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【雑記】中世欧州料理の分量について

今回は、中世ヨーロッパの料理における「分量」についての小話です。
あくまでも試作検証している側としての意見になります故、これが正しい!という確証は全然ございません。あしからず。


中世ヨーロッパに残る料理指南書の数々。書かれた時代や時期によって多少の差異はあるものの、共通事項もいくつかございます。そのうちのひとつが「分量」の項。
現代では、料理レシピ本のほとんどに食材名と分量が書かれているわけなんですが、昔は「分量を記載する」という概念がほぼありませんでした。書かれていても食材の名前と簡易的な作り方があるだけ。ややこしいことに、書物によっては謎かけバリの回りくどい書き方をするのもあるので、ぐぬぬぐぬぬって感じです(頭から煙ぷしゅー)。

たとえば、14世紀末に編纂されたイングランドの有名な料理指南書「Forme of cury」の中に生の野菜を使った”Salat"(現代でいうところのサラダ)のレシピがございます。
ざっくり要約すると、

Take persel, sawge, garlec, chibolles, oynouns, leek, borage, myntes, porrectes , fenel and ton tressis , rew, rosemarye, purslarye , laue and waische hem clene, pike hem, pluk hem small wiþ þyn honde and myng hem wel with rawe oile. lay on vynegur and salt, and serue it forth.
(パセリとセージ、ガーリック、セイボリー、玉ねぎ、リーキ、ボリジ、ミントフェンネル、ルー、ローズマリーなどを綺麗に洗い、小さくちぎってオイルをかけ、ビネガーと塩で味をととのえなさい ※多少雑に訳してます)

Forme of Cury , [Salat]: . XX.III. XVI.

…分量・皆無。
とはいえ、慣れればたいして気にならないので、場数踏めばそのうちなんとかなります!(いいのか)

大半の中世欧州料理レシピにいえることなんですが、ぶっちゃけ料理人の腕にほぼすべてかかっているようなものなので、料理指南書はあくまでも「記録媒体のひとつ」というとらえ方で、実際の味つけや調理に関しては担当する料理人ごとに味も違えば完成形も全然異なっていたと思います。
とかく、「自身が仕えるあるじの好みにあわせた料理」を常に心がけていたことを考えると、分量の表記は特段なくてもよかったのかなと。現代でも、肉じゃが一品とってもそれぞれのおふくろの味ってありますしね。

ほんじゃ「実際試作検証する時はどうしているの?」という疑問ですが、参考までに現代でよーく作られている類似料理を探した上でその分量を参考にした上で、自力で再構築しています。アレンジ料理の場合は、さらに日本人寄りの味に少し変えたり、代用食材をあてがったりします。何気にコレがけっこう大変なんですけどネ(白目)。

ヨーロッパの郷土料理なんかがそうなんですが、(創作アレンジは別として)今でも残っている作り方は昔から伝統として受け継がれていることが多いため、そこまで劇的に変化してはいないとみています。

15世紀イタリア方面「ラム肉のオレンジ煮込み」。オレンジやハチミツを使いますが、現在でも同じような食材で作られた現地の郷土料理はいくつか残っています

実際、中世ヨーロッパ料理と現代にあるなんとなーく似ている郷土料理の食材と作り方レシピを比べてみると、意外と大きな代り映えというのがありません。まぁ、乳鉢でゴリゴリにするところをフードプロセッサーでギュイーンと粉砕とかの変化はありますけど…(現代の産物 is 楽)。

「料理レシピの分量は書かれているままを忠実に守るように」というのは今や鉄則になっていますが、ほんとその通りだと思います。分量表記なくていきなりコレを領主の好みに合わせて作って下さい、なんていわれた日にゃ発狂しそうです(というかしっぽ巻いて逃げちゃうかも)。失敗したら食材も勿体ないですし、人様に出すからには美味しいモノ出したいですしね。

以上、勝手ながらなつらつら小話考察でした。
最後までご一読頂き、有難うございました(^-^)。


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