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コミティア143で出張漫画編集部に持ち込んでみた

2023年2月19日(日)に開催されたコミティア143に行ってきた。
前回、前々回はサークル参加だったけど、今回は一般参加で、出張編集部が主目的。結局4社回ってすごく勉強になったので、以下はその備忘録。

まず、

・私と言うフィルターを通した備忘録なので、編集者ご本人からしたら「そういう意味で言ったんじゃない」「そもそもそんなこと言ってない」「話ちゃんと聞いてた?」というのがあるかも。ごめん。まあ自分用の備忘録だから。

持込の目的

・編集さん(プロ)からのアドバイスがほしい(タダなんだからありがたいよ)
・漠然と自分の漫画家としての位置を知りたい
・商業でやっていく場合に、今一番足りないもの、これからやるべきことを知りたい

持ち込んだ漫画

・以下3作↓

・メイドの漫画

・ウサギの漫画

・殺し屋の漫画

・今までその時々の思いつきで創作・エッセイ・4コマ・長編・短編と雑多に漫画を描いてきたけど、「私といえばこれ!」という個性がないな〜と常々思っていた。今回あえて全く別ジャンルの3作を持って行って、反応を見て方向性を決めることにした。

編集部の選び方

・普段漫画は読むけど単行本派で、雑誌もアプリも追いかけていないので、どこがいいのか検討つかず。漫画友達に漫画を見せて、どこに持って行けばいいか、おすすめを教えてもらった(ありがたい……)。

・その候補がこれ(★:実際に持っていった編集部)↓

  • 週刊ヤングジャンプ/となりのヤングジャンプ(集英社)★

  • webアクション(双葉社)★

  • LINEマンガ(LINEマンガ編集部)★

  • COMICリュエル&COMICジャルダン(実業之日本社)★

  • アフタヌーン(講談社)

  • Kiss/BE・LOVE/comic tint/ハニーミルク(講談社)

  • comico(NHN comico)

・この中から、当日の混み具合とか時間の都合とか自分の体力とかを見て持ち込んでみた。アフタヌーンは人気なのか昼頃には「受付中止中」になっていて、タイミング合わず結局行けなかった。

持ち込んだレポ

週刊ヤングジャンプ/となりのヤングジャンプ(集英社)

読んでくれた人:30代くらい?の男性。3作を順番にさくさく読んでいった。

●メイド
・最後の方で方向が変わったなという印象
・こういう叙述トリックものはどこまでが嘘なのかという線引きを明確にして説得力を持たせる必要がある(主人公だけにしか見えないのか?作った料理は本当に存在しているのか?母親と会ったことは嘘なのか?)
・主人公の魅力を出す。読者はシャイなので、「しょうがないな」と応援する理由・言い訳が必要。小説家なら賞を取るとか担当編集が出てくるとかで魅力を出す。魅力はたくさん付与するのではなく、同じ魅力でも多角的に褒められるかが大事。
・絵は練度を感じる
・1対1ラブコメには主人公に応援したくなるような魅力が必要。読者はヒロインの父目線にもなる。ヒロインとくっついて羨ましい気持ちと幸せになってほしい気持ち。ぼくヤバなんかは主人公がヒロイン以上にヒロインしている。
・主人公を翻弄するヒロインというのはこすられた印象

●ウサギ・殺し屋
・うちの雑誌とは色が違うので評価できない

webアクション(双葉社)

読んでくれた人:40代くらい?の男性。3本を2周、途中戻ったりしながら読んでいた。

・読む前にどの順番で描いたか聞かれる。
・時間も限られるので3作のうちどれか1作を選びましょうと言われたので「1番面白かったやつでお願いします」と言うと、それならメイドかな…となる。
・でも他2本についてもさらっと感想もらえた。

●ウサギ
・やりようによってはものになるかも?キャラ名をつけたり、どんな会社なのかを描くとよい。切り口が開けすぎてて何者でもなくなっている。ウサギというキャラがいるのに、ただの擬人化エッセイ漫画っぽくなっている。キャラを出すといい。
・(「100日後に退職するウサギ」というのも考えたがどうか?という質問に対し)「先が気になる」を目指すよりもまずはキャラを作ろう

●殺し屋
・同じコマが続くのが気になる。

●メイド
・1話目で読み手をつかまなきゃ。もっと二人のやりとりを描きましょう。
・小説家という設定が出るのが遅い。
・1話目2ページ目1コマ目のアパートの様子がセリフが被っていてわかりづらい。セリフを前のページに持っていってもいいと思う。
・屋敷の背景のインパクトが強すぎる。
・読者の目線はセリフを追っているので、吹き出しと吹き出しの間に見せたい絵を入れるとよい。そうやって無理矢理でも視野に入れる。
・1話のボリュームが足りない。少年が小説家であることの絵がないので印象が薄い。説明としての絵がない。
・背景とセリフの内容が一致していないところがある。合わせた方がいい。

