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【インドに初めていく人必見!!】一晩中、騙され続けて詐欺にあった話『#2トゥクトゥク逃走劇』

DTTDCから駅まで戻るトュクトュクの車内。時刻は0時になりかけていた。

「パスは取れたか?」
少し不思議そうな顔して、運転手は問いかけてくる。

「いや。取ってないよ。」

「どうしてだ?なぜパラサイト・パスを取ってない?」

「わからんわ。取り敢えず駅に向かってや。そんで、駅の近くのバーガーキングで降ろして。」彼に説明するのがめんどくさかった。

「どうしてだ?」

「wifiが欲しいけぇよ。」

「………わかった 」

自分たちが今どこにいるのかがわからなかった。今俺は、宿街が駅の向こう側にある、くらいの情報しか持っていない。どの宿に行くのか、どの道があるのか、を把握しなければならない。インド人に道を聞くことはリスクが高い。闇雲に駅周辺を歩いていたら、また同じ目に合わされかねない。

俺たちにはまずインターネットが必要だ。さっき駅に着いた時に少し遠くにバーガーキングが見えた。「そこならフリーwifiがあるかもしれない」そう思って運転手に行き先を変更させる。


運転中、運転手の携帯電話が鳴った。彼は1.2分ほど通話していた。ヒンディー語で話しているので、内容は理解できない。電話を切った後、無口だった彼は不自然なほど、よく話しかけてくるようになった。

赤信号で止まっている時。急に彼は「あそこに乗ってるのがマフィアだ」と言って前を指さした。俺が見ようととすると、「ノー!ダメだ!」と言ってシャッと素早くカーテンで遮った。「お前が見ろって言ったようなもんじゃん…」彼の行動が理解できなかった。

他にも、「インドは危ない」、「外国人は夜出歩かない」、「警察がたくさん見張っている」と少し一方的なトークをしてくる。

「へぇーまぁそうじゃろうね」俺は彼の話を適当に聞き流しながら聞く。

そして、いよいよニューデリー駅に近づいてきた。ロータリーに入ろうとした時に、運転手がボソっと呟く。

「ポリスがたくさんいる」

「そうか、警察がおるんか。だったらかえって安全じゃの。」警察がたくさんいるなら、安全に宿まで向かえるかもしれない。彼の発言で少し安堵した。

しかしそれも束の間。いきなり車の外から怒号が聞こえてきた。

「おい!!お前たちはここでなにしている!!外国人か!」

驚いた俺は少し体が硬った。だがすぐに冷静になる。俺たちは罰せられることは何もしていない。

「¥%°2¥###〒々」運転手の彼が状況を説明するようにヒンディー語で彼らに話す。

「私たちは警察だ!!なぜこんな夜中に出歩いている!!危ないだろ!」
警察手帳らしきものを見せつけながら、警官を名乗る人物が俺たちに怒鳴ってくる。言ってることは確かにもっともだ。だが、彼の怒る形相とは対照的に俺は内心少しだけほっとした。もしかしたら、この警察官が宿まで安全に案内してくれるのかもしれない。そんな一抹の希望を抱く。

だが、おかしな点が一つある。

私服だ。彼は制服を着ていない。40代ぐらいの禿げたおっさんは、ボーダーのポロシャツにジーパン姿で警察を名乗っている。

「危険すぎる!!違法だぞ!!」警官は、イリーガル、とこれまた大きく怒鳴った。

すると、今度はおっさん自称警官の周りに4人集まってきた。彼らも同じように警察手帳を、これでもかと俺たちに見せつけてくる。あっという間に俺たちが乗るトュクトュクの周りは警官たちに囲まれてしまた。この時点で、俺が数秒前に抱いた僅かな希望は打ち砕かれた。「彼らは偽物だ」そう確信する。

「違法だ!!罰金を払え!罰金だ!!!」

無理やり俺たちから金を巻き上げる気のようだ。意味がわからない。何が違法だ。彼らに説明を求めるも、らちがあかない。彼らはイリーガル、デンジャラス、と何度も怒鳴り続けるばかりだ。話し合いにすらならない。

