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さよポニの話「ベストアルバム『ROM』Disc2」

 こんにちは。前回に続いて今回は324P曲を選りすぐったベストアルバム「ROM」のDisc2について各曲レビューっぽいなにか,やります。この先は私の独断と偏見と愛しさと切なさと心強さが入っているので悪しからず。

変幻自在の裏エース

 324Pは「魔法のメロディ」以降ふっくんと並んでコンスタントに曲を作っており,その中にはさよポニの代表曲も複数含まれます。他のメンバーの曲のミックスやリミックスも担当していることから音の引き出しの多さはさよポニメンバー随一です。量,質ともにふっくんと並んでエース級の活躍をしているといえるでしょう。このアルバム収録曲だけでも「私の悲しみを盗んだ泥棒」,「この恋の色は」といったアイドルチックなポップミュージックから「さよなら夏の少年」,「メッセージ」といったスローテンポなしっとりとした曲,さらには「空飛ぶ子熊,巡礼ス」,「世界のはじまり」といったさよポニワールドの深淵を覗くような曲まで幅広く作曲しています。

 また,324Pはアルバム「来るべき世界」の発売時にこんなツイートをしています。こういったことを言っている人の曲について色々書くのはどうなのかなーなんて思ってちょっと悩みましたが「こういう楽しみ方をしている人もいるんだ」くらいに思ってもらえればと。これは前回の投稿もそうですが「この曲のここ好きー!」,「あの曲のここがすごいー!」ぐらいしか言っていないですからね。みんなで一緒に楽しみましょ。

M1 私の悲しみを盗んだ泥棒

 ミニアルバム「なんだか君が恋しくて」,2ndアルバム「青春ファンタジア」収録のさよポニらしい青春群像劇的なキュートな曲です。コーラスもしゅか,ゆゆ加入直後ということもありベタですが気合の入ったものとなっています。ふっくんと比較して324Pは洋楽(って一括りにするのはおおざっぱですが)へのリスペクトが多くみられる傾向があり,この曲もその曲の一つなのだとか。そう言われると

ほしいのはあなただけ
逃がしはしない

なんて言い回しも確かに洋楽っぽいなとか思っています。

M2 この恋の色は

 「円盤ゆーとぴあ」収録のアイドルっぽいポップでキュートな曲です。この曲で印象的なのは

恋は あせらずと いつも ママは言うけど

 という歌詞です。これは完全に「You can't hurry love」という曲のフレーズそのものなんです。この曲は知っていたのですがよく調べてみると私はフィル・コリンズのカバーしか知らなかったようでオリジナルはThe Supremes という3人組の女性グループの曲なんですね。オリジナルを聴いてみると先ほどの「私の悲しみを盗んだ泥棒」がコーラスワークやリズムがかなり影響を受けていると感じられますね。さよポニの「原典をあたるとさらに楽しめます」的なところを存分に楽しんだ一曲です。

M3 無気力スイッチ

 1stアルバム「魔法のメロディ」収録のテンションの低い曲。「まったりしてしまったり」を突き進めていったらとうとう無気力になってしまったとか。さよポニ初の実写MVはなんともフェティッシュ。

 324Pはこういうテンションの低いというか負の感情を軸にした曲をたまに作りますが,この曲はそういった系統の曲の代表です。

ねぇ,半径何メートルまでは信用できる?
ねぇ,人生何パーセントは自分のものなの?

という歌詞が無気力に物思いにふけっている感じがして好きです。

M4 恋するスポーツ

 「青春ファンタジア」収録のちょっとエッチな曲。MVも「無気力スイッチ」同様になんともフェティッシュ。

 「ハハーン」というコーラスやフレーズごとにリレーしながらちょっとずつラップするという構成は洋楽の影響を感じます。

恋する気持ち 転移する感情 情報操作を公開捜査
見つめる瞳 感じる背中 相乗効果は双方向か

あたりの言葉遊び感はさよポニ曲らしいなと感じます。

M5 夏の魔法

 「円盤ゆーとぴあ」収録のデュエット曲。ゲストボーカルに曽我部恵一,アレンジにザ・なつやすみバンドを迎えた夏の2人の揺れ動く感情を描いたバラードです。

揃った髪をなでると
少し恥ずかしそうに笑った
ためらいがちにつないだ小指
ふたり素直になれなくて

 あたりの2人の機微が繊細に描かれた歌詞が好みです。MVの印象が強いのか夏の曲にしては爽快感よりもこの後の「さよなら夏の少年」とも含めてしっとりとした印象が強いです。

