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【中世欧州料理試作】(4)チキンリブのフルーツ煮込み

このコラムでは、過去試作してご紹介した中世ヨーロッパのアレンジ料理についてちまちまご紹介します。
全部実試作つき&単純に自分の感想や所感なども書きなぐってます。基本的に全部美味しいんですけど、一部「?!!?(なんともいえない味)」ってものもありますので、そのあたりも正直に書いときます。



個人的イチオシ中世欧州肉料理

いきなり偏った感想ですが、今までやってきた試作肉料理で圧倒的に美味しかったのがこの「チキンリブのフルーツ煮込み」。鶏肉とぶどうや洋梨などを焼いて煮込むというものなんですが、焼いたり煮たりを繰り返すので調理難易度が高めとなっております。ただ、その分出来上がった時の美味さは格別で、自分で作ってウマい!と感じるので一流シェフの方に作って頂いたら昇天するんじゃないか自分?っていうぐらいです(言い過ぎ)。

お肉と温かくしたフルーツの組み合わせなので、現代でいうところの酢豚に近い感覚ですが、過去募りました試食モニター様のご感想でも「酢豚ダメだけどコレはいけた」そうなので、けっこう食べやすい部類に入るのかな?と思います(個人差ありますが)。

出所となる料理指南集は15世紀頃のイングランドのものですが、この頃のイングランド料理って概ね美味なものが多いんですよね。食材の流通が安定していたのか、他国から料理人ごとぶんどってきた(言い方失礼)のか分かりませんが、そこまで味的に拒否るようなものはあまりないように思えます。

ニンニクと生姜の存在

このお料理では日本でいう生姜に形がとても似ている「ガランガル(Galangal/ガランガーとも)」という食材を使っています。現在でも現役バリバリに使っているアジア方面の食材なんですが、なぜか中世のイングランド料理にはポツポツ登場します。

ガランガルは現在のタイ料理などには欠かせない食材。一般的なスーパーで見かけることはほぼないんですが、アジア系食材店には置いてあることが多いです

10~11世紀頃(推測)に遠い東の大陸、おそらく中国方面かと思いますが、そこからアラビア方面を経由してヨーロッパに入ってきたのではないかと言われています。当然ながーい道のりを経てやってきたわけですから、ガランガルを使う料理は現代価格に直すとけっこうな高級食材だったのではないかと思います。

このガランガル、見た目は生姜ですがかなーり皮が固いこともあって、みじん切りだったり輪切りにするには相当な力を要します。食べることはほぼなく、風味付けとして利用します。辛みも少し感じますが、どちらかというと香りの方が強いかなと思います。
拙著同人誌「中世欧州の食レシピ(肉料理編)」に収録しているレシピはガランガルと書いてますが、日本の生姜でもOKという形にアレンジしています。(ガランガルを使えば香り的によりGOODでございます)。

もうひとつの食材「ニンニク」もこの料理で使っています。ガランガル(生姜)ほどではないですが、王宮料理ではポツポツ使われている食材の一種です。中世ヨーロッパの野菜や果物などを記録した養生訓「健康全書(Tacuinum Sanitatis)」にもニンニクの挿絵が描かれております。昔のニンニクってニオイ的にどうだったんでしょね?

ニンニクの収穫。現代とほぼ同じっすね(たぶん)
from the Tacuina sanitatis (14th century)

作り方

結論から言いますとそこそこめんどいです(めっちゃ雑説明)。
自分も作るのであれば、中世の料理イベントやパーティー料理向けとしてって感じなので、今日の晩ごはんは中世のチキンリブにしようかな♪とかいう考えは毛頭持ちません。それだけ時間かかるんですよこれネ。

  1. 塩をなじませた鶏肉をフライパンで焼きます(表面がうっすら茶色くなるぐらいまで)。

  2. 焼いた鶏肉と半量のフルーツ類を混ぜ合わせてオーブンで60~75分ほど焼き、いったん取り出してもう半量のフルーツを追加で加えてさらに20分ほどオーブンで再び焼きます。

  3. 焼きあがったらあら熱をとり、フライパンに再び具材を入れて弱火で温め、スパイス類を加えて混ぜ合わせながら味をととのえます。

  4. お皿に取り出してすすめます。

上の作り方はめっちゃざっくりと書いているので、実際の作り方はレシピご覧頂ければと思いますが、一度フライパンで炒めてオーブンで二度焼きしてさらにフライパン炒めアゲインなんで、下ごしらえの時間も考えるとトータル3時間ほどかかる計算になります。
もはや気合い入れて作るのが吉かと思いますが。

鶏肉は基本的になんでもいいんですが、手羽中ないし手羽先が個人的にはおススメです。いちいち切らなくてもいいので(雑な性格丸出し(*ノωノ))

お味について

冒頭でも書きましたが、ワインをはじめとしたお酒にはもってこいの、甘味ありつつスパイシーな香り、鶏肉のジューシーなうま味も合わさった美味な逸品でございます。
フルーツとして使っている食材がぶどうと洋梨なので、その甘味がお肉をジューシーにさせてる感じですかね。コレ考えた料理人ほんとしゅばらしいです(感激)。
自分は専ら秋に作ることが多いです。理由は「使う食材の旬が秋だから」。なので、大量に作って少し冷凍でとっといてます。現代の冷凍庫に常に感謝…(※中世料理の試作分が大量に入っているともいう)。


「チキンリブのフルーツ煮込み」の作り方は拙著同人誌『深き中世欧州の食レシピ(総集編)』に収録されておりますので、もしご興味ありましたらパラパラご覧頂ければと思います。

※通販サイトの紙同人誌取扱いは9/30(土)でいったん終了しました。書店委託として「書泉グランデ」さん(東京・神保町)に少し置かせて頂いております。電子書籍版は引き続きダウンロード頂けます。

最後までご一読頂き、有難うございました(^-^)。

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