初めて自転車を買ってもらった日

 ２歳になる娘が祖父母に自転車を買ってもらった。黄色、赤、緑に塗装され、後輪には補助輪もついた立派な自転車である。16インチで２歳の子供がまたがるにはまだ少し大き目かもしれない。ハンドルの左側にはチリンチリンと鳴るベルがついている。

 暖かな陽気の日、娘は買ってもらったばっかりの自転車に喜々としてまたがって、祖父母と私と妻の５人で近くの公園に出かけた。

 人もいないのにチリンチリン、チリンチリンとベルを鳴らして楽しんでいる。ハンドルを右に切ってはこちらを向き、左に切ってはまたこちらを向いて笑っている。うれしくて仕方なさそうだ。

 そういえば、私も小学生の時に両親から自転車を買ってもらったっけ。ハンドルの握りの部分に７色のビニールのひもがついていて、自転車を走らせると風になびいてひらひらと舞った。

 頬を切る風がうれしくてうれしくて、毎日毎日学校が終わると自転車ばかり乗っていた。そのとき私の頬を切った風と同じ風が今、娘の頬をなでている。