書き殴り『シン・プロフェッショナル 仕事の流儀 - 庵野秀明』感想
(一応書いておきますけどシンエヴァ&パンフ内容ネタバレが当たり前に含まれます)
また書き殴り。
楽しかった。
あぁすんごい楽しかったよプロフェッショナル。
感動してるんですけど、終始爆笑していました。
創作の現場は天地創造、人間同士のハレーション、ガチンコ勝負、ぶつかり合い。
カラーの、元ガイナックス関係者の、エヴァに関わるすべての製作者のそれを見せてもらえて、とことん楽しかった。
初っ端からNHK側の後悔フレーズから始まるの、なんていい番組。
「この男に、安易に手を出すべきではなかった」
その後も、端々に見られるツラミ節。
「苦行の日々の始まり」
「類を見ない長さの密着」
「謎に満ちた男だった……(密着取材とは一体なんだろうか…………)」
「(庵野さんの)その刃(ヤイバ)はわたしたち(NHK班)にも向けられていた……」
初手から、これは庵野さん vs NHK班の作品作りに対する映像化なのだと訴えてくる。
コレといった回しか見てない番組だけど、こんな作り方した回ありました(きっと、ないですよね)?
以下、箇条書き風で感想です。
・これまで何度思ったかわからないけど、庵野さん歩いてるの、完全にエヴァンゲリオン。
・デスクトップが嫁の絵。
・「終わるは終わる。物語としては終わる」
なんか、ちょーっち、余韻があるけど小さい作品なら出ないことはないぞ?みたいな香りがするのですが、期待してるからですか。
でも、そうじゃなくても、ファンとしてもシンエヴァ観た後「とりあえず」終わった……って気持ちになったから、心のなかでは続く、とか、人と話したり見返したりして永遠に続くものでもある、っていう余韻なのかもしれないと思う。
作った側も受け取る側も、一つの作品が完結して卒業することはあっても、心も記憶も消えるわけではないから。そもそも生きてる限りブツは残るので繰り返し見れるしね。
・第三村の完全模型作ってたのか……(いやほんま手間暇の域……)。
・新しいアニメの作り方については、パンフレットに監督自身、鶴巻さんと前野さんがたくさん書いてくださってたけど、それを映像で見れて良かったし、想像以上の吐き気するくらいの手間にアニメーターって、庵野さんもそれについてくみなさんも、すげぇな……しかない。
・一瞬入った岩合光昭的な猫カット、なんとか少しでも癒やされたいNHK班の気持ち。
・会議のフラットな席配置、すごいいいな、シリコンバレー的だ。
・山下さんのシンエヴァ観に行く夢の話、ちゃんとしたオタクでめちゃくちゃ安心する。
・全員表情筋おかしいくらい追い詰められてるのに、エヴァンゲリオンあるあるの話楽しそうにするから、やっぱりアニメ作るのやめられない、生きる楽しさそこにある人たちなんだよな。
・樋口さんでさえ庵野さんの発想に振り落とされそうになるのなら、みんなはどうしたらいいんだ。
・シンエヴァの絵コンテ?イメージ画?めっちゃ美しい。設定資料集的なの絶対出ますよね?
・大雨が降り、インサート絵などの撮影を促されるNHK班。
・庵野さんにロックオンされるNHK班のアングル!よ!完全にホラー!!!ここで死ぬほど爆笑した。
庵野さんとNHK班のきちとした話し合いの場で、撮り方のダメ出しをめっちゃ言われるNHK班。
これまでのプロフェッショナルという番組を改変させられる勢い。庵野さんのクリエイター魂が大爆発してしまっている場に4年もいるんだから、しょうがない。
この画、非常におもしろい。ないでしょこんなこと。作る人を撮るということで、逆に作ることを問いかけられる、なんて素晴らしいんだと思う。
・使徒ちゃん(みやむー!)
・少女少年(みやむー!)
