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初期新海誠の圧倒的なポエム感「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」

公  開:2016年
監  督: 坂本一也
上映時間:27分
ジャンル:アニメ/ドラマ
見どころ:猫の語り。原作の猫との差

なんか色々考えている猫メ~

吾輩はである、といえば夏目漱石ですが、新海誠といえば、

「その日僕は彼女に拾われた。だから僕は、彼女の猫だ」

です。

もともとゲーム業界においてその名を知られ、「ほしのこえ」をたった一人でアニメを作りあげたことで、その知名度を広げた新海誠。

昨今における「君の名は。」の爆発的なブーム、「すずめの戸締り」についても、かなりの劇場で公開されているところです。

そんな中、新海誠監督が当時注目されるきっかけの一つともなった「彼女と彼女の猫」を原作とした、テレビ放送版「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」(以下 テレビ放送版)について紹介します。

原作のショートムービーを膨らませた作品となっていまして、シェアハウスをしていた友達が、家をでていくところから始まる女子大生を、猫が見守る話となっています。

原作では、猫の視点のみで描かれていましたが、テレビ放映版においては、女子大生視点と猫の両側から描かれています。

新海誠の特徴として、その不思議な言い回しがまず挙げられると思います。

むしろ、それを楽しむのが新海誠といっても過言ではありませんでした。

「時間ははっきりとした悪意をもって、僕の上をゆっくりと流れていった。僕はきつく歯を食いしばり、ただとにかく、泣かないように、耐えているしかなかった」

BY 秒速5センチメートル(桜花抄)より

「私たちは、宇宙と地上にひきさかれる恋人みたいだね」

BY ほしのこえ

このような、ポエムな語り口が特徴です。

「彼女と彼女の猫」にも、もちろん頭に残るセリフはありまして、

「地軸が、音をなくして、ひっそりと回転して、・・・僕と彼女の体温は世界の中で、静かに熱を失い続けていた」

BY 彼女と彼女の猫

とあったりして、もはや、セリフで意味を考えることが最善ではないと教えられます。

ただ、なんとなくいわんとすることはわかるのは、初期新海誠の特徴といえましょう。

本作品は、花澤香菜が声をあてる女子大生が、就職活動に疲れ、自分を見失いそうになる中、子供のころから飼っている猫に助けられる、というのが大筋となっています。

「君の名は。」は、比較的癖の弱い作品ですが、新海誠らしさをより感じたい方であれば、ぜひ、それ以前の作品をみていただきたいところですし、「彼女と、彼女の猫」は、短く大変見やすくなっていますが、

原作であるショートムービーは、新海誠が一人で作り上げたということ、作成された時代が1999年ということで、時代状況がわからないとありがたさは感じないかもしれません。

とはいえ、当時minoriが誇るゲーム「Wind - a breath of heart」のムービーを見た人間は、こんなに綺麗に動くオープニングをこんなに少ない容量(ここも重要でした)で実現するなんて、新海誠は何者なんだ、と驚愕したものです。

テレビ放送版の27分間の中で新海誠らしさを垣間見た上で、濃縮された5分の原作をみてもらうと、衝撃が和らいでちょうどいいかと思います。

勿論、本人が監督をした作品ではないため、マイルドにはなっていますが、原作の面白さは是非体感してもらいと思います。

また、ブルー・ピリオドでお馴染みである山口つばさ先生が絵を描いている漫画版もあったりします。







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