■質問:商業を目指すとしたら今何が足りないか?何をすべきか?
・キャラが弱い、ストーリー性に欠ける。
・短い話、例えば著作権の切れた昔話や古典の要約や二次創作を描いてみると練習になる。

■質問:他誌も含めて、どこの雑誌・メディアが向いていると思うか?
・モーニングやヤングジャンプのような専門性の高いジャンル(職業モノとか)の漫画が載るような青年誌/女性誌以外。最近はどこもジャンルが幅広いのでどこでもいいと思う。

LINEマンガ(LINEマンガ編集部)

読んでくれた人:20代くらい?の女性。読みながら感想を伝えてくれるタイプの人(殺し屋の漫画の冒頭で「めっちゃこの家不用心ですね笑」とか)。

・漫画それぞれではなく、全体的な感想をくれた。
・読者の予想を裏切ろうとするサービス精神がある。これは武器にした方がいい。
・大前提として、LINE漫画はwebtoonのサービスだから、積極的にwebtoonに取り組もうと言う意志がないとアンマッチかもしれない。持ってきた漫画をwebtoonにすると魅力が減ってしまう気がする。
・LINE漫画ではいわゆる売れ筋の漫画(異世界転生・マーガレット系のキュンキュンする漫画・不倫モノ)を描いたら編集会議を通る傾向。実際にそういう系統の漫画がウケているというデータもあるため、それ以外の漫画は通りにくい。
・興味があるなら「LINE漫画インディーズ(pixivみたいなサービス)」に投稿してみてはどうか。
・殺し屋の漫画は星海社の漫画賞(ツイ4新人賞)に送ったらいいところまでいくと思う。原稿料は安い(フルカラー6000〜7000円くらい)けどおすすめ。講評も必ずもらえる。
→帰ってから調べたらツイ4新人賞にはページ制限があったので、殺し屋の漫画を持ってくなら書き直しが必要かも
・4コマだけどドラマチックな(=ストーリー性がある)漫画を描いてみては(月刊少女野崎くんみたいな感じ)

■質問:商業を目指すとしたら今何が足りないか?何をすべきか?
・どこの媒体に載せたいか決まっていないと、どこの媒体からも「うちとは色が違う」と言われてしまう。媒体を厳選して戦略を立てて取り組むとよい(その媒体で数年前〜今売れているものをチェック)
・上記の取り組みと並行して、短編をSNSに載せてバズを狙う。

■質問:キャラを強くするにはどうしたらいいか?
・主人公は普通に、周りを特殊にして、読者を神視点ではなく主人公に感情移入できるようにする。
・ウサギの漫画はキャラを全部動物にして特徴を出す。やたら横文字使うけど仕事できないキャラとか、表では「ぴえん」とか言っているのに裏垢で毒づいているキャラとか。

COMICリュエル&COMICジャルダン(実業之日本社)

読んでくれた人:40〜50代くらい?の男性。唯一はじめに名乗ってくれた人。こちらはエントリーシートに本名を書いて渡していることもあり、名乗ってくれると単純に嬉しいな〜と思った。

●メイド
・まず誰向けに描いていますか、と聞かれた。「からかい上手の高木さん」みたいなラブコメをフリにしているので、漫画を読み慣れている人がターゲットと回答(ただ実のところあまりターゲットを意識しては描いてなかった。言われてみればそうかもな、くらいで答えた)
・この漫画が誰向けに描かれているのかを明確にする必要がある。いわゆる男の子が喜ぶかわいい女の子を描きたいのか、ストーリーを読ませたいのか。
・漫画を描き慣れているように感じる、商業で描いてた?→いい意味で聞いているのかわからなかったけど素人くさくはなかったと前向きに捉える
・商業の可能性があるのはメイド。
・キャラの会話のテンポはいい。
・お母さんとの関係が気になる。
・ギャグは流行り廃りがあるし、ハマるかハマらないかの見極めが難しい。
・ジャンル的にうちは違うかも、芳文社系かな。
・WEBは一度読めばおしまい、と言うことが多いので、ストーリーを読ませたいなら早めにロマンスやダークをチラつかせた方がいい。
・ただただ「いいね」だけ押されて消費される漫画にならないように。家に持ち帰りたい、課金したいと思わせる何かがほしい(「何か」は決まったものではないのでよく考えましょう。いろんなやり方があるはず)

