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【追悼②】アディバさんの歌声〜ヤスミンが私を使うことで伝えたかったこと

ムヴィオラ

6月18日にアディバ・ヌールさんが亡くなって、昨日で1ヶ月が経ちました。
まだこうして彼女のことを書こうとすると涙がこぼれます。たった1回の来日でしたが、私にとってアディバさんは忘れられない方の一人です。短い滞在中にこれほどたくさん、一緒に笑って一緒に泣いた人はいなかった気がするのです。泣いた話の大部分はヤスミン・アフマド監督との思い出だったことは言うまでもありません。
今日は、アディバさんが2017年に来日した際に語っていた「ヤスミンと知り合ったきっかけ」とともに、彼女の美しい歌声をご紹介したいと思います。

■2017.03.24(金) 18:45〜20:45@シアター・イメージフォーラムでのスペシャルトークショーより
<登壇者>
アディバ・ヌールさん 
山本博之さん(京都大学東南アジア地域研究所准教授/混成アジア映画研究会)
通訳:松岡由美さん
進行:武井みゆき(ムヴィオラ)

アディバ:1994年当時、私は英語の教師をしていたのですが教えていた学校でカラオケラウンジというものがあってカラオケが大好きになり、毎日残業後、4時から8時は必ずそのカラオケラウンジで歌うのが日常生活になっていました。すると友人たちが、そこで私が歌った歌を録音して様々な歌のコンペにテープを送ってくれるようになったんです。ですが、いつも最終の8人から10人くらいまでは残るんですが、最後はいつも若くてきれいでセクシーな女性たちが受かっていって、自分は不合格。唯一、ある大きなコンクールに転換期があり、そのコンクールで優勝したのをきっかけに新しいタレントとして注目を集めるようになりました。そこからおかげ様で様々な制作会社から、例えばCMの歌やドラマの吹き替えの歌をやりませんかと声がかかるようになりました。そこでヤスミンに出会いました。彼女はマレーシアで大手の広告代理店(Leo Burnett)で働いていて、石油企業ペトロナスなど大企業のCMを作っていましたので、そのCMで歌を歌ったのです。ただその時のヤスミンとの関係はプロフェッショナルな関係性、と言っても決して偉そうにしている方ではありませんでしたので、友人のように気持ち良く仕事させていただきました。そんなある時、ヤスミンから「私の映画に出演しませんか?」という話がきました。私は「まさか私が!?」と思いましたが、「やってみないとわからないじゃない」と言って下さって、TVスリーのW杯のキャンペーンの一連のシリーズのCMに出演させていただくことになりたんです。ヤスミンは、あなたの顔を思い描きながら当て書きしたんだと言っていました。それがきっかけになって、次のTVスリーのCMにも出演することになったんです。

2017年来日時のトークで@シアター・イメージフォーラム

■2017.03.25(土) 15:30-16:00@シアター・イメージフォーラムでのアフタートークより
<登壇者>
アディバ・ヌールさん 
通訳:松岡由美さん
進行:武井みゆき(ムヴィオラ)

アディバ:私がヤスミンに会った時は彼女はLeo Burnett Kuala Lumpurという広告代理店のエグゼクティブクリエイティブディレクターで、マレーシアの独立や建国記念日の感動的なCMを手掛けている人ということで名前は存じ上げていました。
あるときLeo Burnettがよく使う制作会社から連絡がありまして、私はすでにプロの歌手として活動していたのでCMに私の声を使いたいということで、その時に初めてヤスミンにお会いしました。その後あるキャンペーンの仕事で「あなたが適役だから出てくれない」と話があり、「私が演じられると思うんですか?」と聞いたんですが「やってみなきゃわからないじゃない」ということで出演したのがFIFAのワールドカップのキャンペーン2002年でした。ですので監督に初めてお会いしたのは2000年ごろだったと思います。その後も続いてTV局の仕事をしているうちに、「今度、映画を用意しているんだけどこちらにも出てもらえないかしら」と声をかけてもらいました。その頃にはCMに声だけでなく出演してもいたので自分の演技に対して不安感はなかったんですけれど、「私が銀幕に映るなんてお客さんはゴジラとまちがえちゃうんじゃないかしら」とお伝えしたら「もうカク・ヤムというメイドさんの役が決まっているの。実際に私の家にいたメイドさんで、私たち子供が彼女を下に見たり、使用人扱いしたりすると親から怒られるような、非常に堂々とした大きいメイドさんがいて、その彼女を演じてほしいの。彼女のことを映画にしようと考えるとあなたのことが浮かんでくるのよ」と言われて『細い目』『グブラ』『ムクシン』ではヤムさんというメイドさんを演じました。

アディバさんはヤスミンに会うまで、歌はともかく、自分が映画の中で演技をする人間になるなんて思ってもいなかったと言っていました。よく『細い目』などで彼女が演じたメイドのヤムさんを「女王様のように威厳のある」と書き記す映画評がありますが、「威厳」だけではなく、アディバさんに備わった「懐の大きさ」「エレガントさ」、そんな本質をヤスミン監督はきっと見つけていたのだと思います。

最後に、来日時のトークの中でお客様からのリクエストで歌を歌った際のアディバさんの動画をご紹介します。映画『ムクシン』で歌われる曲「フジャン」です。

2022年7月19日 
ムヴィオラ武井みゆき


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「アディバ・ヌールさん追悼上映」詳細記事はこちら
『タレンタイム~優しい歌』公式HP
『細い目』公式HP

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