M6 空飛ぶ子熊、巡礼ス

 「来るべき世界」収録の問題作。問題作です。なぜ問題作と表現するかはこちらの山田全自動が監督したMVを見ていただければお分かりいただけるでしょう。

 最初MVを見た時の印象は「なんてこった!さよポニがまたやりやがった!」とよくわからないアメリカ人がログインしてくるほどの衝撃でした。思わず笑った。
 シュールな映像,さよポニ史上最長の歌詞,所々に昔のアニメのワープのシーンで流れていそうなSEまで使われた曲ととにかくよくわからない何かがこれでもかと詰め込まれています。これだけ詰め込んでいても音楽として破綻していない,むしろ質の高い音になっているのがすごいなと。こういったファンタジー系の曲はふっくんかクロネコが作ることが多いのですが324Pが作っているのは今回が(おそらく)初めてです。個人的にはラストの

この航路は私たちにいったい何を示すのか,か,か,か

のところが好きです。

M7いちご100%

 シングル「新世界交響曲」のカップリング曲です。いちご狩りに行ったらいちごがおいしくて感動して曲にしてしまったのだとか。いちご狩りのいちごはおいしいからね。曲自体はたいへんキュートな仕上がり。いちご狩りのビニールハウスで流してほしい。ノリノリで狩れそう。

M8青春ノスタルジア

 8cm短冊シングルで発売後,アルバム「君は僕の宇宙」に収録されました。MVも含めて324Pには珍しく洋楽ではなく昔の日本のアイドル曲らしく仕上がっています。

 このあたりから他のメンバーの曲も含めて描く女性像の年齢がぐっと上がった曲が増えてくるんですよね。「青春ファンタジア」で追体験した青春の出来事をしばらくたって振り返るような視点になっています。

M9 さよなら夏の少年

 4thアルバム「夢見る惑星」と5thアルバム「君は僕の宇宙」にそれぞれ収録されている夏の曲です。短い曲ですが夏の郷愁が詰め込まれた一曲。正直最初はふっくんの曲だと思っていました。そのふっくんのお株を奪うような夏の郷愁を描き上げた一曲です。

M10 世界のはじまり

 「来るべき世界」収録のファンタジー曲。「空飛ぶ子熊,巡礼ス」の前日談的な曲だと思っています。さよポニとしては珍しく何かの「始まり」を描いた曲です。また,これまでのさよポニではなかなかなかったメロウな仕上がりとなっています。

M11 いっぱいしっぱい

 Disc2の新曲枠です。新曲といいつつもこの曲は「まったりしてしまったり」の時期にできていたとのことなので初期の曲とも言えるでしょう。「まったりしてしまったり」,「無気力スイッチ」と同じようなテンション低めの曲です。

everybody hang on
everybody hands up

 のコールアンドレスポンスっぽいフレーズまでローテンションなのがお気に入りです。あとは

いっぱい 後悔 した きみ
境界 存在 警戒 再開

 の韻を踏んだ言い回しも初期の324P曲っぽいなと思います。
 何かと引き合いに出している「まったりしてしまったり」はこちら。

M12 メッセージ

 「君は僕の宇宙」のラストの曲。Disc1の「思い出がカナしくなる前に」と同じく残された側の葛藤を描いた曲ですが,こちらのほうが年齢が高いというか時間軸が長い曲となっています。

あれからいろいろあったけれど
もうすぐそっちに行くから
しわくちゃな顔になってごめんね
やっとあなたに会える

 とあるように何とか大切な人に残されたことを受け入れてもうすぐ同じところに行けることと同時に自分も終わりが近いことを受け入れているのがなんだかとても尊いなあと思うわけです。個人的には324Pのベスト曲です。

さよポニの多様性の立役者

 324PはROM収録曲以外にも「やせっぽちのメイリン」,「きみは,ともだち」といった良曲を送り出しています。さよポニは音の幅の広さを特徴としていますがそれは5人の作曲者がいるということはもちろんですが324Pの存在が大きいとDisc2を通しで聴いて感じました。
 以上,お納めください。

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