キンモクセイが香る切ない失恋ソングはいかが? ~Mr.Children『ほころび』~

今回は、Mr.Children『ほころび』について書こうと思います。
『ほころび』は、2006年7月5日に発売された28thシングル『箒星』のカップリング曲で、2007年5月10日発売のあるばむ『B-SIDE』にも収録されています。

『ほころび』は、大切な恋人と離別した後の喪失感を謳っている曲ですね。
イメージは、秋の失恋ソング。

1番について考えてみたよ

ほころんだ場所がこの胸にある
悲しみを跨いだ時 出来たのかな?
ほつれた糸を無意識で引っ張る
するりするりとホドケテいった
ほころびはまた広がって
何かが顔を出した
そこにいたのは君だった
笑ってる君

作詞 :Kazutoshi Sakurai / Mr.Children『ほころび』

主人公は最初、「君」との別れで出来た心の傷を小さな引っ掻き傷、ちょっとしたほころびにしか思っていなかったように感じます。
でも、心の奥に閉じ込めていた幸せだったトキを何気なく思い起こしていくにつれ、隠しきれない、抑えきれない悲しみや虚しさがどんどん膨らんでいってしまったのではないかと思います。
悲痛な喪失感を「心に穴が空く」と言いますね。
大切な人を失って、いきなり心に大きな穴が空くのではなくて、最初の内は小さなほころびにすぎず、一緒に過ごした風景や匂いなどに大切な人の面影を感じることによって、その穴は広がっていくものなのかなと思ったりもします。


2番について考えてみたよ

2番は、主人公が「君」と一緒に訪れたことがある公園へ独りで行って、彼女のことを思い出しているというストーリーなのかなと思っています。個人の感想です。
ap bank fesをイメージして書かれた楽曲なので、その公園のモデルはつま恋なのでしょうかね。

水玉模様のスカートが揺れる
晴れた日の公園 よく覚えてる
キンモクセイが植わった木陰を見つけて
ビールなんか飲んで
手だけつないで

作詞 :Kazutoshi Sakurai / Mr.Children『ほころび』

ここは「君」との思い出パートですね。
視覚だけではなく、キンモクセイは嗅覚、ビールは味覚、手をつなぐは触覚など色々な感覚の記憶とともに、「君」のことを思い出していますね。

何気ない情景に思えますが、こう言う思い出の方がとても尊く愛おしく思います。
もしかすると、喧嘩をして別れたかもしれないのに、思い出すのはほっこりした記憶だったりするのですね。
スカートのくだりのバックに流れるチェンバロ?ハープシコード?は確かスカートがヒラヒラしているようすを表現しているんですよね。
水玉模様のイメージは、「可愛い」「優しい」「温和」「爽やか」だそうです。「君の人柄が少し想像できます。

広い芝生に横になって
青い空を見ていた
気持ちがよくて うとうとして
まぶた閉じた

作詞 :Kazutoshi Sakurai / Mr.Children『ほころび』

この部分は二通りの意味があると感じます。
一つは過去・思い出の中のことで、“水玉模様のスカート~手だけつないで”の後に、主人公は「君」と2人で横になって青い空を見ている。
二つ目は、現在・現実のことで、“水玉模様のスカート~手だけつないで”を思い出しながら、主人公は独り横になって青い空を見ている。
おそらく、以前「君」と公園に訪れた時、広い芝生に2人で横になったのでしょう。
そして、別れた後、同じ公園へ訪れ、同じ芝生に独りで寝転がって思い出に浸っているのではないかと思います。
思い出と現実がクロスする歌詞なのかと思いました。

君の匂いが好きだった
甘い匂いがした
夢から覚めると独りぼっち
君はもういない
寝転がってるきみはいない

作詞 :Kazutoshi Sakurai / Mr.Children『ほころび』

“水玉模様のスカート~手だけつないで”は「君」と一緒にいた思い出が描かれていました。
“広い芝生に横になって~まぶた閉じた”は「君」と一緒にいた思い出と独りぼっちの現実のダブルミーニングになっていました。
そして、この“君の匂いが好きだった~”からは独りぼっちの現実が描かれていると思います。
2番は、思い出と現実がグラデーションになっていると思うんですよね。
ウトウトしていると、夢なのか現実なのかわからなくなることありますよね。
「君」を思い出しながらウトウトしていたら、彼女の夢も見たことでしょう。
浸りで横になったことがある芝生に、独り寝転がっていると、微睡の中で「君が」横にいるかのような感覚に陥ってしまったのかもしれません。
しかし、覚醒して「君」がいない現実を突きつけられてしまいます。
この最後の部分は本当に切ない気持ちになります。

「キンモクセイ」について考えてみたよ

私にとって、『ほころび』はキンモクセイの曲という印象が強いんですよね。
キンモクセイがメインテーマになっている訳ではなく、情景を表すアイテムとして、さらっと登場するだけなのですが、私はこの曲のキンモクセイに強い存在感を感じてしまいます。
だから、キンモクセイが登場する意味を考えてしまうのです。
作詞の桜井和寿さんが何か意味を持たせているかは分かりません。


まず、季節が秋であることを表現していますね。キンモクセイと言えば、秋の風物詩ですから。

次に、主人公にとってキンモクセイはどんな意味があるだろう…。
あるにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こすということありますよね。
それをプルースト効果というようです。
先にも書いたように、『ほころび』は、過去に「君」と訪れた公園に主人公が独りで訪れ、「君」のことを思い出している物語だと考えています。
「君」といた時と同じように咲いているキンモクセイが、プルースト効果により、過去の風景や感情を主人公により鮮明に強く思い起こさせてしまっているように思います。
あと、独り打とうとしている時に香ってくるキンモクセイの香りが、彼女の甘い匂いとりんくして、横にイルカのような感覚にさせていたようにも思います。

さらに、花言葉からもキンモクセイの意味を考えてみたいと思います。
キンモクセイには、「謙虚」「謙遜」「気高い人」という花言葉があります。
これは、「君」の人柄を暗示しているかもしれません。
また、「陶酔」や「初恋」という花言葉もあり、「君」との思い出に陶酔しているということを表現しているのかなとか、主人公にとっては初恋だったのかなと想像を膨らませています。
さらに、閲覧注意かもしれませんが、「隠世」という花言葉もあるそうです。
「隠世」とは、あの世や死後の世界を意味する言葉のようです。
キンモクセイの強い香りは、この世からあの世まで届き、この世とあの世をつなぐ力もあると考えられたことから付けられた花言葉なのだとか。
このことを踏まえると、『ほころび』の中に登場するキンモクセイは、「君」が亡くなっていることを暗示しているという解釈もできてしまいますね。
悲しみを跨いだときとは、失恋ではなく、「君」との永遠の別れだったのかもしれません。
キンモクセイの香りの力によって、「君」との思い出と交信することができた…なんて深読みしすぎですかね。

最後に一言

とても切ない楽曲だと思いますが、メロディには力強さのようなものも感じるのですよね。
だから、主人公はこの別れをきっと乗り越えていけると思います。
以上、ミスチルの『ほころび』から感じたことでした。別に解釈というほどのものでもありません!

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