・「役者がアジャパーでもアングルと編集でなんとかなる」
台詞ガッチガチの詰め込みでほぼ全員に演技させなかったシン・ゴジラに想いを馳せる。
・モーションキャプチャーの撮影も監督陣全員でやってたんだ……そりゃそうか、と思うけど1人あたりの作業量すさまじいな。すごいなアニメーターよ。
でもみんな疲弊しながらも、やっぱり楽しそうなんだよな。良いもの作ってるって現場のテンションはとても心身に良い。
限界まで吐き出される仕事場って最高なんだよね、死ぬけど。
はじめてシンエヴァ見た時、そのクオリティとかやってることそのものに、そら8年かかりますわ……て素直に思ったが、この番組見て、よく8年で作ったな?実質庵野さん以外の作業が4年程?よう作ったな?完成させたな?とほんまに感動した。
・2018年の時点でそれ?2019年でそれ?って見てるこっちもハラハラする。
なぜ完成できた???
・謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなっている。
これはほんと、大きな話。時代は変わった。25年前、あんなにも全てをわかりたくて文献から何から読み込んだくらい、エヴァの「謎」は魅力だったし吸引力だった。
今は「謎」よりも、心情とか、いかに「よく生きるか、人の役に立つか」みたいな方に作品の主軸は流れているように思う。謎めいてても最後にはちゃんと伏線回収して、謎を開示してくれる。
古オタクの自分も、気づけばそういう嗜好になっている。謎を追求するより、心地の良いもの、エモーショナルをかき立てられるもの、深いところに触れられるような作品、に食指が向くのだ。
・安野モヨコがいたおかげで庵野さんが60歳まで元気で、シンエヴァ作れたんだと本当に思う。
ありがとう。
名字一緒とかもう、仕組まれた夫婦達……だよな。
(長年ファンでずっと呼び捨てできたので敬称略でゴメンな)
・そして安野モヨコの声に黒字に白抜き文字入れたり、波間のカット入れたくなっちゃったNHK班、そうとうヤラレている。エヴァ的画面にしたい意図が表層なら、深層でもう人間映したくない……ってなってる可能性だって無くはないぞ。
・庵野さん、父親になんかあるんだろうなって思ってたけどやっぱり。
ジョージ・ルーカスがスター・ウォーズ作ったのと同じだね。エヴァの主舳ってオイディプスコンプレックス(父親殺し)だもんね。
でもそこに、欠損好き=父親好き、が入ってて60歳になってそのことが語られるの、ぽかぽかします。
何かが「大きく」欠けているものが魅力なの、巨神兵は最初から不完全で、生まれた途端に死に向かうわけで(すべての命がそうなのだが)。庵野さんが世に出るきっかけになった描写がそれなの、ほんっと、運命はかく扉を叩く。
・風呂に入らない庵野さんの最終的な匂いが鳥小屋なの、昔々に描かれた貞本さんの漫画が養鶏場が舞台だったの思い出したんだけど、それ関係ない?
・鈴木敏夫……ともかく理詰めでクリエイターに死ぬまで創らせる、言葉が巧み過ぎる策士……創らないと死ぬよ?って耳元でささやきかける感じ。
しかしこの人がいなかったら、あの宮崎駿の神作品群も庵野さんの復活もないんだよな。
「風立ちぬ」って何かを作る人の罪と罰と狂気を描いた作品だと思うんだけど、庵野さん以外ありえない配役だなとあらためて思ふ。
・「終わらせる義務」
富樫、この番組見てるのか………?って何万人が思った?
・クリエイター集団の狂乱と繰り返される死の風景を見せられている。
庵野さんも覚悟してるけど、みんなも同じくらい覚悟してるんだよな。庵野さんについていく、一緒に作品作るって決めてるんだもんな。尊いな。
・三石さん(声優さん全体)への信頼に、涙に、泣いた……いや、映画でも泣いたよ。
パンフレットにも庵野さんからの感謝があったと声優さん達のインタビューで綴られてたけど、現場こんななの、よくお芝居できたね。声優さんたち。本当におつかれさまです。ありがとう。
しかし声優さんってなんで全員性格いいの?
