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離婚するなら駆け込むべし。映画「駆け込み女と駆け出し男」
公 開:2015年
監 督:原田眞人
上映時間:142分
ジャンル:ドラマ
見どころ:患者を見ない浣腸
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江戸時代。
主に身分の高い家柄の人たちにおいて、女性から男性に離縁を申し付けることは大変難しい時代だったそうです。
三行半なんていう言葉がありますが、とはいえ、男性から女性に離縁を申し渡すのも大変であり、そもそも双方の了解がなければ離縁できなかったりと、人間がくっついたり離れたりする苦労というのは、現代も昔も変わらないようです。
さて、原田眞人監督「駆け込み女と駆け出し男」は、そんな悪い夫から離れることができない女性たちの、いわゆる駆け込み寺である東慶寺を舞台に、大泉洋演じる男が口八丁手八丁で立ち回る物語となっています。
セリフの速さ
原田眞人監督といえば、セリフが全然聞き取れないことでも有名な監督です。
特に映画「関ケ原」では、何を言っているのか全然聞き取れません。
同じ日本語とも思えないのですが、そのあたりが、なんか、伝わってないなぁ、という作品のテーマともよく合っているのがポイントだったりします。
「駆け込み女と駆け出し男」は、そうとう聞き取りやすい分類に入る作品ではありますが、江戸言葉といいましょうか、立て板に水の如く登場人物がよくしゃべります。
聞き取れない言葉もあれば、ど真ん中に聞き取れるものもあったりで、適度に集中力が必要な、テンポの良さも含めて面白い作品となっています。
特に、大泉洋演じる新次郎は、医者見習いであると同時に、戯作者への憧れももっている人物であり、口のうまさにかけては随一の人間となっています。
大泉洋という役者の個性にばっちりはまった人物でありますので、役者に注目してみるだけでも十分すぎるところだったりします。
大泉洋以外にも、樹木希林が女性たちを助ける演技と重鎮としての雰囲気をだしていますし、「南総里見八犬伝」でお馴染みの馬琴を演じるのが、山崎努だったりして、場面の重みが違います。
心理的ミステリ
大泉洋演じる信次郎が、医者見習いという立場の中で、ドタバタするコメディ要素も面白いところです。
男子禁制の東慶寺の中で、女性と目を合わせてはならない、触れてはならないといった条件の中で、病気の女性たちを診てみたりするところは、くすくすと笑える面白さです。
また、男子禁制であるがあまりに、男性に対して強烈にあこがれや嗅覚を発達させる女性がいたり、突然、お腹が大きくなったことで、唯一出入りをしている信次郎が父親ではないかと疑われたりと、閉鎖した空間の中にも様々な要素が見え隠れします。
東慶寺に駆け込む女性たちは、大なり小なり理由があって入山しています。
そのため、大泉洋演じる信次郎は、彼女たちの心の闇や、事情に触れていくことになっていくのですが、そのあたりは、一種のミステリのようであり、情けなくも一生懸命に問題を解決していく大泉洋の姿に胸打たれることでしょう。
問答
セリフにやり取りは、早口だけではなく、大泉洋が、住職にうける問答なども面白かったりします。
「盃一杯の血を吐いた。どう見立てる?」
「まずは、喀血か吐血か。それを見定めます」
「喀血とは何ぞや。吐血とは」
「胃の腑からの血の吐出を言います。ただし、吐血をきたす疾患は、胃の腑上部の病変であり、それより頭位の病変から出る出血は・・・、」
流れるように受け答えしていますが、途中でセリフが止まり、目をぱちぱちさせてしまう大泉さんの様子は、ハラハラものです。
原田監督は、役者のミスも構わずつかうことでも有名ですので、おそらく、このあたりは、NGシーンをつないで使っているだろうと思うと、別の意味でも面白いです。
現代の考えと変わらぬ病の判別、問診方法ですが、テンポのいいやり取りから、主人公の頭の回転の速さがわかります。
また、戸田恵梨香演じるじょごが、顔のやけどが癒えるに伴って、徐々に聡明な力強い女性になっていく姿も素晴らしいところです。
男尊女卑の時代に、すっかり自分に自信をもてなくなった女性たちが、東慶寺で教育を受け、武芸を学び共同生活を送る中で、たくましく成長していく姿もみられる作品となっており、人間関係や、キャラクターたちの人柄含めて、素晴らしい作品となっています。
以上、「駆け込み女と駆け出し男」でした。
べったべった、だんだん。
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