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【追悼③】ヤスミン演出・アディバさん出演のCM映像〜アディバさんが語る『細い目』

前回の記事に書きましたが、アディバさんとヤスミン監督のお付き合いの始まりは、ヤスミンが広告会社レオ・バーネットのCMディレクターとして活躍していた頃、CMの歌を歌ったことだったそうです。そこから、ヤスミン映画に欠かせない「女優」になるわけですが、そのきっかけとなったのが2002年日韓W杯のために作られたW杯キャンペーンのシリーズCMでした。
ヤスミン監督の演出でアディバさんが「出演」した記念のCM映像をどうぞご覧ください。

素晴らしいユーモア、言葉なしで見事に伝わってきますね。
こうしたCMの後で、アディバさんはヤスミン監督の長編第二作になる『細い目』に出演するのです。『細い目』は今回の追悼上映でも上映しますのでぜひご覧になってください。
2017年の来日時に、アディバさんが『細い目』について語っていますので一部をご紹介します。

アディバ:『細い目』の現場には幸せ感が溢れていたと思います。監督のやろうとしていることのために、皆が集まったという現場でした。父親役のハリス・イスカンダルさんと母親役のアイダ・メリナさん、この二人はマレーシアでとても有名な方です。そして主役のオーキッドを演じたシャリファ・アマニ。彼女は天才児と呼ばれた女優さんで、お母様が有名なジャーナリストでもあって、そういった意味でも有名でした。そして撮影監督のキョンさんも映画賞をとった方でした。そうした人たちが皆、ヤスミン監督のために集結したわけです。ギャラの話をする人はいませんでした。ヤスミン監督のやろうとしていることを信じて、この映画は必要なことだと思ったんです。『細い目』のカップルは通常であればありえない、社会背景の異なる、人種の異なる、宗教の異なる二人、そういうまさに画期的な作品だったわけですね。監督がこの作品を通して伝えたいこと、愛を広めたい、発想の転換をしたい、それを考えたら誰もが、今やっていることがあっても、それは置いといて、とにかくやりたいと思ったわけです。

シャリファ・アマニは今でもアディバさんを「カク・ヤム」と呼びます。「カク」とはマレー語の「お姉さん」という意味で、「ヤム」は『細い目』でアディバさんが演じたメイドさんの役名ですが、映画の中でも「カク・ヤム」、つまりカク姉さんと呼ばれていました。ヤスミン監督はじめマレーシアの映画を研究している京都大学の山本博之先生は「使用人なのだから、“
お姉さん”と呼ばなくていいところをわざわざそう呼んでいるというところも映画のポイント」と話していました。

*追悼上映の期間中に、ここでご紹介したようなヤスミン演出・アディバさん出演の貴重なCM映像をご紹介するアフタートークを実施したいと思っています。日程などは後日お知らせします。いずれもヤスミン監督の長編映画をより深く感じるために、とても参考になると思いますのでお楽しみに。

2022年7月23日 
ムヴィオラ武井みゆき

▼前回の記事はこちら
【追悼】アディバさんとの思い出
【追悼②】アディバさんの歌声〜ヤスミンが私を使うことで伝えたかったこと

■「アディバ・ヌールさん追悼上映」詳細記事はこちら
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■『細い目』公式HP

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