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五月十八日

 研究者の大半が主張するように自然発生のものと考えるには、新型コロナウイルスは人間に適応し、発見当初から感染力も強かった。実験室で生まれた可能性を排除するのは早すぎる、と論文は言う。

パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきでないとする論文が発表された。

アメリカのトランプ政権高官や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を陰謀論だと一蹴している。

専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強している。

本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通してもらった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらなる研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というものだった。

問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマサチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で、コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応している」からだという。

(ちなみに同サイトでは掲載論文について「結論として、または臨床や医療に関連した行為を導くものとして」扱われるべきではなく、「確たる情報として報道されるべきでもない」と注意を促している)。

「最初からSARS並みの感染力」
「われわれが観察した限りでは、新型コロナウイルスは昨年後半に初めて発見された時点で、すでにSARSウイルスと同等の人から人に感染する力を備えていたと見られる」と、研究チームは指摘した。他方、「新型コロナウイルスに似ていながら、まだそれほど人間に適応していないウイルスから進化した形跡」を示すものは見つからなかったという。

「感染力の強いウイルスが突如出現したことは大きな衝撃だ。これを期に、ウイルスの起源の確認や近い将来の(類似のウイルスの)再出現の予防に向け、国際協力への機運を高めなければならない」と研究チームは主張した。

この論文によれば、ウイルスの発生源を特定するようなはっきりした証拠は見つかっていない。研究チームはウイルスの遺伝子的構造やサンプルを調べたが、変異した場所が中間宿主の段階だったのか人間の体内なのか、それとも研究施設だったのかは分からなかったという。

だが「実験の過程で遺伝子組み換えによらない前駆体が表れて人に適応した可能性も、念のため検討すべきだ」と研究チームは主張している。

また結論の中で、人から人への感染がどのように始まったかについてさまざまな可能性があるということは、「(ウイルスの)再出現を防ぐためにはそれら全てのシナリオについて警戒する必要がある」と警告した。


日本時間18日午前4時にまとめた統計によると、世界の新型コロナウイルスによる死者数は31万3611人に増加した。

 中国で昨年12月末に新型ウイルスが最初に発生して以降、これまでに196の国・地域で計468万700人余りの感染が確認され、少なくとも167万100人が回復した。

 17日午前4時以降、新たに4315人の死亡と9万1849人の新規感染が発表された。死者の増加幅が最も大きいのは米国の1216人。次いでブラジル(816人)、フランス(483人)となっている。

 最も被害が大きい米国では、これまでに8万9207人が死亡、147万8241人が感染し、少なくとも26万8376人が回復した。

 次いで被害が大きい国は英国で、死者数は3万4636人、感染者数は24万3303人。以降はイタリア(死者3万1908人、感染者22万5435人)、フランス(死者2万8108人、感染者17万9569人)、スペイン(死者2万7650人、感染者23万1350人)となっている。

 人口10万人当たりの死者数が最も多いのはベルギーの78人。次いでスペイン(59人)、イタリア(53人)、英国(51人)、フランス(43人)となっている。

 香港とマカオ(Macau)を除く中国本土で発表された死者数は4634人、感染者数は8万2947人、回復者数は7万8227人。

 17日午前4時以降に初の死者が出た国はネパール、マダガスカル。

 地域別の死者数は、欧州が16万6647人(感染189万453人)、米国・カナダが9万5077人(感染155万5185人)、中南米・カリブ海(Caribbean Sea)諸国が2万8715人(感染50万8623人)、アジアが1万2176人(感染35万5378人)、中東が8135人(感染27万9994人)、アフリカが2735人(感染8万2684人)、オセアニアが126人(感染8391人)となっている。

 各国の死者数・感染者数は当局による訂正やデータ公表の遅れがあるため、過去24時間での増加幅は前日の集計結果との差と一致しない場合がある。

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