みたいなもんだから。
女2:そうかな。
男1:知らんけど。
女3:え、じゃあ宗派は。
男1:アリウス派キリスト教、かな。
女3:何それ。
男1:キリストは神じゃないって言ってた人達。
女1:異端じゃん。
男1:うん。けど、人間も無から創られたっていう考え方、良いよね。
女2:難しいこと分からないから。
男1:ごめん。
女3:難しいこと考えず、離脱でリラックス。


女3、男1、離脱と共に観念上で世界から離脱する。
分断された世界。


女1:リラックスって必要。
女3:リラックスの時間って大事だよ
女1:そうなんだ
女3:意味とか考え始めたら、芝居に意味なんて無いからさ
女2:この会話だって意味ないけど
女3:何それ
男1:こういう会話って無駄だよな。
女1:それを大事にしている人だっているんだよ
女3:日常だって無駄の連続画像だから
男1:連続画像。なるほど。
女2:どういうこと
女3:見えている世界は、全部平面だよ。この世界だって、平面の上。
女2:地球は、球体でしょ。
女3:ううん。平面の上。平面の上で、陣取り合戦しているだけ。
女1:たまに、変なこと言うよね。
男1:それが、俺らの共通認識っていうことで。
女2:そういう設定っていうことで。
女1:脚本。
女2:そう。今回の脚本。
女1:どんな脚本。
男1:配ろっか


女2は全員に脚本を配る
その脚本には、何も書かれていない。

全員それを黙々と読む。
暫く、沈黙の時間が流れる


叙事詩 :創りモノが嫌い

女1:これさ
女2:うん
女1:白紙じゃん
男1:言っちゃダメでしょ。
女1:え、なんで?
男1:だって、ダメでしょ。
女3:これが送られてきたの。
女2:うん。
女3:メール
女2:うん
女3:ファイル名は
女2:シェイクスピアって書いてあった
女3:シェイクスピアか
女1:シェイクスピアってこんな作品も書いてたんだ
女3:いや、無かったと思うけど

叙事詩:
創りモノは嫌い

だから手紙を書いた

女3:間違えた、とか
女2:白紙ですって送ったら、それが脚本ですって。
男1:これが脚本ですって言われてもね。
女1:演出の人は。今日来るの。
男1:分かんない
女1:分かんないって、今日顔合わせでしょ。来てもらわないと、何もできないよ。
女3:何かはできるでしょ。
男1:何も出来ないよ。創って貰わないと。


キリストの磔刑


女2:もう、稽古開始時間だけど
男1:ほんとだ
女2:え、どうするの。
女1:待つしかないじゃん


沈黙


叙事詩 :
待ち人来たらず
 
その一言だけの手紙

貴方のお返事は

白紙 
さよなら

女3:演劇は時代を映す鏡だ
男1:哲学的。
女3:そうじゃないけど
女1:シェイクスピアの言葉だっけ
女3:ハムレット
女2:それ読んだことあるかも

叙事詩:
貴方の姿は見えない

ファインダーは貴方を映さない

女1:一般教養でしょ
女2:そうなんだ
女3:そうでもないと思うけど
男1:そうだね
女3:うん
女1:で、それがなんなの
女3:私達をありのままに映す劇を創る、的な
男1:現代演劇みたい
女2:現代演劇って何。
男1:いや、知らないけど。
女3:何それ
男1:雰囲気、だけ、的な。
女3:シェイクスピアで現代演劇って
女1:ナンセンス
男1:まあ。
女3:白紙の脚本で、何を映そうとしているのかな
女1:鏡に映った、真っ白な空白。虚像。


一瞬で世界が止まる
女1のみが動いている


女1:(客席を凝視して)時代を映す鏡に私は映らない

叙事詩:
鏡が映すのは実像であって

存在しないモノは映されない

女1:私は今、舞台に立っている

叙事詩:
虚像の世界

錯覚

目の前にあるからと言って

実像とは限らない


世界の時間が動き出す
音楽が聞こえ始める


女1:私は今、舞台に立っている
男1:どうした、急に。
女1:これは演劇なんだ。
女3:稽古場だし、此処。私たちだけ。

叙事詩:
疑ってはならない

君は君を疑ってはならない

同じように

君は僕を疑ってはならない

見てはならない

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8,851字

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