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【配給会社ムヴィオラのウラ③】映画祭で人が死ぬ。。。。?!

前回は、アテネの松本さんに誉められて(と自分では思ってる)調子に乗ったところまで。
その後、なぜか「映画祭が得意な人(らしい)」になった私は、ケルト映画祭やジョン・セイルズ映画祭、メキシコ映画祭、台湾映画祭などをやることになったのだが、きょうは1997年のメキシコ映画祭の話。
メキシコには「死者の日 Día de Muertos」という日本でいうお盆のような日がある。11月1日と2日だが、メキシコ中が骸骨飾りであふれ、前夜から人々はお墓に出かけて、そこで死者とともに飲んだり食べたり笑ったり歌ったり楽しく祝う。

ガイコツ

翌年のメキシコ映画祭の準備のため、メキシコに行った私は死者の日が楽しくて、すっかり骸骨好きになり、今も事務所には特大骸骨が鎮座している。

メキシコでは映画祭での上映やゲスト招聘を考えていたアルトゥーロ・リプステイン監督や女優のオフェリーア・メディーナ、そして日系俳優でルイス・ブニュエルの『ナサリン』に出演しているノエ・ムラヤマさん、ジョン・フォードの『逃亡者』の撮影監督だったガブリエル・フィゲロアさんに会った。

ノエさんもフィゲロアさんも、それは歓待してくれて、お宝のような話をたくさん聞かせてくれた。
フィゲロアさん撮影の『価値ある男』に何とメキシコ人役で主演した三船敏郎マル秘エピソードを語り、「アヤコ・ワカオ(若尾文子)は世界で最も美しい女性」と何度も若尾さんの話をするフィゲロアさんは90歳に近いと言うのに生き生きしていた。

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当初、フィゲロアさんは、高齢でもあるので招聘は考えていなかったのだが、「日本に行きたい」というご本人の希望があり、予算はなかったので、航空会社や大使館に掛け合って何とかビジネスクラスを確保できてほっとしていたら。。。映画祭開催の直前にフィゲロアさんが亡くなった。

一方、ノエ・ムラヤマさんも「日本にいる親族に会いたい」と来日を心から楽しみにしていた。それなのに、映画祭の前に持病が悪化して入院。。。来日は中止になった。それでも本当に日本に来たかったのだと思う。病院にいるノエさんから何度も電話があった。ある時など、開催中の映画祭の会場にも電話があり、行けなくて残念だと繰り返した。そしてノエさんも亡くなった。

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そんなわけで、メキシコ映画祭はふたりの死者の思い出とともにある。それはあの「死者の日」とも関係があるような気がしてならない。
翌年、お墓まいりに再びメキシコを訪ねた時、お二方の息子さんが揃って「日本には行けなかったけど、映画祭のことをとても喜んでいた」と言ってくださって、泣けてしまった。

フィゲロアさんの撮影作品については、字幕をつける予算はなかったけれど、フィゲロア好きのアテネ松本さんの好意で、メキシコ映画祭の関連企画としてアテネフランセ文化センターで特集上映ができたこともありがたいことだった。

*今日もまだ前史になってしまった!早くムヴィオラを作るところまで行かねば。

ムヴィオラ 武井みゆき

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