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「衣服の選択」の授業
こんにちは。中学校家庭科の授業実践をあげています。今回は「衣服の選択」の授業です。
基本的には1時間の授業を、フラッシュカード→教科書の音読・問題→主活動の流れで行っています。ここでは主活動のみを記録します。
【着られていない衣服】
あなたは1年間に何着の服を購入しますか?
*テンポよく、列で指名していく。
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*数字を隠して、提示する。
日本人一人当たりの衣服消費・利用状況です。
1年間での購入枚数は何枚ですか?
→約18枚
*テンポよく、聞いていく。
*同じように「手放す服」「着用されていない服」の枚数も確認する。
1年間に1回も着用されない服が多いですね。この服もいずれは手放すことになるでしょう。
これは服を手放す手段の分布です。
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最も割合が大きい手段は何ですか?
→可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄
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1年間にごみとして出される衣服の総量はどのくらいですか?
→470000t
このうちの95%が焼却・埋め立て処分されます。この数値を換算すると毎日大型トラック120台分だそうです。
ここまでの感想をどうぞ。
→思っていたよりも多い、毎日大型トラック120台分はすごい、など
現状では、多くの服が捨てられてしまっているのですね。
衣服を無駄にしないために、私たちができることは何ですか?
→古着として売る、誰かに譲る、雑巾にする、海外に寄付する、など。
【衣服の墓場】
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ここは南米チリの北部の「アタカマ砂漠」という場所です。
世界各地で大量生産された末に、売れ残った商品や着られなくなった古着が山のようになっています。
日本では2015年に24万トンの古着が輸出されました。日本以外にもアメリカやドイツ、イギリスといった先進国などから輸出され、パキスタンやインド、マレーシアが多く輸入しています。
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そこで買い取り手がなかった場合、さらに別の国に輸出されることになり、最終的に誰にも買われなかった衣服がチリのような場所に集まるとみられています。
こうした“衣服の墓場”とも言えるような場所はチリだけでなく、西アフリカのガーナなど世界各地にあるということです。
大量の古着が流入することで、現地ではどんな問題が起こりますか?
→ゴミ山が増える、火事が起こる、現地の服が売れない、など。
捨てられた衣服には石油を原料とする化学繊維が使われています。このため、分解されずに砂に埋もれ、土壌汚染の原因となっています。
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火災によって大量の有毒ガスが発生する事態もたびたび起きています。この地域に暮らす人たちの健康被害も懸念されているそうです。
また、もともと先進国で捨てられた服ですから、途上国でも安価に手に入ります。そのため、地元の繊維産業が育ちにくくなります。
実際にガーナでは1975年から2000年にかけて繊維・衣料品関連の雇用が80%減少しており、ザンビアでは1980年代には2万5000人だった労働者が、2002年には1万人を下回っている、そんなデータもあるそうです。
海外への古着の輸出に賛成ですか?反対ですか?
*挙手で人数を確認する。
*「反対」が多いと予想する。
こうした中、古着を大量に受け入れている途上国からは反発の動きも出ています。タンザニアやウガンダなどで作る「東アフリカ共同体」は2016年、地域の産業を保護するため、外国からの古着の輸入を禁止することで合意しました。
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しかし、これに待ったをかけたのがアメリカでした。アメリカの古着の業界団体が「輸出できなくなれば経済的な損失が大きいほか、アメリカで廃棄されればアメリカ国内の環境が損なわれる」と猛反発したのです。
結局、超大国アメリカからの圧力を受けた東アフリカ共同体は輸入禁止を断念しました。衣服が先進国から途上国に流れ着く構図はいまも続いています。
私たちができることは何ですか?
→衣服の無駄な買い物をしない、捨てることまで考えて購入する、一着を大事に長く着る、など。
廃棄のことまで考えて、表示をもとに自分に合った衣服を購入し、手入れしながら長く大事に着る。そういった当たり前のことが大切なのかもしれませんね。
*今日の授業の感想を書いて終了する。