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【僕が思い描いていた未来はこんな筈じゃなかった】

最後にワクワクしたのはいつだか覚えていない。恐らくかなり長い年月の間、もうそういった感覚を味わっていないと思う。ワクワクする感情とは、これから先に起こるであろう事への期待と興奮だが、近年その未来へ期待するという事が極端に減ったか、もしくはまったく無くなってしまった。今期待している事と言えば、もういい加減に新型コロナウイルスが終息する事だが、残念ながらそれにはまだもう少し時間がかかりそうな気がする。

TVゲームは僕が小さい時からの心の拠り所であり、明日への糧になっていた。そもそもTVゲームという言い方がもうとっくに古い。テクノロジーが凄まじいスピードで進化を続け、媒体が増え、TVに繋がなくても、"いつでも、どこでも、誰とでも" 遊べる様になった。ゲーミングPCがあればすべて事足りるし、勿論スマホでも出来る様になった。グラフィックスや解像度が昔と比べて格段に良くなり、今では信じられない程リアルになった。

とは言ったものの、はっきり言って最近のゲームはつまらなくなってしまった。これにはいくつもの要因が噛み合ってそうなってしまったと思うが、一番の要因は経済の停滞と落ち込みが背景にあると思う。



ここからは僕の仮説に過ぎないが、経済の停滞と国の衰退により、ゲームメーカーはリスクを取りにくくなった。新しい物を作って世に出すのは一種の賭けだ。現代の様に先の見通しが暗い時代だとそう言った賭けには中々踏み切れず、失敗したくないものなのでどうしても守りに入ってしまう。ゲームメーカーは失敗を嫌がり、利益を確実に出せる物に頼る方向へシフトして行った結果として、以前既に発売した物の中でもヒットした人気作品のリメイクばかりを作る様になってしまった。

今や新しく発売されるゲームの90%以上は過去のリメイクだ。グラフィックスを上げてまた再販した物に過ぎないので、もちろん内容は以前と同じ物だ。つまりは、新しい物が今ほとんど出てこない。そもそも新しく発売されるゲーム本数の絶対数が激減してる。たまにお店のゲームコーナーを見に行くのだが、いつもリメイクばかりが店頭に並んでいるのを見ると何故かイラッとする。僕の新しい物への期待をことごとく裏切っているからだろう。リメイクにはもう本当にうんざりさせられているが、最近ではリメイクのまたリメイクまでが当たり前になり、もう見る目も当てられない。



僕が大人になったせいで、ゲーム自体が子供の遊びの様に感じ、つまらなくなってしまったのか、とも最初は考えたが、それは違った。

僕は時々秋葉原に宝探しに行くのだが、過去にやった事がないレトロゲームを見つけては買って帰り家でやってみるのだ。すると、「こんなにワクワクさせてくれるゲームが過去にはあったのか!」っと驚かされる事が沢山ある。グラフィックスの良し悪し関係なく、昔の物でも新しい物でも、面白い物は面白い。やはり時代が進むに連れてゲームがつまらなくなっている。変わったのは僕自身ではなく、間違いなくゲームの方だ。

大人になるに連れ、他にも楽しい事や興味のある対象をたくさん見つけたので、別にそれほど困っているわけではないのだが、やはりあの何とも言えないワクワクを味わいたい。子供の頃、発売日が待ち遠しくて楽しみのあまり、夜も目が冴えて眠れなかった日々を今でも良く覚えている。

ファンタジーの世界は、リアルであればあるほど良いという訳ではない。最近のゲームはリアル過ぎて逆に現実的に見える。僕は現実が見たいわけではない。むしろ現実を一時忘れて、ファンタジーの世界の夢物語を擬似体験するのが目的だ。あまりにもリアル過ぎて現実との区別がつかないゲームなら、わざわざゲームという形をとらず、映画にした方が絶対いい。

皮肉な物である。グラフィックスや性能は格段に上がっているのに、それと引き換えに内容がつまらなくなってしまった。ネットやスマホの普及で色々便利になった代わりに、現代人の想像力が退化してしまった事も要因の1つなのか。



エンターテインメント全般に言えることかもしれないが、エンターテインメントで一番大事なのは内容だ。それ以外の一切は内容を際立たせるための補助に過ぎない。内容を疎かにしては、後は何をやってもダメに終わる。面白くなければ意味がない。

YouTubeをやる人が昨今非常に増えているが、編集にやたら時間と労力をかけ、ビデオ自体の出来は素晴らしいのだが、肝心な内容があまりにもつまらないし、学べる事もないので視聴者やチャンネル登録者数は一向に増えない人が大半だ。

人を楽しませるためのエンターテインメントの世界で、目先の結果や利益にばかり囚われていると、きっと魂のこもっていないつまらない物が出来上がるのだろう。経済的に余裕が無く、すぐに結果を求める現代では、長い目で物事を捉え、未来に期待を寄せてワクワクさせてくれる面白い物を作るのはとんでもなく困難な事になってしまったのかも知れない。

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