・庵野さんのクリエイター発言集。
「自分の外にあるもので表現したい」
「作品は自分というエゴに対するアンチテーゼ」
「自分が考えたとおりに作ったって面白くも何ともない」
「自分の中にあるものが作品の中に入ってるので本物になる」
「発見がこっち(製作者)にないと、客もハッとならない」
なにかを作ることって、作った側の思いも感覚も、全部入ってしまうんだよね、そしてちゃんと伝わってしまうんだよね、受け取る側にも。
「すべては庵野さんの中にしかない」とスタッフは言うし、庵野さんは「僕の中にはなにもない」と言う。
それは決して矛盾じゃなくて。
庵野さんの作品だけど、すべてを庵野さんが塗りつぶしていくんだけど、やっぱりみんなと作りたいんだな。みんなの力を結集したいんだな、お客さんに喜ばれる作品にしたいんだな。そうやって作りたいんだな。
ってひしひしと伝わってきた。
実際作品は庵野ワールドではあるんだけど、閉じてない。手法も技術も脚本も、広告もお金集めも全部全部、みんなで一緒に作った作品。
司令塔だけど、総監督だけど、全責任を負う者ではあるけれど、やっぱりファンを含めたみんなのエヴァンゲリオンなんだと。
鶴巻さんに樋口さんに前野さんに山下さん貞本さん、声優さん達、関わったたくさんの人たち、全部が庵野さんワールドを何とか理解し、形にし、そこへ自分たちの風も吹き込み、そして出来上がったのがエヴァンゲリオンだ。
そもそもアニメという表現方法が一人じゃ絶対出来ないんだよ。
技術的に一人で全部創った人だっているけど、あのエヴァンゲリオンの世界の広がり方はやっぱり一人じゃ無理なんだよな。
アニメーション作りってやっぱり集団作業なんだもの。
作品と自分は別物なんだって感覚は、作る人にしかわからないかもしれないけど、それは確かにあって、どこからかもたらされる何かを、なんとかつかみ取って、形にして、自分から(みんなで)生み出すっていう作業なんだよなと。
作品を作るということは自分の外からと内からとがないまぜになりカオスとなって、形作られていくものなのだと。
庵野さんの言葉の端々から、そんなことを感じて。
あらためて、同じ時代に生きれて作品を見せてもらえて良かったなって思えた。
最後の言葉が「人の役に立つ」なの。
ほんっとに今どきだと思っていて。
クリエイターはやっぱり時代の空気に敏感なもので(それこそ自分世界を大事にしつつも外世界へ過剰に敏感気質なHSPみたいな)、鬼滅でも呪術でも「役に立ちたい」が戦う主軸だし、「役に立て」と子や孫に伝える時代。
でも本当に、生きている実感や深い喜びっていうのは「人の役に立っている」こそが最大をもたらすと思うから。
全体主義と個人主義を両方内包するところを目指す、いい時代になりましたね、と。
あと庵野氏、あの感じで会社経営してスポンサー集めとか資金繰りとか裁判とかして、それでいてあの感性持ったままなの、周りのサポートがあるとは言えやはり希有な人物だよ。
そして最後。
番組のタイトルを全否定して終わる……で、笑わせてくれてありがとう。
どうぞわれわれNHK班の苦悩と苦労を笑うがよい……という声が聞こえてきた。
完全に精神汚染されましたね。
【シン・プロフェッショナル】ってわけですね。
それを持ってきたNHK班、良き仕事、それこそプロフェッショナル。
オタク視線じゃない人、庵野さんファンじゃない人(か、わかないけど、画面からはちゃんとそういう客観性と、きちんとした尊敬と尊重がある)が切り取った庵野さん、楽しませてもらいました。
そうこうしてる間にパンフも読んで2回めもIMAXで観たんで、感想書きたいですね。次は4DXでシリアス抜きにとことん楽しんでからかな。
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