彼らの声量と張り合うようにこっちも声を張り上げて言い返す。

「払わんわ!俺が払うのはこの運転手への運賃(20ルピー)だけじゃ!お前らの言いよること全く理解できんで!絶対払わん!」


俺の声に呼応するように相手も怒鳴り返してくる。似たようなやりとりを数ど繰り返したが、人数が多いこともあってこっちの声はもう通らなくなってしまった。

「2,000だ!!!!2,000ドル払え!!!」遂には、法外な額をふっかけてくる。もう意味がわからない。

「そんな金持ってねぇわ!!ふざけるなよ!!」

一方的に怒号の集中砲火を浴びる中、車内で友人と軽く話し合う。運転手に払う20ルピーだけ渡して、取り敢えずトュクトュクを降りることにした。

「おいポリス!!お前らには絶対に払わん!取り敢えず、運賃の20ルピーは運転手に払うけえ、ここからだしてくれや。」俺はそう言って財布から20ルピー札を取り出し、前に座る運転手の肩を叩く。




すると、思いもよらぬ人物が俺の主張を遮るように反論してきた。
「20ルピーじゃない、2,000ルピーだ。」

その声は運転席からだった。

…………


一瞬、思考停止してしまう。


「「はあああああああああ????!!!」」少し間を置き、友人と俺は一緒のタイミングで叫んでしまった。


運転手もグルだった。最初から全て繋がっていた。駅のニセ警備員、DTTDCの事務所、自称警官たち、そしてこの運転手。全員が束になって俺たちから金を巻き上げようとしている。

「おい!運転手。お前にも絶対払わんで!20じゃ!20しか払わん!これでここから出せ!」俺は20ルピー札を怒りに任せて運転席に投げつけて、トュクトュクを降りようとした。

しかしその瞬間、運転手が腕を伸ばして、俺が車外に出るのを遮った。

「おい!なんでや!出せや。」彼の強引な行動で俺のイライラはピークに達する。

「出せって言いよるだろ!」俺は運転席に向かって叫びながら、シートの後ろを蹴り続けた。あんな横暴をしてくるのならこっちも負けてられない。

一方、友人もかなりイラついているようだ。外の自称警官どもに日本語で怒鳴り続けている。

この状況はカオスだ。5人の自称警官は俺たちに金を払えと怒鳴る。友人も負けじと言い返す。運転手は俺を車外に出さまいと必死。俺は運転席を蹴り続ける。車内には英語、ヒンディー語、日本語が狂騒曲となって飛び交っている。

その状況に終止符を打ったのは友人だった。

突然、馴染みのある声音が、俺の耳に直線的に反響した。

「逃げろおおお!!!!!!!!!!!!!!」

友人の声だった。声の反響の仕方がさっきまでとは違う。外に向けて叫んだんじゃない。車の内側に向けて、隣の俺に向けて、友人は叫んだ。それからは、数秒の間の出来事だった。

俺は反射的に横を見る。友人は荷物を抱えて、体当たりするように体を少し丸める。そして、自称警官たちの壁を突っ切るように、勢いよくトュクトュクを飛び出た。

友人が身を挺してつくった一瞬の隙に乗じて、俺も正面に抱えたバックパックを盾に、即座にトゥクトゥクから飛び出る。

連中たちは驚いて怯んでいたのか、後ろを掴まれることなく突破できた。

そして、走った。

とにかく走った。

息を切らして走った。

どこに向かっているのかわからない。だが、死に物狂いで走りまくった。


そして、さっきまでいたロータリーが見えなくなった頃。俺たちは追っ手が来ていないかを確認して、足を止めた。来ていない。どうにかまけたようだ…。それから小走りで、最初に降りた地下鉄の駅に向かう。

地下鉄の駅のゲートには正規の軍人がセキュリティを担っている。軽いセキュリティチェックを終え、駅の中に入った瞬間、ずいぶんホッとした…。ここでやっと緊張の糸が解けた。

「はぁぁぁぁぁ疲れたあああああああ……」俺と友人は心の底から安堵のため息をつく。

生まれてこの方、あそこまで必死に人から逃げたことはない。アドレナリン全開で、無我夢中で走った。本音を言うと、その状況を少し楽しんでいた自分が10%くらいいた。俺の中の一割が、「なんじゃこの状況おもろすぎるじゃろ!」と俯瞰していた。しかしこんなこと言えるのも、逃げ切ることができたからに過ぎないが。

まじ友達グッジョブ。

宿に泊まることは諦めたのは言うまでもない。時間が時間だ。これ以上ニューデリー駅周辺をうろつくべきではない。そう判断した俺たちは、取り敢えず一番安全な空港に向かうことにした…。

まだ夜は終わらない。この日、俺たちはまだまだ騙せれ続ける……


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▽次の話▽

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