●ウサギ
・共感を呼ぶ内容。
・ただこれもただ消費されるだけの漫画になっている。

■質問:商業を目指すとしたら今何が足りないか?何をすべきか?
・正当な努力(画力の向上とか)とプロデュース力が必要。
・絵はうまくなくても売れるが、不利ではある。この人の絵なら、と思われる知名度は必要。
・たくさん描いて出して人に見せて反応を見る。メイドさんの別角度バージョンとか。
・出すだけでなく、それがお金に変えられるようにする。

■質問:あなたの思うお金を出してもいいと思える漫画はなんですか?
・自分にささる漫画。自分の趣味嗜好にマッチするかどうか。
・自分の興味があるジャンルで、より詳しいことが書いてある、実用的な(役立つ)漫画

■質問:キャラが弱いと言われるのですが、どうしたらいい?
・言葉遣いや見た目に特徴を持たせる。
・小説家だったら、ヤンキーとかヤクザとか、違和感を持たせる。メイドだったら、刺青が入っているとか。
・キャラも食い合わせの悪いものを組み合わせるとよいかも。漫画家とヤクザとか。

感想

・4社回って、当たり前だけどそれぞれスタイルや着眼点が違っていて面白かった。アドバイスも実用的だったり観念的だったり、角度が違うのでとても勉強になった。
・事前に友人にお薦めされた「読者ハ読ムナ(笑)〜いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか」を読んで、編集者とちゃんと会話することが大事だと思って臨んだので、自分の意図と違う話をされたときは「自分はこう思って描いたんです」がちゃんと伝えられてよかった(そしてすぐ論破されて「た、たしかに……!」となった。やはりプロはすごい)
・自分の中でなんとなく避けてたり逃げていたりしたことが浮き彫りになった。
・今回は漫画を描いてからどこに持ち込むか考えたけど、商業としてやるなら掲載する媒体をある程度決めて、読者層を想定してから描いた方がよい。もちろんどこに載せても恥ずかしくない、引っ張りだこなスーパー漫画が描ければいいけどそれは無理なので、ある程度戦略的に動けるよう分析は必要だと思った。
・メイドの漫画はツイッターで続き物の漫画を描いてみたい、というのがあり、ざっくりな設定と展開を考えてからスタートしたが、ちょっとざっくりしすぎてた。2話目を描いてから1話目と整合性がつかなくなり(はや)、後からメイドの性格を変えて1話を描き直したりしていた。連載ナメてた。特にメイド漫画は叙述トリック的な要素も絡めようとしていたので、行き当たりばったりでは無理だった。もっと先の展開やキャラクターをちゃんと考えてから連載をするべきだった。あとツイッター漫画ということで1話を4〜8ページに抑えたんだけど、そのページ数で2人のキャラの魅力を出して設定も説明して……は力不足でできなかった。メイド漫画は描き続けるつもりだったけど、今の実力じゃツイッターで描き続けるのは無理そう。一旦中断。
・殺し屋の漫画は自分比で一番バズった漫画(たしか)だったので評判いいのかなと思ったけど、今回持っていった中ではLINEマンガ以外からの反応はいまひとつだった。COMICリュエル&COMICジャルダンの編集の方も言っていたけど、お金を出すような漫画じゃなくて、SNSでいいねを押すくらいの漫画だったということだろう。いいねに惑わされてはいけない。
・ウサギの漫画はほぼ実録なのでエッセイ漫画の皮を被った創作漫画だったんだけど、結果的に創作漫画にしてはキャラが弱くなってしまった。ただのあるあるを描き続けるつもりはなく先の展開も考えられるので、ちゃんとキャラを作って描いていった方がおもしろくなるかもしれない。
・エントリーシートに書く持込動機を「貴誌(媒体)への掲載を目指して」としていたので、もっと厳しいことを言われるかと思ったけどそんなことなかった。行く前に同じく持ち込んだ人のレポもいくつか読んだけど、そんな厳しいことは言われていなかったのでそういうものなのかも(たまに失礼な人はいるらしいが)
・しかし4社も回ったのは流石に疲れた。4社目が終わったのが2時半くらいだったので、だいたい2時間くらい話していたことになる(待ち時間もそれなりにあったけど)。普段使わない脳みそ使ったからかクタクタになった。でも単純に漫画が好きな人と漫画の話をするのは楽しい。今度はもっと「この漫画おもしろいですね!」と盛り上がれればいいな。

あー長くなった!漫画に正解はないけど、結局のところたくさん描いてトライ&エラーするのが大事ってのは間違いないので、これからもなにかしら描いていきます。おしまい。

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