「悩みがないのは、仕事をしていない証拠だ」

アサヒビール元社長 樋口廣太郎

シェアひとケタ台時代のアサヒビールにやってきた樋口廣太郎は、「スーパードライ」の開発でアサヒビールを業界トップに導きました。「ライバルメーカーに自社の欠点を聞きに行く」「製造から3ヵ月たった商品は残らず処分する」「最高の原料を手に入れるためなら経費は惜しまない」など、一見、奇行(?)と思われるような行動でビール業界のタブーに次々と体当たりで挑んだ経営者でもありました。
 では、このような強い個性を持った経営者を従業員たちはどう見ていたのでしょうか。我が国の場合は、定期異動という人事管理が定着していて、上司が度々替わることによりこれと同じような状況がよく起こります。初めのうちは、部下たちは半信半疑で静観を囲っています。しかし、一方で上司の意向に従わなければならず、戸惑いを感じるようになります。この際にリーダーがとるべきことは、従業員に対して的確な言葉で情報を発信し続けることではないでしょうか。問題は情報の中身なのです。
 単に「環境が悪い」「状況が厳しい」といっているだけでは、昨今の従業員はついて来ません。むしろ、激しい環境変化、長引く景気低迷などを経営の所与の条件と捉え、それに挑戦し「どうしていくのか」を従業員に具体的な行動で示すことが本当のリーダーではないかと私は考えます。つまり、逆境の時代は、過去にとらわれず、前例のないことに挑戦できる時代でもあるわけですから…。

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