見出し画像

「認知の歪み」についての思考ログ

はじめに

認知の歪み、というワードがあります。起源を辿れば心理学の研究の中で生まれたワードなのだと思いますが、だいぶ世間に浸透してきたようで、すこし前に自分のTwitterのタイムラインでこのワードを見かけたときにはなんだかふしぎな気持ちになりました。

今回は、認知の歪みに関する思考実験のログを取ることを目的として、徒然と文章を書いてみようと思います。心理学を研究していた人間にあるまじき参照・引用文献などない思考実験の散文ではありますが、お付き合いいただけると嬉しいです。

認知の歪みに対するスタンス

まず明らかにしておきたいのが、僕の「認知の歪み」という概念に対する立場です。歪みというワードが持つパワーに引きずられて強烈なネガティブイメージを持つ概念として受け入れられているような肌感覚があるのですが、僕個人は認知の歪みが悪いことではないと思っています。

というのも、そもそも認知は歪むもの、偏るものだと思っているからです。認知の歪みという概念を考えるにあたって、本来はそもそも「認知」とは、という話から考えるのが筋なのだとは思うのですが、それだけで紙面を大幅に割いてしまうので今回は手抜きをして、誤解を恐れずに認知というワードのポイントを自分流にまとめてみます。

認知、そして認知の歪みとは

認知というのは、知覚された情報(五感の感覚器に入力された情報)を思考・解釈をはじめとした統合的処理にかけるプロセスだと、大まかに認識しています。例えば、ただの視覚的にはただの線分の集合であるものを立方体という図形だと考えるようなイメージです。で、認知の偏りや歪みというのは、立方体じゃなくて三角形が見えやすい、といったような個人差のある傾向性の問題であると僕は考えます。

つまり、認知の歪みというのは歪んでいること、偏っていること自体が悪いのではなく、歪みや偏りの程度が強すぎるときに日常生活や心身の健康に支障を来す場面があることが困るのであって、治療する=歪みをなくすのではなく、自信の歪み方・偏り方の傾向を理解してうまく乗りこなす性質のものだと考えています。

思考実験:レンズとしての認知

別の例を挙げて認知の歪みについて考えてみましょう。すでに述べたように、認知というのは外から入ってきた情報をまとめたりフィルタリングしたり、ある意味で曲げるための機能であると言えそうです。そこで、この認知を目やカメラにおけるレンズだと考えてみます。

小学校の理科で虫眼鏡とろうそくを使った光の屈折の実験したことがある方は多いと思います。焦点や実像、虚像など、なんだか懐かしいですよね。

知覚することで得られた情報が光だとして、仮に「歪みのない認知」という概念を考えたとき、前述した認知はあえて曲げるための機能という立場を採用すると、レンズにあたっても光は屈折しないことになります。虫眼鏡とろうそくの実験で光が屈折しなかったらどうなるかというと、ずっと平行線のまま焦点は生まれず、結像することもありません。そんなの、レンズがないのと同じです。

こうした思考実験の中で、認知は情報を歪めることで知覚された膨大な情報群の中から何か特定の事象に焦点を当てる機能があるのでは、というの仮説を得ました。とするならば、認知が歪む・偏ることは必然で誰もがもつ機能であり、認知の歪みというのは「意識のピント調節機能のクセ」と呼ぶことができるかもしれません。

認知の歪み 再考

このようなアナロジーで考えてみると、認知の歪みが存在して問題になるケースは、実像ではなく虚像を結んでしまうことだったり、像を結べない屈折の仕方をしていることだったりするわけで、認知の歪みの強さや歪み方に一部、日常生活を送る上で不適応的な場合があるという冒頭に述べた立場に至ることになります。

もともと認知の歪みって本当に悪者なんだっけ?なんか違う気がするんだけどな……という直感のようなものがあって、冒頭の立場をある時期から取るようになっていたのですが、その立場を取るに至った背景をあれこれ探検しているうちに、今回のような一時的な宿場を得ることができました、という記事でした。

もちろん出発点が「認知の歪みって悪者なんだっけ?」なので”今回の思考過程自体が認知の歪みによる産物だ!”という反論もありうるとは思うのですが、「歪みのない認知」が存在することを現時点では僕には証明できないので、ひとつご愛嬌ということでお許しいただけると嬉しいです……。

終わりに

ふと、小さいとき、プールの中に潜って外を眺めたときゆらゆら揺れている世界が好きだったこと思い出しました。創作をしたり他の方の創作物に触れたりすると、人それぞれ異なるかたちでちょっとずつ歪んでいるかもしれないけれど、そんな状態でもがんばって生きているからこそ綺麗なんじゃないかなーとも思います。

いい感じに(?)締まったところで、本日はこの辺りで。またお会いしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?