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天使

1.俺は今まであらゆる犯罪に手を染めてきた。強盗、詐欺、殺人…ほぼ全ての犯罪を経験しているといっても過言ではない。悪こそ正しいのだ。真面目にやっている奴ほど損をするのだ。まだ警察には捕まっていない。今後も捕まることはないだろう。なぜなら、今俺は死ぬのだ。犯罪のベテランであるという傲りからなのか、警察に捕まりそうになっているのである。捕まるくらいなら最後に自殺という犯罪をしてやる。ちょうど手元には拳銃がある。これで頭をぶち抜いてやる。

2.3月15日銀行強盗発生。犯人は銀行に人質とともに立てこもっている。
「犯人に告ぐ。今すぐ出てこい。こんなことして何になる?田舎のおふくろさんが悲しむだけだぞ。」
私のこの言葉が利いたのか犯人が出てきた。これで事件解決だ。私は警察である。全ての悪を許さない。今まであらゆる犯罪を取り締まってきた。今後も取り締まっていく。

3.私は常に正義と悪について考えている。そして私の夢は正義という言葉をこの世から無くすことである。悪があるから正義が存在するのだ。つまり、正義が無いということはそこには悪も存在していないのである。

4.私の警察人生ももう20年がたつ。私は悪をとらえ続けてきたことに満足している。

5.真っ白な部屋。そこに俺は今いる。おかしい。俺はあの時、確かに頭を拳銃でぶち抜いたはずだ。まさかここは死後の世界なのか。
「目が覚めたようだな。」
どこからか声が聞こえてくる。誰だ。声を発そうとするが声が出ない。
「私か?私は天使だ。」
なぜだ。俺は声を発することが出来なかったというのに…。
「私にはわかるぞ。お前の考えていることが。なぜなら、天使だからな。」
俺の心を読んでいるというのか。実際に読まれているのだ。信じるしかあるまい。だが、天使と話しているのというのはどうも信じられん。第一姿がない。羽でも生えた人が目の前にいれば、信じるだろうが。
「そうか。やはり、人間の天使に対するイメージは羽の生えた人か。よかろう。」
目の前に羽の生えた人が飛んでいる。天使であるということを信じざるを得ない。やはり死後の世界のようだな。天使が目の前に現れたということは、天国に行けるのか。俺が天国に行けるなら皆が天国に行けるな。地獄など存在しないのかもしれないな。
「まさか。ちゃんと地獄は存在している。それにお前は天国には今は行けないさ。わかっているだろう?自分のしてきたことが。まあ、地獄にも行かんから安心しろ。」
安心しろだと。ならばこの後俺はどうなるというのだ。まさか今後ずっと、この部屋にいることになるのか。
「大丈夫だ。この部屋からはすぐに出られる。お前は、数多くの罪を犯してきた。地獄へ直行させなければならないほどのな。だがしかし、最後の最後に貴様はやってくれたよ。お前は自殺した。人の死で自殺だけは特別でもう一度、他人の体を借りて生き返らなければならない。非常に手続きがめんどくさい。まったく。」
なぜだ。なぜ自殺は特別なんだ。犯罪を犯し続けてきた俺がもう一度生き返ったとしてもまた犯罪を犯すだけだろう。
「つべこべ考えるな。これは我々天使界の長が決めたこと。貴様のような極悪非道人が知る必要などない。…」

6.こんなやり取りが、罪人と天使の間でなされていた。

7.罪人である「俺」は警察である「私」の体をかりて生活しているのである。しかし、罪人であった記憶は無い。

8.「特に自殺者が特別というわけではない。地獄に来るやつは、大抵何か生活の中で満足できないことがあったやつらだ。しかし、その生活とは正反対の生活を送らせることで無意識のうちにそれまでの生活がなぜだめだったのかに気付く。そうして生活していくうちに魂はランクを上げていく。そうすることで地獄に来るやつも減り天国に行くやつが増える。そうすりゃ、悪魔の仕事も減り、楽ができるってもんよ。」

9.白い部屋に現れたのは天使ではなくなまけたい悪魔だったのである。

終わり

パソコンの中にこの文章が保存されていました。5年前に書いたようです。これを書いた記憶が全くございません。私は悪魔に記憶消された罪人か?なんでこれ書いたんだろう。

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