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世界は誰かの仕事でできている

よく初めましての人や友人に「お仕事何してますか?」と聞かれる。
社会人になったら誰もが一度は聞かれる質問だと思う。

私はこの質問に苦手意識がある。
なんと答えたらいいのかわからないからだ。
私の仕事は、とても説明が難しい。


私の会社での職種は「電子カルテインストラクター」だ。
電子カルテ?
インストラクター?
質問した人には疑問符がついているのがわかる。
ああ、説明するのめんどくさいから言わなきゃよかった、と何度も思った。
だから私は「会社員」ということ以外伝えるのに躊躇する。

「お仕事何してますか?」という質問に、単語で答えることができる人を羨ましいと思うこともある。
子供の頃七夕の短冊に書いた「大きくなったらなりたいもの」に私の仕事が書かれることはまずないだろう。(身近な人が働いていたら別かもしれないけれど。)

私が普段していることは、医療機関、薬局の業務に深く関わる医療機器である「電子カルテ」「電子薬歴」「レセプトコンピューター」と呼ばれるPCの導入支援やサポートを行なっている。

普段仕事や学業で使っているPCが、医療スタッフにとっての電子カルテや電子薬歴、レセプトコンピューターである、と言うととても大事なものであり、なくてはならないものということはわかりやすいかもしれない。
私が扱うものは、医療機関、薬局の業務効率化を担っている。医療行為を行う上でハブになることだってある重要な仕事だ。


私のように、人に説明はしづらいけどこんな仕事をしている、という人はいるのではないだろうか?
世の中に知られている名前はないけど、誰かのためになっている仕事はきっとたくさんあるはずである。


皆さんは、13歳のハローワークという本を知っているだろうか?
2003年に刊行された本書には514の職業が掲載されている。また、2010年には改訂版が発売され、89の職業が追加された。

反対に、世の中では「10年後になくなる職業」という大学の調査結果も出ており、世の中の職業は目まぐるしく変化していることがわかる。
「AIに仕事を奪われるかもしれない」なんて怯えている人たちもいるのではないだろうか?

実際、自動改札機ができて切符を切る駅員さんはいなくなった。
百貨店にきらびやかにいたエレベーターガールもいつの間にかいない。

反対に、IT化が急加速してそれに関わる人たちは新しく仕事ができたし、
超高齢化社会によって介護をする人が増えたためできたケアマネージャーも、実は新しい職業だったりする。


仕事というのは需要と供給でできている。求めている人がいて、提供する人がいることで初めて成立する。仕事をしている人がいるから、私たちは「当たり前」の生活ができていることを改めて認識しなければいけない。

あなたも立派な仕事をしているし、あなたの大切な人も仕事で社会に貢献している。生活に必要なライフラインを提供してくれる人がいて、何不自由なく使えるように整備してくれる人がいる。
普段食べているものを作っている人がいて、運んでくれている人がいて、販売してくれる人がいる。
実はその裏で、当たり前に提供するためのシステム構築、当たり前に動くように保守している人もいる。

この世界には、見えないところで働いている人がたくさんいるのだ。
何気なく進化している毎日には、誰かの計り知れない努力でできている。

1年前の今日にはなかったものが今日たくさん増えているし、反対になくなってしまったものもある。
なくなってしまったものだって、誰かの仕事でできたものだ。全てに命があるし、努力した人がいるから新しいものが生まれてくることに変わりはない。


こんな尊い事実があるにもかかわらず、私は私の仕事の説明が難しいと思う。誰かのためになっている仕事のはずなのに、説明するのが難しい。
私の仕事は、世の中の一部の人にしか見えない。でも私の仕事は、目の前にいる医療に関わる人だけでなく、そこに訪れる人たちのためにもなっている。業務を効率化できれば、たくさんの人に医療が提供できる。薬や医療機器みたいに直接触れることはないけれど、世の中の人を支えている。


うまく説明できない仕事だけど、誇りに思っている。
きっと、同じような思いの人はそれなりにいると思っている。


あなたが行なっている仕事は、誰かのためになっている。
どうかあなた自身毎日誇りに思ってほしい。
だからこそ、自分自身をご自愛してほしい。無理は禁物だ。
あなたが休んでも、ちゃんと世界は回っている。
世の中の役に立つ仕事はごまんとあるから、自分の赴くままに仕事をして、あなたも、あなたの仕事で支えられている人も幸せであってほしい。


私は転職を考えている。
誇れる今の仕事から、新しく自分で心の底から「やりたい」と思った職業にチャレンジしたいと思った。
大人になると、知見も広がり新しい仕事をしたいと思うようになるのは自然なことだと思っている。
世界には知らない仕事がたくさんあると思うとなんだかワクワクする。
そのために勉強することも、尊いことだと思っている。
「やりたい」仕事に出会えたことさえ、幸せだと思う。


「お仕事何されてますか?」と聞かれると困ってしまう。
濁して「会社員」とか「医療関係」とか言うこともある。
でも、あなたの人生のどこかでちゃんと役に立っている仕事だと心の中で叫んでいる。
どうか伝わりますように。


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