家族の内面、どれだけ知ってますか 映画「search/サーチ」
公 開:2018年
監 督:アニーシュ・チャガンティ
上映時間:102分
ジャンル:スリラー
見どころ:動画に親が闖入
小さい頃は子供の全てを知っていたとしても、長ずるに及んで、距離ができ、やがて何を考えているのかわからなくなるものです。
ましてや、自分は、それなりに家族と仲良くやっていると思っている人ほど、何かが起きたときには、あまりの無力さに驚くことでしょう。
映画「search/サーチ」は、パソコンやインターネットが発達した現代社会の闇であり、親子関係ですら、危ういものであるかを、パソコンの画面越しでつくる、という面白い試みによって表現した作品となっています。
冒頭は、パソコンをつかって家族の歩みがわかるようになっているところが面白いです。
ウィンドウズXPに新しいユーザーを作るということが、子供が生まれたことを意味し、そのパソコンの中に、家族行事が写真や動画を通じて残されていく。
内容をあまり知らないでみていると、パソコンと家族の物語でも描く作品なのかな、と思ったあたりで、友達の家に勉強会にいった娘、マーゴットが、次の日になっても帰ってきません。
普段、主人公のディヴィット・キムは、娘とSkypeや、iPhone等さまざまな機器を使って、メッセージや音声・動画のやり取りをしています。
病気で亡くなった妻の影響で、娘との距離が多少遠いようにも思いつつ、それなりにうまくやっていたはずなのに、不穏な空気が一気に漂います。
何度も電話をかけても、娘は電話にでない。
きっと、ピアノ教室に行っているんだと思って、連絡をすると
「マーゴットは、半年前にピアノ教室をやめてます」
ピアノ教室の代金を娘に渡していたはずなのに。
誰かに連絡しなければと思っても、誰にも連絡できません。娘の友達も知らないし、連絡先もわからないからです。
娘のFacebookをグーグルで見つけるのですが、もちろん見ることはできません。
慌てて、2年前につかっていたパソコンの、死んだ妻のアカウントから娘の友人の電話番号を入手します。
キャンプに行くことになっていたと知ったデイヴィットは、安心と怒りのメッセージを送ろうとしますが、娘はキャンプにも来なかった、ということがわかります。
これは事件だ、と思っても、手の打ちようがないところが恐ろしいです。
血のつながった子供ですら、本人が姿を消そうとした場合に、手が出せなくなってしまうのです。
なぜ、マーゴットは、いなくなってしまったのか。
たんなる家出か、あるいは、悪い人間につかまってしまったのか。
事故か事件かすらわかりません。
娘はそんな人間じゃない、と思っていても、そうとしか思えないやり取りがでてきたりすると、一緒にくらしていた娘が、本当は何を考えていたのかなんてわからなくなってきます。
警察に連絡をしたデイヴィット。
担当の捜査官になった女性と電話をしながら、その女性の経歴をグーグルで検索する、というやり取りなんかは、良くも悪くも今風な感じです。
大事なことの大半は、パソコンを通じて行われている現代社会が見事に表れていますし、そんな繋がりの危うさも含めて面白い作品となっています。
日本映画でいいますと、「渇き。」を思い出させます。
役所広司演じる主人公が、失踪した小松奈々演じる娘を探す中で、優等生だと思っていた娘のとんでもない事実が明らかになっていく、という物語になっています。
後半になってくると物語は、どんどんゲームチェンジしていきます。
物語の底がどんどん抜けてくる面白さがあるといいましょうか。
また、親が子を想う気持ちでいえば、韓国映画「母なる証明」なんかも思い出すところです。
本作品は、ネタバレしないで見るのが一番いい作品とはなっていますが、パソコン・インターネット周りのサービスがバンバン使われているのが面白いです。
娘が死んだと思われたとき、葬儀の関係会社から、故人のデータをアップロードしませんか、というサービスの案内がきてみたり。ゆりかごから墓場まで、パソコンやインターネットがかかせない時代になったものです。
また、娘を探すために、勝手にパスワードを再設定したりして、様々なサービスを見ることになります。
結果として、わからなかった娘の内面がみえてきたりして、親子ドラマとしても面白いですし、そんな薄氷の上に人間同士の関係が成り立っているような、根源的な恐怖も含めて描かれている作品が、映画「search」となっています。
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