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新潟県中部7・13水害~MCA無線を活用した情報共有が水防を成功に導く

新潟県中部7・13水害 2004(平成16)年7月13日
日本海から東北南部に伸びる梅雨前線の活発化が、新潟県中越地方や福島県会津地方に大雨をもたらし、起きた水害。新潟県の長岡地域と三条地域では400㎜を超える記録的な累計雨量を観測。道路の不通は120カ所、河川の氾濫は69カ所に及び、2万棟以上の家屋が被害を受けた。

「状況が手に取るようにわかった」
素早い情報交換を実現した白根市(現・新潟市)


「信濃川の水かさが急に増している」
「中ノ口川もどんどん水位が上がっています」
「了解。溢水の可能性が高い。土嚢を積もう」

新潟県白根市(現・新潟市)は、職員総動員態勢をとって危険箇所の巡回を行っていました。刻々と変わる状況が緊急対策本部に伝わってきます。7月13日午後4時前、同市は決壊の恐れがある河川の堤防に土嚢を積むことを決定。作業は地元消防団を中心に行われ、最終的に1万8900袋を超える土嚢と、さらに大型の1t土嚢60袋が積み上げられました。

12日夜から降り出した激しい雨は、翌13日になってより勢いを増しました。新潟県下・中越地方の河川は、みるみる水位を増し、堤防の決壊も相次ぎました。同市は、日本で最も長い河川として知られる信濃川と、その支流である中ノ口川に挟まれた、およそ東西6㎞、南北20㎞の細長い街です。記録的な大雨によって、もし両河川が氾濫すれば、壊滅的な被害が想定されました。

豪雨から一夜明けた被災地(新潟県三条市新潟日報提供)

13日17時30分には、住民に避難勧告が発令。
同市が接する中ノ口川の水位が、警戒ラインを超えたのです。午後10時過ぎには最高水位を記録します。一部の堤防で漏水が確認されると、信濃川河畔の田畑や果樹園などが水に浸かり始め、その後も冠水範囲は拡大していきます。

名産品として知られる桃やブドウ、梨などの果物にも被害は及び、市の試算によると、被害額は平成に入ってから最悪の約5憶2700万円に達しました。
しかし、そうした被害が出る一方で、住宅地では大きな被害が見られませんでした。同市の迅速な水防活動が功を奏し、被害を最小限にとどめることができたからです。この活動において、情報のやり取りなどに活躍したのがMCA無線(mcAccess)です。

「mcAccessは、どんな状況でも本部と現場のスムーズな交信が確保される、頼りになる無線機でした」同市のある職員はこう語ります。1998(平成10)年4月よりmcAccessを導入していた同市では、通常は共通の通信、水道、建設、イベントの4つのユーザコードを使い分けて利用。職員がmcAccessの利用に慣れていたのも、スムーズな通信を可能にした大きな理由です。

また、7・13水害でメリットを発揮したのが、一斉同報通信です。「皆がリアルタイムで情報を共有できたことが大きかったです。携帯電話では1対1の通話が基本で一斉同報通信はできませんが、mcAccessだと全員に各班の活動状況が手に取るようにわかるので、次に自分たちがすべき行動を予測して事前に準備できたんです」と、前出の職員は振り返ります。

記録的な集中豪雨でも
住宅地の被害を未然に防いだ

梅雨前線の活発化によって起きた記録的な集中豪雨は、新潟県の下・中越地方と福島県会津地方に大きな水害をもたらしました。新潟県の水害といえば、被害額1000億円以上、死者行方不明者130人という甚大な被害を記録
した1967(昭和42)年の8・28水害が知られますが、この水害はそれに次ぐ規模の大災害と言われます。
三条市や見附市、栃尾市、中之島町など信濃川の本支流に接する市町村では、堤防の決壊が相次ぎ、市街地は一瞬で濁流に呑み込まれました。なかには、人の胸ほどの高さまで水かさが増し、家屋の2階に住民が取り残される地域もあったほどです。

そのような大災害にもかかわらず、農作物などに被害が出たものの、旧白根市が住宅地での大きな被害を免れたのは、関係者らの迅速な対応の結果です。mcAccessによる確かでクリア、かつ一斉同報機能を用いた交信が、それを支えたことは間違いありません。


この記事は『防災・危機管理読本 2008』 に掲載されたものです
初版 平成19年11月1日
発行 全国移動無線センター協議会
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