M.R.LABO業務紹介:イベントの企画・制作・運営 [1]展示会編-1
イベントとひと口に言っても実に様々な形態のものがあり、私もこれまでに色々なイベントに携わってきましたが、数量的にもっとも多かった(そして今も多い)ものは展示会系のイベントになります。展示会とまたこれをひと口に言っても、企業が独自に行うプライベート展から、自治体などが行うソーシャルなフェス・イベント等への小規模ブース出展まで様々なものがありますが、以下に規模の大きいものから、順に紹介していきたいと思います。
プライベート展でのミステリー(?)
まずは、企業が独自に行うプライベート展ですが、得意先企業を招待するために生じたミステリーについてご紹介します。私が関わってきたのは、いずれも技術力を売りにするメーカーや研究施設ですが、どのプライベート展でも、事前のミーティングで一番時間を割かれるのは「誰を、どのランクにして、どのように招待するか」ということです。部品メーカーの場合は、提供先企業同士が競合社になっているというケースもあり、来場タイミングがバッティングしないようにするなど、色々気を使わなければならないことがあるわけです。が、我々のような外部スタッフの側からすると、何時間もそのためのミーティングに拘束されたあげく、「?」と思うような運営方法が打ち出されて、複雑な対応を迫られるということも少なくないのです。
その一例をお教えしますと、来場者をまず一般とVIPという2種類に区別して受付を分けるのはよいのですが、VIPを一元化することは難しいという意見が出て、特A・A・Bという3段階に分けましょうということになりました。ただ、来場者にはその人のランクを知られたくないため、受付段階でチェックしてエスコート役にサインを出すことで対応するということになったのです。要は、エスコート役もランク分けされていて、各来場者にふさわしい対応をしましょうというわけですが、受付が混雑し始めるとこれがなかなか上手くいきません。挙句の果てに、国内でも有数の大企業の副社長(特Aランク)が来場された時のこと、同じタイミングで主催者側施設の元TOPが来場されたため、エスコート役も皆その元TOPのところに集まってしまい、副社長の方は受付後、しばらく放っておかれるという事態に。作り話のように思われるかもしれませんが…実際に起こった話です。
全国キャラバンでのミステリー(?)
もうひとつ。これは運営する側が感じたミステリーですが、それは新商品発表会を全国キャラバンでやるような場合に起こります。主要都市のホテル等を会場として実施することが多い新商品イベントは通常、商品特徴や販売方針を説明するカンファレンスと、商品の展示コーナーという2本立てで行われます。ということは、司会や進行ディレクターなどカンファレンスの運営部隊と、展示コーナーのナレーター・コンパニオンやディレクターなどの部隊が一緒になって、今日は札幌、明日は広島、その後名古屋で、その次福岡などというスケジュールで一緒になって動くことになります。移動日が取れればまだ良いのですが、札幌から夜遅く羽田のホテルに入り、次の日朝一番のフライトで広島入りなどということが普通にあり、そのうちに自分たちが今どこにいるのかわからなくなる、という症状(!)が全員に出てくるのです。(その分、結束力は高まるのですが…)
もちろん、こういったスタッフたちの移動スケジュールを組み立て、交通やホテルの手配をするのもけっこう大変ですが、展示コーナーに大型の什器などを設置する場合は、その”動かし”(保管と運搬)と現地での設営部隊(人工)確保などの事務的な業務も加わってきます。
イベント会社にとってみれば、こういった新製品キャラバンはそれなりの金額が動くため”美味しい”のでしょうが、現場で運営にあたる部隊はなかなかに厳しいところもあるのです。
大型イベントはチーム・パワーで
プライベート展にしろ全国キャラバンにしろ、(それにコンサートやフェス、スポーツイベントも含めて)こういったある程度規模の大きいイベントには、やはりチームの”力”が必要になります。そしてチーム・パワーを最大限に発揮するためには、①個々人が自分の役割をきっちりと理解すること ②メンバー同士が思いやりを持って助け合うこと ③そしてお互いのコミュニケーションをしっかり取ること の3っつがポイントになってきます。
以前に携わった設備系の企業のプライベート展でのことですが、イベント会社のプロデューサー氏(以下、P氏と略)が、制作現場の細かな部分にいちいち突っ込んできては「ああでもない、こうでもない」と言ってかき回されるということがありました。
造作には造作・設営のディレクター、映像コンテンツには映像制作のディレクター、運営にはコーナー毎の運営ディレクターがいて、それぞれが演出意図を理解して動かしているわけですが、そこに頭ごなしに指示が飛んでくると現場は混乱するものです。私はコーナー・ステージの商品説明用コンテンツの制作を任されていたためか、直接そういった指示は来なかったのですが、メインステージ用の映像制作現場では、編集ディレクターがかなり”ガンガン”やられていました。私がもしその立場だったら、おそらくキレていたと思いますが(笑)、いったん現場に預けたのならまずは現場に任せ、その上で出来たものに修正が必要な部分は直してもらうというプロセスが必要なのですが、そのP氏はあきらかに自身の役割を踏み外していました。
私がイベントに関わりだしたころ、よく現場で言われたのは「筋を通せ」ということでした。どういうことかと言いますと、プロデューサーなど立場が上の人が直接スタッフに声をかけるな、指示をするなということです。現場は、チーフディレクターをTOPとして、その下に各部門のディレクター→アシスタントディレクター→スタッフというヒエラルキーが出来ています。ですので、これを飛び越えて、例えばクライアントがスタッフなどに直接指示を出すと、スタッフは「それまでディレクターから指示されていたことと違うけど、どっちに従えばいいんだ?」と混乱することになります。場合によってはそれが大きなミスを引き起こす原因になることもあるからです。
笑い話のような話ですが、私はよく「クライアント担当」という役割でイベントに一スタッフとして呼ばれることがあります。何をするかというと、クライアントの担当者と常に一緒にいて、クライアントの意見を聞いたり、制作側の意図を伝えたり、協議した結果の修正指示を現場ディレクターに伝えたりといったことをします。つまりはコミュニケーションを円滑にする係というわけですが、大きなイベントでチームが一丸となって動かなければならない時などには重要なポジションとなります。クライアントの思いつきで現場が振り回されるのを防ぎ、クライアントに現場の事情を理解してもらうことが必要になるからです。
少し長くなってしまいましたが、チーム・パワーを発揮するための3っつのポイント、その重要性をご理解いただけましたでしょうか?